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爆発寸前な男  作者: ZUNEZUNE
第九章:アジト突入
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107話

突如として集まったパネル関係者の人達、知らない人も1人いたが顔なじみの人物が多く占めている。

まずは前代未聞対策課の刑事である勇義任三郎さん。英姿町に来てから数回怪字と戦っているのでこの面子と共に呼ばれるのは納得がいく。その隣の初老の男性は知らないが勇義さんの隣ということは前代未聞対策課の人だろうか?

その反対側にはパネルを研究する「鶴歳研究所」の所長鶴歳さんと、それに同伴している比野翼さんと小笠原大樹さん。元々は遠くの県にて活動をしていたがそこをエイムに襲われたため、今はこの英姿町に引っ越している。

次に昔からこの地を守っている宝塚家の宝塚刀頼さん、その息子である刀真先輩。この人たちも呼ばれていて不自然ではないだろう。

そうして凄腕のパネル使いである海代天空さんとその弟子である俺、触渡発彦も集まっている。天空さんは兎も角俺まで呼ばれるとは思ってもいなかった。

この面子でこれから話し合うことは呪いのパネルを悪用する組織、「呪物研究協会エイム」についてだった。


「発彦や刀真君はまだ会ったことはないだろう。こちら前代未聞対策課の網波(あみなみ)恢男(かいお)課長だ」


そういってまず天空さんが紹介してきたのは勇義さんの隣に座っていたあの男性、白髪と黒髪が混ざり合った短髪で、顔には痛々しい傷痕がチラホラ見られる。顔下半分を埋め尽くすような顎髭が特徴的で190はありそうな巨体だった。

網波課長はこちらの顔を見るとその厳つい顔を一瞬で破顔させこちらに近寄り、俺と刀真先輩の手を掴んでぶんぶんと振る。


「網波だ!!話は任三郎から聞いてある!若いのに偉いことだな!」


「ど、どうも……」


非常に勢いのある性格で、こちらの手を握る手も顔を一掴みできそうな程でかい。あの刀真先輩をも見下ろせるほどの身長、顔の傷もあってか対面して見ると威厳と威圧が凄まじい、このまま手を握る潰されると思って程だ。

しかし口を開いて見れば意外に気さくな方で、失礼だが何とも見た目と性格がマッチしてない。

前代未聞対策課の課長ということは勇義さんの上司というわけだ。まぁ勇義さんがこの場に出席するんだしおかしくはない。


「今回、前代未聞対策課に協力を求めてね、彼らのおかげで見事協会のアジトの場所を特定できた」


「本当ですか!?」


針の特異怪字が言い漏らしたことは確かで、どうやら本当に奴らのアジトがこの英姿町にあったわけだ。集まれと言われた時からある程度それは予想できていたが驚きを隠せない。


「そして我々は、この場にいるパネル使いに前代未聞対策課の人間、そして怪浄隊と連動しこのアジトに突入することになった!今回はその打ち合わせで集まってもらった」


「突入ですか……!?」


しかしいくらアジトの場所が分かったとはいえいきなり突入は早すぎるのではないか?相手の戦力もまだ詳しく分かっていないというのに闇雲に敵の手中に潜り込むというのは些か危険だと思う。

そのことをそのまま口にすると、以下のような答えが返ってきた。


「確かにそうだが、奴らの悪行に対しただ受け身でいるわけにもいかない。向こうは呪いを抑える装置や人造パネルなんて物も作り出す技術力を持っている。これ以上時間を与えたら何をしてくるか分からない、だから早めに倒そうと考えたんだ」


天空さんの言う通りで、協会は俺たちの想像もつかない程の技術力を持っている。確かに奴らに余裕を与えたらまた何かパネルに関係した何かを作ってくるかもしれない、そう考えて見ると怖くなってきた。

俺としてはまだ突入は早すぎるんじゃないかとまだ少々不安だが、話を聞くに前代未聞対策課の人達や怪浄隊の皆さんも力を貸してくれるはず。ここは大胆に行ってみるか……?


「じゃあ任三郎君、説明してくれ」


「はい。これを見てください」


そう言って勇義さんが真ん中に広げたのは大きなこの英姿町の地図、ここまでデカいのは見たこと無いがとある部分だけ赤丸で囲まれており、そこにメモも数個書かれている。これだけ見ればその場所がどこなのか一目瞭然だった。


「この西の部分にある森の奥。前もって怪浄隊の方々と捜索した結果、この場所に奴らのアジトがあることがわかりました。地面を掘って作られた穴倉のような形式です」


「ちなみにそれを見つけた数名の隊員は、その報告があった直後に連絡が取れなくなり、次の日森の入り口で全員見るも無残な死体で発見された」


「……ッ!」


網波課長が補足したその情報は、この場の雰囲気を一転させるには十分すぎるほど衝撃的であった。

驚きながらも大部分を納得してしまう自分たちがいる。情報漏洩を防ぐために仲間まで殺す連中だ。もしかしたらよっぽど厳しい警備が施されているのかもしれない。

ここは命を懸けてまでこの場所を見つけ出してくれた隊員さんたちに心から感謝し、安らかに眠るよう祈ろう。

彼らの犠牲を無駄にしないためにも、ここで足を止めるわけにはいかない。その思いは、この場の全員が思っているはずだ。俺も褌を締め直す思いだ。


「我々の作戦では、怪浄隊の隊員たちでこのアジトの周囲を取り囲むように陣形を組み、複数人で内部に侵入。周りの隊員たちやパネル使いたちには協会のメンバーが逃げないようにしてもらいます」


