第六戦 死
よくわからないが、どうしてか今とても落ち着いた気持ちになっている。
後頭部にはヒンヤリとした、柔らかな感触があるのだが、それが妙に落ち着く。
「どうですか? 私の膝枕のご感想は」
「ああ、最高に気持ちいいぞ……」
膝枕ってこんなに気持ちよかったっけ。
………いや、まてよ! この声聞き覚えがあるぞ!
亮平は目を勢いよく開けた。すると視界にはやはりあいつがいた。
「あ、魔王様。お目覚めですか?」
テラが両頬を赤色にしながら、亮平の頭を撫でている。
またこいつかよ。一瞬期待したじゃねーか。
「あのあと、約束通り。三途の川を渡られてしまう前に私が回収いたしました」
テラは、ある一点を見つめながら話した。
その目線の先にあったのは。三途の川。
今もまだ、役目を終えた魂たちがゆっくりと三途の川を渡っている。
「ですが、本当に魔王様は困った人ですね」
妙にニヤつきながらこちらを見てくる。
「膝枕は私の勝手なおこないですけど、魔王様は私の太ももをさわさわと触ったり。私にハグを求めてきたりと。それはもう甘えられてましたね、まるで五歳児のようにぃ」
頬を赤く染めつつ、「キャー」だの「きゃわっいいー」だのと叫んでいる。
亮平は、すぐさまテラの膝枕から逃げた。
最悪だ。俺が意識のない間にそんなことをしていたなんて………。ありえん!
せめて、その記憶だけはおれに残ってほしかった。
膝枕に対して、嬉しかったのか。嫌だったのかよくわからない。
「あれ? もういいんですかぁ?」
テラは手招きしながら、自分の太ももを軽く叩いている。
「いいんですよ? あ、ま、え、て、も」
過去最高に腹が立つ。
だが、こころのどこかで断りきれない自分もいた。
「おれはロリコンなんかじゃねーし!」
情けない話だが、こいつにあってから少しずつ趣向が変わってしまったかもしれない。
「だ、だれがロリよ! 私はねあんたの何十倍もいきてるのよ!」
また起こらせてしまった。
いってる内容からして、こいつは俺よりも年上ってことか?
「何歳くらいなんだよ、おまえ」
「ざっと四百歳ってとこかしら!」
テラは両手を腰にあて、胸をはりながら言い切った。
本当なのか………いや、見栄張ってるだけかもしれん。
まぁ、これ以上踏み込むとまた怒られそうだから、いったん話題を切るとしようか。
「で、俺が殺されないといけなかった理由ってなんだ」
これだけが、いま一番気になってた。
「人間をやめる」といった、あの答えと関連しているのだろうから。