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勇者になれなかった俺は魔王に転職しました  作者: 白寺 迅
ハジマリ
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第五戦 精神

今回からは、しばらく話が重くなると思います。

ですので、通常より話が長くなります………。

亮平自信が、これからどう進化し、変化し魔王になっていくのか温かく見守ってくれると嬉しいです。

「人間をやめろだと………?」


「はい。ただ、人間をやめろとは言いましたが。もっとわかりやすく言うと、人間的な心理や感情を捨ててほしいということです。魔王というものは命をつねに狙われるものです。つまり、自分を守るためには、誰かを殺さなければならないのです」


 もちろん、なにかをあやめるということは冒険者であるいじょう避けられなかったみちだ。


 殺すという行動になれているという言い方はおかしいが、幾度も命を奪ってきたのはじじつだ。


「それに、今のあなたの精神ではきっとあの日々には耐えられないでしょう。わかりますか? 毎日のように冒険者があなたの命を狙いに、首を跳ねるために殺気を放ちながら城のなかを進んでくる恐怖を」


「………………」


 その視点で考えたことは一度もなかった。


 というより、そのように魔王が思っていたなんて想像もできない。


「きっとあの辛さは、人間には耐えることはできません」


 テラは下唇を強く噛んだ。


 きっと、見てきたんだろう。魔王が苦しんでいるところを。


「その辛さってやつは、わるいけど俺にはわからねぇわ。でも、テラがそう言うのなら。人間には無理なんだろうな」


 人間には無理。


 自分たちが起こす行動なのに、受ける側にはなることができないのか。


「で、話が変わるんだが。さっき言ってた人間をやめるってのは、具体的に何をすればいいんだ?」


「あなたには、一度死んでもらいます。そして、あなたが三途の川をわたってしまう前に、私が迎えにいきます」


 !?


 死ぬのか? 


 今さっき出会ったばかりのやつに、命を授けろってことかよ。


「大丈夫です。痛くはしませんから」


「いや、そういう問題じゃねぇよ!」


 アホかこいつは。


「え?」


 テラは素で驚いている。


 いや、え? じゃないだろ。誰が痛くしないので殺しますって言われて。お願いしますっていいながら殺されるやつなんていねぇだろ。


「じゃあ、いったいどうすれば死んでくれるんですか!」


「死ぬの前提なのかよ!」


 まじ頭いかれてる。


「あ、わかりましたよ!」


 テラは両のてのひらで、あるかないかよくわからない、小さな胸に触れ。こちらを警戒心丸出しの目で見てくる。


 なに考えてんだこの女は。


「魔王様から、むかし聞いたことあります。男という生き物は、女に対して性的な要求をしてくるって」


「………………」


 魔王。なんてこと教えるんだよ。


「あ、あの! 私でよければ………触っても………いいんですよぉ?」


 テラは、胸元に手をかけ。胸をチラチラ見せてくる。


 一回、落ち着いてくれ。頼むから。


「いらねぇよ。触るってなにを触るんだよ。それに、そんな胸を見せつけたところで男はつれねぇよ。まな板じゃんか」


 いや、訂正しよう。一部の人間はつれるかもしれない。


 テラは、顔を真っ赤にしながらこちらを睨み付けてくる。頭の頂点からは湯気がでそうなほどだ。


「だ、だれがぁ~~~~………」


 やべ。爆発しそうだ。


 体が小刻みに震えている。怒りを抑えるのに必死なのだろうが。結局のところ抑えられていない。


「だれが、まな板よ!」


 静かな城の中に声が響いた。


 城の構造上、音が反響するようになっており。テラの声が山びこのように何度も繰り返し聞こえる。


「う、うるせぇよ!」


「だれが、うるさくさせてるのよ! あなた、今女の子に対して言ってはいけないことを平気で言ったのよ?」


 ああ、まな板はやはり言いすぎたか。


「すまんすまん、言いすぎたわ」


 テラは、両頬を膨らまして顔をつきだしている。


「私は今、成長途中なんですぅ! きっともう少しすれば大きくなりますぅ!」


 必死だな、おい。


 正直、ここまで面倒になるとは思わなかった。


「はいはい、すみませんでしたぁ」


「もういいわ! ここであなたの息をとめてやる!」


 シュバッ!


 テラは両手を大きく左右に広げた。


 すると、背中から紫色に光る刀らしきものが大量に飛んできた。


「まじかよ!」


「大丈夫だから逃げないでよ」


 亮平は全力で逃げた。


 刀は、光を放ちながら飛んでくる。


 追撃機能ついげききのうでも搭載いるか、どこまでも追いかけてくる。


「大丈夫じゃねぇだろ! まだ死にたくねぇよ!」


 もう泣きたい。


 ただ、まな板って言っただけじゃん。


 そんなに怒らなくてもいいじゃん。


「とらえたわ!」


 亮平の走る反対側からも、刀が飛んできた。


 スピードが速すぎるため避けることができない。


「いやぁぁぁぁぁぁあっ!」


 見事に刀が亮平をとらえた。


 視界が真っ赤に染まっていく。


 不思議と痛みは感じない。だが、意識が遠のいてゆく。


「じゃ、またあとでね!」


 亮平はその言葉を聞いたときにはすでに、力尽きていた。





 



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