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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第九章:アジト突入
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113話

万丈炎焔が豪快に出す火炎によって私の「伝家宝刀」の刀身が照らされている。薄暗かった部屋は一気に赤色に染まり広い部屋だが温度も少しだけ高くなっているような気がする。

動き回れる空間があるだけ有難い。万丈炎焔は「気炎万丈」の炎で広範囲に焼いてくる奴だ。もし狭い空間で奴に出くわせば蒸し焼きになるのが目に見える。そう考えれば幸運か?


(いや、こいつなんかと遭遇したのがそもそもの不幸か……)


自称連続放火魔、よく家を燃やしていたという犯罪歴を豪語していた男であり、性格、能力共に危険と判断された。

研究所の一件から英姿町に帰った後、急いで万丈炎焔という人物を刑事に調べてもらいその素性が分かった。元は消防士で入って1年後に辞めたという。その後は定職にも就いておらず、何もしてないのか何の情報も手に入らなかった。

しかし奴が消防士を辞めた年からの放火事件は目に見えて増大しているのが判明し、こいつの言っていた言葉が本当だったことが分かった。


「宝塚刀真、確かこの前はあの刑事と一緒に戦っていたが……今回は弱っちそうな兵隊さん2人連れているのか。1人で戦うのが怖いのかな?」


見え透いた挑発。あまりにも下手くそすぎてつい笑ってしまう。


「まさか、怖いのは貴様のその冗談の下手さだ。宝塚当主が敵を目の前に恐怖などするものか!」


ここはこいつに舐められまいと大口をたたいたが、正直怪字と対峙して恐怖することは若干ある。寧ろあんな化け物を見てまったく恐れない輩やその化け物に変身する奴の方が余程人間離れして怖いものだ。

それに恐怖と言ったって足が震えたり歯がガタガタするわけじゃない。そんな感情などとっくに抑えられるようになった。それが当主としての覚悟でもあり使命でもある。

すると万丈炎焔はカッカッカと愉快そうに笑い手を叩く。先ほどの挑発には何も示さなかったがこの態度には流石の私でもイラッとくる。


「そうかいそうかい……ならこれでもどうかなぁ!?」


そこで突然両手をこちらに突き出し、そこから火炎放射の如く猛火を噴き出してきた。まるで横に飛ぶ噴火、炎より先に熱風が押し寄せその熱さが伺える。


「紫電一閃ッ!!」


ここで私は一度刀を鞘に納め姿勢を低くし、「紫電一閃」を使ってから一気に抜き、迫りくる火柱を2本とも斬り裂いた。


「いざ参る!!」


斬られたことによりあいつまでの一本道ができ、そこを臆することなく走り渡る。

そして跳ぶと同時に刀を振りかざした。


「俺の炎で、お前ごとそのナマクラ刀打ち直してやるよぉ!!」


奴もそれに応えるかのように両手を炎を包みこちらに伸ばしてくる。業火の手を空中で避けつつ、着地と同時に「伝家宝刀」を振り下ろした。

瞬間、熱波が力強く噴出され肩から脇にかけて大きな切り傷を付けることに成功する。

しかし体を切り裂かれても苦しむ様子も見せず、先ほど伸ばした手を握り燃えた拳をこちらに振り落としてきた。


「グッ!」


それを柄と刀身を両手で支えた刀を上にして防御、刀身からその熱さがジリジリと伝わってくる。

続いてもう片方の拳が刀で防がれないよう横から殴りに来たので、力尽くで刀で頭上の拳を払い横からの拳を屈んで避けた。


(熱っ……さらに温度が上がっている……!)


髪を僅かに掠めただけでもその猛火の勢いと熱さを感じ取ることができ、それが時間と共に益々高まっていることも察する。

前回と同じように触れられただけで身が焦げるだろう、ここは慎重かつ大胆に動き敵の動きを読む必要がある。

私はそのまま刀で牽制しながら少し後退した後、再び「紫電一閃」を使用し離れた距離から斬撃を放った。

それに対し万丈炎焔は横に転がりながら避けつつ火球をこちらに撃ってくる。私もその火球を斬るまたは避けて、奴と顔を合わせ続けるように横にずれていく。いつしか場は遠距離攻撃を撃ちながら周り続ける状態となっていた。

しばらくそれを続け私とあいつの位置が最初の時と逆になると、銃撃音と共に万丈炎焔の背中に幾つかの銃痕ができる。


「何ッ!?」


同伴していた隊員たちのマシンガンだろうが、驚いたのはその銃撃じゃない、()()()()()()()()()()()()()

最初の方に放った弾は炎の壁によって当たる前に溶かされたが、今のは何故か溶かされずにちゃんと奴に当たった。何故だ?先ほどのとは何が違う?


「ちっ……小賢しい!!」


すると万丈炎焔は掬い上げるように後ろに向けて手を払い猛火を出す。彼らに直接火が直撃することはなかったがその熱風によって少し後退してしまう。

理由は分からないが確かに弾丸は命中した。つまり何か条件を満たせばマシンガンでも戦えるという訳だ。

考えろ、何故溶けたり溶けなかったりするのか?さっきのと今とのじゃ温度も熱量も違ったのか?

