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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第十五章:エイムの本拠地
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170話

「無間先生、上の階にて鎧と長壁がパネル使い両名と戦闘中とのことです。お急ぎください」


「まぁそう急かさないでくれ、あともう少しなんだ」


エイム本拠地の最下層、そこは様々なマシンや装置が辺りに設置されてごちゃごちゃになっている部屋で、そこにいつ無間と小笠原大樹の前には一際大きな機械があった。その部屋にある全てのマシンがその機械に接続されている。

そうしてその巨大機械と更に繋がっているのは1つの人間ケース、周囲にはアンテナが付けられており、その中では囚われの身である不知火が入っていた。必死にそこから抜け出そうと暴れているが、ケースには傷一つつかない。


「無駄な抵抗は止めた方が良いですよ。いや、少しでも抵抗してくれたらその分死ぬまでの時間が短縮されるのでこちらには好都合か」


そう言って無間が取り出したのは「無間地獄」の4枚、それを使い手から黒い靄を噴出する。その靄は機械のエネルギータンクに注入されていき、その瞬間部屋の全てのマシンが稼働、エンジンのように微動しプラズマを出していく。

そうしてメーターが満タンになったことを確認した後、躊躇なく目の前のレバーを下ろした。


「……ッ!!……!!!!」


瞬間不知火は自分が入っているケースごとアンテナの電撃を浴びせられ、その痛みによる叫びを上げる。しかしその声はケースの防音性によって遮られているため無間たちの心には響かなかった。もっとも例え聞こえたとしてもその志が揺れることはないだろう。


「その苦しみは長く続きますよ。貴方が蒼頡の力で『不老不死』を抑えこんでいるうちはね……」


そう、全ては不知火の『不老不死』をその体から抜くためであった。その為には不死身となった彼女を殺す必要があり、「無間地獄」の全ての生物を殺せる力を機械のエネルギーとして使用し、それを体に与え続けるのだ。

その苦しみから解放されるためには、体内の「不老不死」を出せばいいのだが、それは無間にその四字熟語を渡すことになってしまう。それを危惧して不知火はその激痛に必死に耐えていた。


(触渡さん、皆さん……!!)


発彦たちが助けに来てくれることを願い、歯を噛みしめて紫色のプラズマに耐える。体は焼けては再生を繰り返し、必死に抵抗している。

電撃によって全体が紫色に照らされている部屋の中、無間と大樹は並んでその光景を傍観していた。


「大樹、これで僕が不老不死になったら……世界はどうなると思う?」


「貴方のものになります。誰も太刀打ちできず、無間先生を王として認めるでしょう」


「その通りだ。僕は永遠に王として君臨し続けることで、この()()()()()()()を手中に収める」


彼女の苦しむ様子に心が痛んだりしない、まるで必要な作業をこなすときのような目で見ていた。2人は不知火のことは「不老不死」を運ぶ器程度にしか感じていなかった。

やがて無間が指を鳴らすと、混雑したパイプの中を掻い潜るように2()()()()()()が現れた。1匹は牛のような姿で、もう1匹は馬の顔であった。


()()()()()、ここに来る侵入者の相手をするんだ」


無間がそう命ずると、その2匹の小動物は一気に巨大化。この部屋の天井を突き破りそうな程背丈は上がり、可愛らしかった目は赤く光る鋭いものへとなっていた。手には金棒が握られており、鼻息を荒くしている。

その牛と馬――式神は、部屋から出ていった。人の体に獣の頭を持った彼らは、無限の式神であった。四字熟語は「()()()()」、1つの四字熟語で2匹の式神である。


「では先生、私も防衛に」


「頼むよ、大樹」


それに続く様に大樹も部屋から出ていく。残ったのは発彦を待ち続ける不知火と、それを見ている無間だけであった。





「サンキューリョウちゃん、しばらく休んでいてくれ」


俺は島に到着した後、リョウちゃんの炎で温まった後休むよう命じて服の中に入れさせる。流石に2月の湖に入れば寒いもので、流石に何かしなければこれからの戦いにも影響していく。そう判断した俺は急がば回れで一度休憩し、そのままエイムのアジトへ突入する。

その道中怪字兵の破片をいくつか見つけたので、恐らく刀真先輩たちがここで襲われたのだろう。まぁ軽く蹴散らしたと予想できるが。

やがてバラバラになった入り口から侵入し、そこにあったエレベーターのボタンを押すが一向に来ない。壊れているのだろうか?


「仕方ない……普通に降りるか」


なのでエレベーターの扉をぶち破って内部に入り、そのロープを慎重に降りていく。やがて数分かけてようやくたどり着いた。

見れば入り口のドア同様刀真先輩が斬ったのか乗場ドアが粉砕されている。これなら普通にエレベーターが動くはずも無い。

そのまま長い廊下を駆け走り、急いで刀真先輩と勇義さんとの合流を急ぐ。ここにも怪字兵の破片が辺りに散らばっていた。あの2人が戦っていなければ今頃俺が相手をしていただろう。

すると猛々しい轟音が耳に入ってくる。これは戦いの音だ、近くで戦闘が行われていることに気づく。一体何事かと音がする部屋を見れば、そこには勇義さんと特異怪字になった長壁がいた。


