EP10 帰宅
あの後、俺はテラの瞬間移動で家へと送られた。
久しぶりに見る家は相変わらずボロボロで、横で俺の家を眺めるテラは口をポカーンと開けていた。
「ごめんなさい。私ったら亮平君の家と間違えて、どうやらごみ処理所に移動してきたみたいだわ」
テラは頭をきちんと下げ謝罪した。
魔王の娘といっても根はいいやつなのだ。きちんと素直に謝ることができるだけでも素晴らしいことだと俺は思うぞ。
なにせこの世の中には謝るどころか逆切れしてくるやつもいるくらいだからな。
とまあ、関心はするもののさりげなく自宅をゴミ屋敷呼ばわりされたのは痛い。
悪意はないとしても、逆に悪意なく言われるほうがきつい。
「うわあ、なにこれゴミ屋敷じゃん!? こんなところに住んでるんだw」って言われたほうがまし。そしたら「うるせーぶっとばすぞ」っていえるのに……
「すみません。もう一度、魔法の展開を試みます」
テラは再度、瞬間移動の魔法詠唱を始めた。
俺を含め足元には紫色に輝きながら大きな魔方陣が展開されていく。
「それではいきます!」
「ちょっとま!!」
ちょっと待て!! を言い切る前に魔法は発動した。
高速で回転し始めた魔方陣はさらに輝きを増した。が、そのときだった。
「なっ!!?」
突如赤く光った魔方陣はガラスの割れたかのような音とともに砕け散り、破片は天へとのぼり雪のように静かに消えていった。
「う、嘘!? 私がこんな初級魔法の詠唱に失敗するなんて! ありえない!!!」
テラはもう一度詠唱を始めた。
だがしかし結果は同じで、魔法陣ができてもすぐに壊れてしまう。
でもそれでもあきらめず何度も何度も詠唱を唱える、テラの目は少し赤かった。
きっとプライドが許さないのだろう。
テラは40階にも及ぶ魔王の城で、魔王の次に権利の高い位を持ち、さらには先代魔王の血を引き継ぐ娘なのだから。
ゆえにこんな初級魔法ができないなんていう現実はあってはならないのだ。
しかし、それでも。
魔法は一向に詠唱されない。
「なんで! なんでなの!?」
声がだんだんと重く苦しいものに変わり始めた。
変わり始めたのは声だけじゃなく、顔色も次第に青ざめていってるのがよくわかった。
さすがにもう見ていられない。
なにかできることはないだろうかと考えると、ひとつの疑問が生じた。
もしかすると、という期待を抱きながら早速その疑問をテラに問う。




