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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
最終章:最凶最悪な男
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185話

「だりゃあ!!このッ鬱陶しい!!」


前方に立ちはだかる怪字兵を倒しながら着実に前へと進んでいく俺と駆稲たち。俺と駆稲が合流したところから学校までの道のりは本来なら数十分で済む道のはずなのに、所々にいる怪字兵、そしてそれに襲われている人の救助のせいでもう1時間ほど走っていた。

今も襲ってきた怪字兵を始末した。現在この英姿町にどれだけの怪字兵がのさばっているかは把握できていない、しかし駆稲を逃がしているだけでこうも多くの兵と出くわすとは……


(糞ッ!いくらなんでも多すぎだろ!無間の野郎、何が狙いだ!!)


ここで浮上してくるのが無間の目的、奴の狙いが俺たちパネル使いならばここまでの怪字兵を用意する必要は無い。今回の騒動は英姿町狙っての事、さっきの放送で「自分の力を世界に見せる」と言っていた。とどのつまり英姿町を使って自分の存在と強さをアピールするつもりに違いない。

しかし解せないのが何故この英姿町をそれに選んだのか、ここまでの武力と数を持っていれば都心にでも攻め込んだ方が手っ取り早いだろうに。俺や先輩、勇義さんも含めて始末するつもりなのか?


(取り敢えず今は駆稲たちを安全な所へ……!)


邪魔してくる怪字兵を倒しながら道を突き進む俺たち、次第にその数も減っていき全く怪字兵と遭遇してこなくなったところでようやく学校へと辿り着いた。


「よし……ここまで来れたら安心だろ」


「うん、この子の親がいればいいんだけど……」


校庭に足を踏み入れてみると、自分たちだけじゃなく大勢の人がそこに避難していた。殆どが怪我をして包帯を巻いている。中には足を骨折したのか体を寝かして苦しそうにしている人も少なくない。

そして至る所に医療テントが仮設置されており、ズラッと列ができている。本来なら生徒たちがワイワイと駆け走っているはずの校庭は目を背きたくなる程の惨状と化していた。

この中に果たしてこの子の両親はいるのか?いたとしてもこれじゃあ時間がかかると嘆いていると、向こうの方からこっちを見つけてくれた。慌てた様子で我が子を抱きかかえる。


「よかった無事だったの……ごめんね1人にしちゃって……」


「この子がお世話になりました!本当にありがとうございます!」


「あッ俺じゃなくてこいつが……」


するとその両親は俺にお礼を言ってきたので駆稲の方を指さして訂正させる。ここまであの子を運べたのは彼女のおかげであり、俺は襲ってくる怪字兵を倒すしかやっていない。もし駆稲が保護してなければ今頃犠牲になっていたかもしれないのだから、この場合こいつが感謝されるべきだろう。

そうやって何度も頭を下げた後その場から去っていく親子、その際抱っこされていた子供が俺たちに向かって手を振っていたのでこちらも返した。


「……ありがとう、駆稲がいなかったら取り返しのつかないことになってた」


「あの子が襲われそうだった時居ても立っても居られなくなってね」


さっきから何度も思っていることだが、駆稲の勇敢な行動には感心させられる。戦う術も持っていないのに怪字兵に立ち向かい、見事1人の少女を救ってみせた。俺との付き合いである程度怪字に慣れているお陰でもあるのだろう、しかし中々できない行動であった。


