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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第一章:爆発寸前な男
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12話

発彦は住宅街を駆け回っている。まだこの辺に怪字が彷徨いていると睨んでいるからだ。

平日とはいえ人影がまったく見えない。皆通り魔を恐れて家に籠もっているのだろう。

角を曲がろうとしたが先に気配を感じて急に立ち止まる。顔だけ出して見てみると警官達が辺りを見渡していた。


(警察がもう動いているのか)


失礼だけど警察にどうにかできる問題とは思えない。拳銃など効きはしないのだから。

もし自分を見つけてたら家に帰るよう警告されて帰らせるかもしれない。

なので今来た道を戻って他の場所を探す。

近くに怪字がいたり暴れたりしたら「一葉知秋」の4枚のパネルが反応して光り始めるはず、それがまったく無いということは近くに怪字はいないということだ。

もっと遠くを探してみよう、そしたら光るかも知れない。

そう思った矢先、パネルが強く光り始める。それを見た瞬間俺は立ち止まった。

どこだ、どこにいる、全体を見渡していると……


「キャッーーー!!」


三時の方向から女性の悲鳴が響き渡る。それを聞いた俺は急いでそこへと向かった。

手遅れじゃなきゃいいんだが……!

電場に辿り着くと、予想通り怪字(そいつ)はいた。足下には二人の男女、遠目で分かりにくいが両方足を折られている。

奴の腹部には殴打の傷跡がある。昨日俺が叩いた所だ。


「来い……昨日のリベンジだ!」


俺のことを覚えているのか、顔を見た瞬間こちらに跳びかかってきた。

格闘戦が始まる。俺は高い位置から繰り出される打撃を避けながら後退する。倒れている人達からこいつを離すためだ。

10mぐらいの距離を作れたことを確認すると、怪字の拳を払い除けて奴の後ろに回る。


「おらっ!」


そして重い一撃を背中に当てる。その勢いで怪字は前へと吹っ飛び、転ぶ形で地面に激突した。

しかしすぐに起き上がり、こちらに攻撃してくる。

奴の手先が俺の頬を擦る。そして伸ばしてきた手を殴ろうとするが——


「げほっ!?」


怪字の素早い蹴りがそれを阻止する。俺は天高く蹴り上げられた。

怪字は高く跳び、俺に追いつく。そして上から地面に叩きつけた。


「だぁあっ!」


地面に叩きつけられた俺は、怪字の追撃を受ける。降下と同時に勢い良く踏みつけてきたのだ。

血を吐き、腹部に大きなダメージを受けてしまった。

昨日の仕返しなのか、何度も何度も踏んでくる。


「うがあっ!?げあっ!!」


昨日受けた傷、更に今受けている攻撃の傷、そのせいで普段のように動けなかった。

しばらく蹴った後、怪字は俺の髪を掴んで身体を持ち上げる。そのまま俺の腹に連続してパンチを入れた。

何度も同じ所を殴られているので痛みとダメージがどんどん深くなっていく。

これ以上の追撃はやばい——!

俺は怪字の拳を両手で受け止め、そのまま奴の手から解放される。


「はぁ……はぁ……!」


流石に攻撃を受けすぎた。立ち上がるのも辛くなっていく。

対する怪字の方はピンピンしている。こっちのほうが劣勢だ。一度休んだ方が良い。

怪字から逃げ、距離を取ろうとする。勿論奴は追いかける。

すると怪字のスピードが急に速くなった。


「なっ!?」


あっという間に距離が縮まり、追いつかれそうになる。

この超スピードが「疾風迅雷」の怪字の力、文字通り「疾風」のように速さがこいつの武器!


「金城鉄壁!」


昨日と同じように「金城鉄壁」の結界で自分を覆う。怪字の攻撃を防いだ。

これで数分は休めるはずだ。

しかし俺とあいつの力の差がありすぎる。効いてないことはないが普通の攻撃じゃ倒せることは期待できない。

やはり「八方美人」や「金城鉄壁」のような防御寄りの四字熟語じゃ駄目だ。()()()()()()()を使わないと勝てない。


(やっぱこれだな……)


そうして俺は一葉知秋から「一」のパネルと、「触」「即」「発」を取り出した。

この4枚で出来上がる四字熟語は「一触即発」。意味は「少し触れただけで爆発してしまう状態、小さな事で、重大なことが起きるかもしれない危険な状態」。

この4枚のうち2枚「触」「発」は()()()()()()()()()()、後の2枚は()()()()()()()()()()だ。


(いや……やっぱこれは使えない)


しかし考えを変えポケットへと入れた。

あいつらは()()()()()()()()殺されたようなものだからだ。かけがえのない親友達を殺させられたこのパネルは絶対に使わないと誓ったのだ。

何か方法がある筈だ。考えろ、考えろ……

そうこう考えていると違和感を感じ取る。


「……え?」


それは怪字に襲われた二人だった。彼らの胸が怪しく光っている。

そしてそこから飛び出たのは2枚のパネルだった。


「パネル!?何で!?」


その2枚のパネルは浮遊して怪字の周りを飛びかっている。そして、奴の身体へと入った。


「はぁ!?」


突然起きたその事に理解しきれない。本来怪字となった時点でそれはもう四字熟語なのだ。新しいパネルが2枚追加されるなどあり得ない。

いや、まてよ?もしかしたら、とある考えに至った。

今二人から出たパネルと、この怪字の四字熟語の内2枚が、()()()()()()なのでは?

1枚のパネルに書かれている漢字は一つ、だから他に組み合わせがあっても不思議ではない。


「嘘だろおい……」


だからといってこんな事態は初めてだった。まさか襲われた人達が怪字に対応するパネルを持っていたなんていう不運な奇跡が他にあるだろうか?中々無いことだ。

怪字がその2枚を吸収する前に、何の漢字が書かれていたかは一瞬だけ見えた。「怒」と「濤」だ。そして「疾風迅雷」の怪字……その別の四字熟語が簡単に予想できた。


()()()()……!」


その瞬間、怪字の見た目が一瞬で変化した。

細い腕は筋肉が付き、その色も緑から真っ赤な物へと変色している。青色の胴体も、紫色で筋肉隆々な状態に変わっていた。

明らかに先程とは違うパワータイプ。一気に攻撃型となった。

変化した怪字は、凄まじい速さの連続パンチで金城鉄壁の結界を打ち破る。


「なっ!?」


ガラスの割れるような音が響く。文字通り粉々に粉砕されてしまう。

休むどころか、相手を見す見す強くさせてしまった

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