そうこう考えていると再びあいつがこっちに走り出してきた。拳に炎を集中させて殴りかかってくる。


(そうか……そういうことか!)


その一部始終を見て弾が通った理由が分かった。そのパンチを避けつつもその考えに確信を覚え次の一手を考える。

兎に角このことを何とか向こう側にいる隊員たちに伝えなければ……しかし目の前の万丈炎焔がそれを阻止している。

「神出鬼没」を使うことも考えたが、それだとそうまでして向こう側に行きたかったことで怪しまれるかもしれない。見たところこの事は奴自身も気づいてないと思われる、それを感づかれる前に向こうに話したい。

それにしても、あの時は刑事と共に戦っても自分を守ることで精一杯だったが、意外と1人でも戦えているではないか。私も成長している証拠か。

しかし成長はしているのは、向こうも同じだった。


「食らえ!俺の新技!!」


すると奴は右手を指鉄砲の形にし人差し指をこっちに向けてくる。瞬間万丈炎焔の全身から噴き出していた火柱が一気に収束、それに伴い向けてきた人差し指が一気に発光し、こちらに小さな火球を撃ってきた。


(これは――避けなきゃ不味いッ!!)


弾が通った理由から今の指鉄砲の原理を直感で察知、本物の弾のように速いその火球をギリギリの所で回避する。

すると着弾した壁が大爆発し、その爆風で前に転がってしまう。それに熱風が体を少し撫で火傷も負ってしまう。

さっきまで自分がいた場所が一気に焼け焦げ見る影も無くなっている。もし避けられていなかったらどうなっていたか……考えたくもない。


(何て威力だ……!)


「どうだ!()()()()()()()()()()()()()()()()撃つ新必殺技よ!!威力は見ての通り、痺れるねぇ~!!」


やはりそうだったか。撃つ直前に奴の火柱が一気に小さくなったのを見て大体予想はついていた。しかしまさかここまでの威力が出るとは……


「だから連射はできないが……溜める熱エネルギーを少なめにして連射することも可能!……後ろの奴らのマシンガンみたいになぁ!」


すると今度は両手の指合わせて10本をこっちに向け、そこからさっきの劣化版である火球を連射してきた。

迫りくる炎の弾幕を横に走りながら避け、当たらぬよう足を止めないようにする。さっきのとは確かに威力は比べるまでも無いが当たったら致命傷になることは間違いない。

しかし奴が体を旋回しながら火球を乱発してくれたおかげで、私は回避行動に合わせてごく自然に隊員の所にまで行けた。


「良く聞いてください……実は――」


小言かつ早口で用件だけを済ました後、横に避けるのを止めそのまま火球の弾丸を潜り抜け真正面から走り出す。

避けれる弾丸は避け、そうじゃない火球は刀で弾いて決して足を止めない。

そうして奴の懐にまで潜り込んだ後、「一刀両断」のパネルを取り出した。


「一刀両――ッ!!!」


「――させるかぁ!!」


このまま真っ二つに斬り裂いてやろうとしたその時、奴は一気に熱量を放射し私が刀を振る始める直前で吹き飛ばしてきた。

あまりの勢いに地面を転がり倒れてしまう。しめた!今の放射で一気に熱エネルギーを消費したはずだ!


「そう簡単に終わらせねぇぞ……ってぐぎゃあ!?」


万丈炎焔が倒れているこちらに近づき追撃をしようとした瞬間、隊員たちの連射が襲い掛かりその体にどんどん弾痕ができていく。

すると奴は炎の壁を作ろうと手をかざそうとしたが、私が斬撃を放ってそれを阻止する。


「な、何で弾が溶けない……!!」


「さっきの熱風でエネルギーを使いすぎたようだな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


前回の戦いでも、奴は刑事の浄化弾をいとも簡単に溶かしていた。だから当たり前のように思っていたが、普通弾丸を、それも撃たれて飛んでくるものを瞬時に溶かすなんてとんでもない熱量が必要なはずだ。できて熱風で軌道を変えるぐらい。


「お前だってそんな熱量を常時放出してるわけがない……さっきの指鉄砲の理屈が全身の熱エネルギーを溜めて放つように、弾を溶かすのにも同じぐらい……いやそれ以上の熱が必要の筈だ」


それをさっき私を吹き飛ばすために使ってしまったわけだ。いくら怪字の力で熱を生み出すことはできるとはいえ、飛んでくる弾を溶かす程の熱量を瞬時に溜めて出すなんてことは流石にできないというわけだ。


「私1人で倒せるかと思ったが……どうやら問題なさそうだ。隊員たちもいるし、何より貴様自信がそれを使いこなせていない!」


刃の先を向け、今度はこっちが挑発をする。

まだ勝機はある。この調子でどんどん攻めていこう。

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