「この陣形には、私たちも参加します!」


そう言って勢い良く名乗り出たのは鶴歳研究所の一員である比野さん、隣の小笠原さんもそれに同調し頷いている。

すると今まで隠れていた「比翼連理」の2匹の式神も飛び出し、彼女の肩の上に乗っかって「我らも!」と言わんばかりに存在感を主張していた。


「ウヨクちゃんサヨクちゃんがいれば隊員さんたちも守れると思います」


「でも良いんですか……危険ですよ?」


「触渡様、私たちも皆様の仲間の1人、ここは役に立つ為私たちも出ます!」


「確かにパネル使いたちと比べて頼りないかもしれないが、ここは俺たちにも頑張らせてくれ」


小笠原さんはそう言うが頼りないなんて微塵たりとも思っていない。この2人も俺たちの仲間であり、いざとなったら頼りにもなる。

こうして比野さんと小笠原さんは包囲網を担当することになる。所長の鶴歳さんは流石に待機となった。


「じゃあ天空、儂らもこの陣形に入るとするか」


「そうですね」


「えぇ!?天空さんに父上が!?」


ここで意外な人選に俺と刀真先輩が驚く。てっきり2人の実力からしてアジトに突入する方だとばかり思っていた。何故ならその方が連中を倒せる可能性があるからだ。


「この突入戦での鍵はアジトに突入して奴らを倒すことではなく、()()()()()()()()()()()()()だ。儂らは協会の人員の数、その規模、つまり戦力が具体的に分かっていない」


「だから突入組がアジトを叩いて外にいる私たちがそれを一網打尽にするという作戦だ。例えるなら巣を叩いて中の鼠共を引っ張りだす感じだな」


つまり突入組はあくまで奇襲をして相手を驚かせる要員、包囲網組が肝心の戦力ということだ。

確かに連中の中にも戦えない人員がいるかもしれない。もしそいつがいて一番最初にする行動は逃げることだ。天空さんたちはそれを捕まえるのが仕事という訳だ。例えこの奇襲が失敗して奴らを完全に倒せなかったとしても、1人さえ捕まえられれば情報は手に入れることができる。

その為に、包囲網の陣形に入るのは戦力的に確実なメンバーでなくてはならない。ならば天空さんと宝塚さんはピッタリだろう。


「じゃあ突入組は……」


「――触渡君、宝塚君」


するとさっきまで仲良しオーラを出していた網波課長が急に真面目な顔になる。何かしてしまったのかと思う程厳つい表情になった。


「……本来ならば、いくらパネル使いだとしても警察が未成年にこのような立場を任命するのは間違っているだろう。まずはそのことについて謝らせてくれ」


「えぇちょっと!?」


するといきなり土下座をして頭を床に付けてきた。目上の人の急な土下座に俺も刀真先輩も困惑を隠しきれない。まさかこんな偉い人に謝られるとは思ってもいなかった。


「しかし、この国の未来と平和を守るには1人でも多くの人員が必要だ。断言しよう、君たちは最高のパネル使いだ。どうか我々に力を貸してほしい!」


「……網波課長」


そうか、性格は全然違うけどこの人は()()()()()()()()()なんだ。エイムを倒したいという思いもあるが、一番に考えているのは俺らのような子供のこと。勇義さんも課長も、市民のことを想って必死に戦っている凄い人たちなんだ。

そんな人たちが頭を下げてくれている。それに答えない訳はない。


「――勿論です!俺たちも、皆の平和な暮らしを守るために戦ってきました!」


「私も一緒です。寧ろこちらから作戦への参加をお願いさせてください」


「……2人とも」


年齢も立場も違う、しかしその志と想いは同じだった。

皆人を不幸にする怪字、そしてそれを悪用する協会が許せない。だからこそ戦うのであった。

しかし、この中に1人だけ()()()()()()()()()()()()がいたことをまだこの時は気づけなかった。





「あれ?小笠原さん……?」


その後詳しい陣形や人選の話を数時間程度した後、その場は解散となった。決行は明後日の土曜日ということになり、後は網波課長や天空さん、宝塚さんが話し合うことになった。

そんな時、小笠原さんが陰に隠れて何かをしている。


「……はい、そのように……」


「何やってるんですか?」


「のわぁ!?触渡君か……驚かせないでくれよ」


急に俺が声をかけてきたせいで大変驚いた小笠原さんは、俺に顔を合わせた後携帯電話をソッとしまう。どうやらどこかに電話していたようだ。まぁこんな大事なことが決まったんだ、大切な人と話していたかもしれない。

すると俺は、ここであることを思い出す。


「そうだ小笠原さん!このグローブ大変役立っています!その節はありがとうございました!」


グローブとは彼が俺専用に作ってくれた特殊防護グローブのこと、防刃性、耐火性、衝撃にも優れた便利な物だ。このおかげで俺は更にパワーアップしたので改めて礼を言おうと思った次第だ。


「そうか、作った俺も嬉しいよ。明後日では思う存分使ってくれ!」


「はい!勿論です!!」


そうだ明後日だ。明後日で全てが決まる。

俺は1人になった後、静かに心の炎を燃やした。

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