「勇義さん!」


「来たか触渡!不知火さんは一番下の階だ!!」


「分かりました!!」


どうやら先に不知火さんがどこで囚われているか調べてくれたらしい、一番下の階を目指して再び走り出す。俺にそれを伝えに来たということはさっき俺がやったように「ここは俺たちに任せろ」ということだろう。


「行かせないわよ!」


「おっと、お前の相手は俺だ!!」


するとそれを阻止しようと長壁がこちらに銃口を向けてくるもそれを逆に勇義さんが邪魔して防ぐ。こいつの相手は勇義さんに任せて、早く不知火さんを助け出さなければならない。

今こうしている間にも無間は彼女を殺し、「不老不死」を我が物としているかもしれない。不知火さんにとってそれは望んでいることかもしれないが、あの四字熟語を無間に渡したくないことは確実。早く助けださなければ。

そうして俺は、さっきとはまた別のエレベーターを使い、一気に下まで降りようとするも――


「……ッ!!怪字兵!!」


後ろから怪字兵が群れを成し、一気に襲い掛かってきた。それを避けるも1匹の兵の刺突がエレベーターのパネルを突き刺し壊してしまう。これじゃあこのエレベーターは使えない。階段で降りるしかなかった。

とその間に、目の前の怪字兵を倒さなければ。


「寒くてしょうがなかったんだ、お前らで準備運動して体を温めてやる!!」


そして俺は怪字兵に殴りかかり、どんどん蹴散らしていく。

パンチで頭を粉砕し、蹴りで首をすっ飛ばす。まとめてかかってきた時は「疾風怒濤」によるゲイルインパクトで一斉に殴り飛ばした。

しかしこうまで足止めをしてくるということは、既に不知火さんを殺す準備はできているということ。尚更急がなければならない。


「お前ら――邪魔だぁ!!!」


としたらこんなところで雑魚相手に立ち止まっている暇は無い。勢いを増し迫りくる怪字兵を片っ端から殴り倒していく。

しかしその数は一向に減っていく様子は見られない、どんどん数が増えこれだと鼬ごっこであった。


(誰が召喚してるんだ……そいつを叩けばいい!!)


こうなったらこの兵たちを呼び出している張本人を倒さなければならない。怪字兵が追加されていく方向を見て、群れを無理やり突破しそこへ走って行く。

すると1つの部屋に辿り着いたので、勢いよくドアを蹴り破り中に入る。するとそこには見たことのある顔がいた。


「お、お前は……応治与作!?ここに逃げていたのか!」


「ひッ!お前はあの時の……」


オージ製薬社長でエイムに資金援助や毒薬製造の手助けをしていた応治与作であった。あの強行捜査の日逃げられどこにいるのかと疑問に思っていたが、まさかここにいるとは思ってもいなかった。

そしてその手には大量の「兵」パネル、恐らくこいつが怪字兵を呼び出していたのだろう。


「こ、こうなったら儂も――!」


「させるかッ!!」


するとリクター付きの「応病与薬」を自分に挿入しようとしてきたので、「疾風迅雷」で加速して跳びかかり、その前に阻止した。

そうして手で「応病与薬」と人造パネルを奪い取り、もう片方の手でその襟を掴んで迫る。


「ばッ!暴力は駄目だ!暴力は!!ここは冷静に話し合おう!」


「この際お前はどうだっていい!不知火さんを解放しろ!!」


「シラヌイさん?まさかあの女か?前に先生が上機嫌で女を捕まえたことがあったが……そんな権利儂にあるわけないだろ!」


どうやらこの爺さんは不知火さんのことについて詳しく聞かされていないらしい、しかしこんな奴に不知火さんを解放できる権利も力もあるとは俺にも思えなかった。


「だったら彼女のところまで案内してもらおうか。場所は知ってるんだろ?」


「分かった分かった!だから殴らんでくれ!」


一番下の階とだけは分かっているが、正確な場所は知らない。なので応治に案内させてもらおうというわけだ。これぐらいならこいつも知っているだろう。

すると急に、応治の表情が更に怯えたものへと突然変わる。


「……どうした?」


「後ろ後ろ!!」


一体何事かと振り向けば、そこには自分に向かって振り落とされている金棒。棘付きのソレが目前まで迫っていた。


「――ッ!!」


急いでその場から離れ、応治と共に避難する。するとさっきまで俺たちがいた場所の机やら椅子やらが今の一撃で一気に粉砕されてしまう。もし避けていなかったらこいつと共にお陀仏だっただろう。

誰の仕業か、金棒の持ち主を見るとやはり人間ではなかった。牛の顔を持ちその体は筋骨隆々とした人間のもの、その巨体の持ち主はジッとこちらを見下している。

その後ろには同じような体を持つ馬の怪物がいる。そいつも同じように金棒を携えてこちらを睨んでいた。


「ご、牛頭と馬頭!!無間先生のペットだ!」


「ペット?ということは特異怪字じゃなくて式神か!」


牛頭と馬頭と言ったら地獄にいる獄卒ではないか、それに魚吉に続いて2匹目3匹目の式神だ。エイムはどれだけの式神を扱っているのだろうか?

すると牛頭の方が金棒で殴りかかってきたので、急いで掴んでいた応治を捨てその一撃を避ける。


「まったく……準備運動だけじゃ終わらなさそうだ」


こうして牛頭と馬頭という2匹の式神相手に、俺は再び拳を握りしめた。

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