「……ちょっとだけ、発彦君から勇気貰っちゃった」


「俺が?いつ?」


駆稲はそんなことを言うが覚えがない。知らず知らずのうちに彼女の背中を押していたのだろうか?とにかくそれがあいつの為になったなら結構だ。

去り際に見せてくれた少女のあの笑顔、それを見て少しだけほんわかとした雰囲気になったがそれは俺たち2人だけ。周りの人達はまだ暗いオーラを発したままだ。

そう、まだ解決したわけじゃない。


「発彦君……今何が起きてるの?」


「……さっきの放送を聞いただろう?エイムの無間がこの英姿町を攻めてきたんだ。理由は分からないけど……どうやら俺たちパネル使いごと潰すつもりだ」


行方をくらましていた無間が自ら姿を現したのはある意味ラッキーかもしれない、しかしこの町ごと俺たちを倒しにきたのは予想外であった。完全に出鼻をくじかれたわけだ。

兎に角今は刀真先輩と勇義さんと合流しよう。まだいないということは俺が先着だったようだ。


「あ、風成!それに触渡も!無事だったようね」


「疾東!そっちこそ大丈夫だったの?」


すると駆稲と別行動で逃げていたらしい疾東さんたち3人組もこの校庭へと辿り着いてきた。どうやら彼女たちも無事逃げられたようだが走っていたせいか息が上がっている。


「アンタも根性あるわね、子供助けるためにあの怪物たちに突っ込むなんて……」


「ま、まぁね……」


すると疾東さんにも褒められる駆稲、流石にここまで称賛の声を言われて照れたのかその返答も曖昧なものへとなっている。兎にも角にも彼女たちも無事でよかった。


「良かったわね触渡、今日補習で。駅前怪物だらけよ」


「へ、へぇ~……」


そのことはもうこの目で見たが、疾東さんたちが俺がその怪物を倒して駆稲を助けたとは夢にも思わないだろう。こちらから話す理由も無いしここは真面目に補習を受け続けたということにしておこう。先生に見つかったらお終いだ。補習を窓から飛び出して抜け出したことはどうやって誤魔化そうか?


「あッ!お前らいたいた!」


「飛鳥!お前も逃げてきたのか?」


「ああ、駅前に遊びに行ってたらいきなり怪物に襲われて……改めて言うと夢みたいな話だよな」


すると飛鳥も駅前にいたのか疲れた様子でこちらに混ざってくる。

そう、こいつの言う通り本来なら怪字や呪いのパネルといった存在は非現実的である。そんなものが今こうして大挙を成して町全体を襲っているわけだ、夢と疑っても仕方ない。

――俺たちが、パネル使いが皆を守らないと!


「発彦!待たせたな!」


「刀真先輩!それに勇義さんも!」


「遅くなった、予想以上に怪字兵の数が多くてな」


そうしてクラスメイトと話しているとようやく刀真先輩と勇義さんがやってきた。これで一応の戦力は勢ぞろいした訳だ。一先ずは簡単な作戦会議といこう。


「じゃ、俺はちょっと……」


適当に誤魔化してその場を去り、先輩たちと共に人目の付かない場所へと移動した。その後ろでは飛鳥たちがずっと俺の背中を見ている。

流石に適当すぎたか?だが俺の素性がバレることはないだろう。こういう無茶でもしない限りこの事態を治めることはできない。


「……発彦ってさ、絶対に何か隠してるよな」


「そうね、何か落ち着いているというか……」


「ほ、ほら発彦君って意外と冷静なところあるから!」


しかし駆稲がそれを何とかしてくれた。ここは彼女に任せ、俺は俺でできることをしなければならない。

だが俺の背中を見ているのは駆稲も同じ、しかしその眼差しは不安が募ったものであった。しかし止めようとはせず、ただ頭の中で俺の無事を祈っているだけだ。


(発彦君……どうか死なないで……)





「俺もここに来るまで大分倒してきたが……それでも今英姿町にいる怪字兵の数は計り知れない。網波課長や他県のパネル使いに収集を呼び掛けているようだが……」


「……多分間に合いませんよね」


「つまり、私たちだけで何とかしないといけない訳だ。だがたった3人であの数は不可能に近い」


校舎裏で行われる話し合い、しかしやっと3人揃ったというのにこの事態があまりにも絶望的だということを改めて理解するだけであった。

現在この町を襲撃している大量の怪字兵、その圧倒的な数は最早軍隊のようなものでまさしく無間という「王」が所有する軍事力だ。戦いは数と言うがまさしくその通り、それに比べて俺たちは3人。いくら1匹1匹が弱くてもこれじゃあどうしようもない。


「ああ――だから先に無間を倒して怪字兵を操る者を無くす!相手が不老不死だろうが、もうこれしか残っていない!」


「そうだな……例え不死身の敵だろうと、私が刀を握らない理由にはならない!」


「不知火さんから受け取った()()……それしか方法はありません!」


無間は「不老不死」を取り込み死なない体になった、所謂弱点が無いと言っても過言じゃない相手。不死身の男を倒すか、圧倒的な怪字を全て片付けるか、どちらが有効的かと聞かれれば普通後者を選ぶだろう。

しかしこっちには向こうの「不老不死」への対抗手段がある。なのでここは打倒無間を優先した方が良い。

勿論、一番に優先することは何の関係もない人々を守ることだ。


「もうこれ以上無間の好きにはさせない――そう不知火さんと誓ったんだ!この英姿町は……この国は、俺たちが守る!!」


「「おう!!」」


そして俺たちは裏口からバレないように学校から抜け、急いで駅前へと走り出す。

これが、エイムとの最終決戦であった。

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