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第七戦 迷い

「ん? ………ああ、そうよね。殺された理由くらい聞きたいわよね。んーと」


 テラは眉間に皺をよせて、必死になにかを思い出そうとする。


 まさか、忘れたとは言わないよな。


「えへへ」


 テラは舌を出しながら、可愛いげある仕草でごまかした。


 通常の男子なら、瞬殺されただろう。


 だが、俺にはもう通用しねーぞ。


「ごまかすなっ」


 ゴチンッ。


 鈍く重い音が響いた。


 怒りが亮平のチョップをパワーアップさせたのだ。


「痛いですよぉ。知らないんですか? 女の子には手を出してはいけないってことぉ! 常識ですよ!」


 テラは自分の頭を、撫でている。


 最初にこいつをかわいいと思ってしまった自分がバカらしい。今のこの状況でどうすればこいつをかわいく思えるのかもう一度確かめてみたい。


 まぁ、答えは無論なんにも思わない。だろうけどな。


「はいはい、それはすみませんでした」


 こころのこもってない表面上の謝罪。


 これ以上過度に会話を交わしてしまうと。終わりの見えないラリーが続いてしまいそうだ。


 なんだろう、こいつと会話してるだけで元気が吸いとられていく。


「わかればいいんです!」


 テラは両手を腰にあて、胸をはり。上から目線で許してくれた。


 いや、まて。なんでおれが悪者になってるんだ。


 むしろ、殺されたあげくに、意味もなくあの世に送られてるおれのほうが被害者じゃねーのか?


 まぁ、そんなことは水に流すとしても、ここに来た理由を聞かずにはいられない。何とかしてでも思い出させねーと。


「なにか、覚えてねーのか? おれが魔王になるためにどーすればいいのかとか――――――」


「あ! 思い出しましたよ!」


 テラはポンッっと、自分のてのひらをたたき。亮平を殺さなければならなかった理由を思い出したようだ。


 実はこの時点で、さっきまで本当に殺した理由を忘れていたことがわかった。


 思い出しましたよ! って言ってるってことは完全に忘れてただろ!


「えーとですね、これから魔王様には地獄にいる魔王様とご対面してもらわないといけません。ですので、ここにくるためには一度死んでもらわないといけなかったのです」


「そうなのか、地獄にいる魔王様に会いに来たと……。―――――おい! まさか、地獄にいる魔王様って――――」


 亮平はうなずきながら、理解していたのかと思うと。すぐさま大声で質問を投げつけた。


「そんな大声で叫ばないでください! 鼓膜が破れますぅ!」


 テラはその場でしゃがみ、両耳をふさいだ。


 エルフのように少し尖った耳は、少女の小さな手ではふさぎきれていなかった。


 少女ひとりに大声で叫び。しゃがませ、耳をふさがれている。他人からみたら間違いなく俺は変質者あつかいになってしまうのだろう。


「わかった、わかった。ボリュームさげっから」


 亮平は、両手を合わせ。「すまん、すまん」といいながら、テラに声をかけた。


 こうでもしないと、おれのきがすまなかったのだ。


「んもぉー、次からは気を付けてくださいよ!」


 おまえは牛か。


 ついつい突っ込んでしまう。口調だったがここは流しておこう。


「で、ここの魔王様って人はどこにいるんだ?」


「この世界のずっと奥深くにある、地獄の宮殿の最深部ですかね」


 テラは、確かそうだったきが……と、言いながら。その地獄の宮殿の方向を指さした。


「なぁ、ひとついいか?」


「はい、なんでしょう。やっぱり私の体に―――」


 最後、なにかをいいかけようとしたテラを殺気あふれる目線で撃沈させた。


 なにが言いたいのかはだいたいわかる。わかるからこそ、こいつを止めなければならない。


「おまえのその記憶に信用性がなくてな、地図みたいなものをくれると非常にありがたい」


「なかなか、ひどいこと言いますね。いつ私の記憶に信用性がなくなったというのです!」


 なんでわからないんだ? こいつは。どう考えてもさっきの出来事がきっかけに決まってるだろ。


 あやうく、おれは意味もわからず殺されただけになるところだったんだからな。


「で、あるのか?」


「あります」


 あるのかよ。


「でもおそらく、こんな地図は。あってもないようなものだと思いますよ?」


「ふん! おれをなめるなよ! おれが冒険者だった頃は、脱出不可能とまで言われていたダンジョンを、地図ひとつつかって見事に切り抜けたくらいだからな!」


 亮平は自慢げに高笑いをした。


 どうだ! おれの実力は!


「確かそこ、森ですよね?」


「ああ」


 その森の中は、少し薄暗かった。なにせ、木の一本一本がバケモンみたいにでかかったからな!


「空を飛ぶっていう選択肢はなかったんですか?」


「………」


 やべ、論破されてしまった。


 なにも言い返す言葉がみつからねぇ。


「まぁ、人間たちの愚かさはある程度把握してますから。安心してください。私が今までその森を監視していたなかで、空を飛ぶという発想をしたものは一人たりともいませんでしたから」


 テラはあきれた顔で、ぼつぼつと話した。


 冒険者はな! 希望をもってるんだよ! この先にどんな危険なモンスターがすんでるのだろうとか。考えるだけでもぞくぞくするもんなんだよ! てか、空飛べるんならわざわざ危険おかしてまで森の中になんかはいらねぇ!


「じゃ、そろそろいきましょうか。ここにいたら、私日焼けしそうなんで」


 日焼けするのか? そんなに暑くはないきもするが。


 季節でいうなら、秋くらいかな。


「おまえ、道わかるのか?」


「だいたいなら、ですけど」


 せめて自信もって言ってくれ、頼む。こっちが不安になってくる。


「おれはなんにもわかんねぇから、とりあえずついていくしかねーよな」


 信用はしないが、おれもどっちにいけばいいかなんてわからない。


 ならば、テラについていくしかないのか。


 二人は、地獄の宮殿へと向かった。


 たぶん。


 

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