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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第一章:爆発寸前な男
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15話

怪字の両腕が襲いかかってくる。伸びてきたその2本を屈んで避けた。

そして相手の右腕を蹴り上げ、奴の腕に亀裂が入った。怪字の体は傷だらけとなっていた。

それはこっちも同じこと、受けた攻撃、放った一撃のせいでこっちの手もボロボロになっている。プロンプトスマッシュは威力こそ最高だが作用反作用の関係性こちらにも衝撃が拳に来るのだ。

両者ともに満身創痍の状態だ。人間(おれ)には体力という物があるが怪字(あいつ)にはそれが無い。怪字は体がバラバラになるまで動き続けることができる。なのであいつらにはスタミナ切れとか疲労という概念は存在しないのだ。


「はぁ……はぁ……!」


正直言って限界だ。昨日の疲れとダメージもまだ癒えてないといのに体を動かさないといけない。このまま戦ったらジリ貧だ。バテて動けなくなった所を突かれるだけ。

一気に——決める!

そして「一触即発」の準備をしようとしたその時、奴が離れた位置に移動しているのが分かった。

何をする気だ?そう考えていると……


「うわっ!?」


奴は左右の壁を大きな蜘蛛のように蹴り進む。「疾風迅雷」による圧倒的速さ及び不規則な動きを見て動揺してしまい、奴の突進をまともに受けてしまった。


「ぐああっ!?」


俺は吹っ飛び、その先にあるT字路の壁へと激突する。数メートルは飛んだだろうか、壁の破片が背中に刺さりまくった。

怪字は壁に埋もれた俺に跳び膝蹴りをした。その威力で体は壊れ、背中の破片は更に食い込む。


「ぐあああああぁっ……!!!!」


前から打撃を受け、背中は切られるといった前後ろから痛みが走る。

そんな事はお構いなくに、怪字は「疾風怒濤」の姿になり、連続パンチで更に痛めつけてきた。

次々と来る衝撃と痛みを鮮明に感じているが、頭の奥からぼんやりとしてくる。

これ以上攻撃を受けると死んでしまう、何とかしないと!

俺は意識を朦朧としながらも渾身の蹴りを奴の胸に当てた。それが効いたのか少し後ろに蹌踉めく怪字。その隙に壁から抜け出した。


「があぁっ……!」


しかし直ぐに膝を付いて立てなくなってしまう。激痛と疲労が脳を直接叩いてきた。過呼吸をするたびに血の味が口へと広がる。喉を切ったのだろう。

胸の痛みが一定に脳へと送られる。肋骨が折れたのかもしれない。

何度も足を伸ばそうとするが立ち上がれない。足が無いように感じるほど感覚が狂ってきた。


「畜生……」


怪字は全身にひびが割れているのに平然と歩き、こちらに近づいてくる。

もう既に勝ったつもりなのか、お得意の高速技を使って一瞬で終わらせてこない。「もうこいつは逃げられない」と思っているに違いない。


(畜生……!畜生!)


歯を強く食いしばり、両手を握りしめた。

そう、俺は今()()()()()。とてつもなく、尋常に。

さっきまで攻められていたくせに勝者のつもりか……?その余裕が異常なほどに腹立つ!怒りと睨みで人を殺せたら、俺はもうとっくに勝てたのに……

もうどうでもいい、こいつを倒す、いやこの野郎をバラバラにぶち殺せるなら後のことなんかどうでもいい!!

そうして怪字のトドメの瞬間に、「一触即発」を発動させた。


「お゛ら゛ぁあ゛!!」


怪字もまさかこんなボロボロの状態で打てるとは思っていなかったらしい。避けられずにそのまま殴られた。

今度のプロンプトスマッシュはアッパーカットのように下から顎をぶち抜いて、奴を天高くぶっ飛ばした。

打った瞬間、右手から軋む音が聞こえる。右手の骨も折れてしまった。

最後の力を振り絞り、2本の足で大地を踏んで立ち上がる。そして高く飛ばされた怪字を見上げていた。

やがて墜落が始まり、高所から真っ逆さまに落ちていく。その真下には立った俺がいる。


「おい、まさかこれでお終いとは思ってないだろうなぁ……?」


そして折れた右手を無理矢理握りしめ、そのまま一発決める構えをする。「一触即発」の待機状態だ。

もう痛みなんか気にしてられない。吐き気も苦しみも全て無視する。


「俺はまだ…………怒り足りねぇぞぉおおお!!!!」


もしかしたらこれで最後になるかもしれない。なので思いっきりぶちかまさせて貰う!

落下してきた怪字が()()()()()

攻撃のつもりでもない。悪意も敵性も無いただの落下なのだろう。

だが、こんな状態の俺に触ったのが悪い!恨むなら、俺に触った自分を恨め!!


「プロンプト……」


強く握った拳が奴の腹にめり込む。今までのとは比べものにならない程のパワー、そして威力。


「スマッシュゥウウウウウウウウウ!!!!!!」


そしてドデカい風穴を見事に空けた。

威力で吹っ飛ばされることもなく、爆発するわけでもない。

穴から怪字の全身に亀裂が走る。破裂音を鳴らし、まったく動かなくなると……

崩壊するように粉々になり、消え去った。

そして、体内から6枚のパネルが出てくる。「疾」「風」「迅」「雷」と、「怒」「濤」だ。

6枚とも蛍のように紫の光を灯していたが、徐々に薄くなっていって光が消えた。


「……俺を怒らせたお前が悪い」


そう言い残し、6枚のパネルを回収する。

そして限界が訪れたのか、そのまま倒れてしまった。

救急車のサイレンが、気を失う前最後に聞いた音だった。










触渡 発彦

所持するパネルの枚数 21枚 その内重複しているのは無し











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