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勇者になれなかった俺は魔王に転職しました  作者: 白寺 迅
ビギナー
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EP9 自覚

 実を言えば俺自身が滝野を殴ったという感覚はあった。

 ただ、殴った感覚があっても殴ろうとしたという感覚だけはない。しかし、滝野が言う通りこれが魔王のみが使える能力「絶対反射」であるならばこの疑問は解決してしまう。滝野を殴ったのは俺の意思ではなく、俺の能力「絶対反射」によるものだと。

「ところで、テラ様。先ほど意思疎通によって私に告げられた『魔王であることの証明をみせる』というのは今ので達成したわけではないですよね? 絶対反射を持っていようとも、使えなければ意味がない。持っていたら魔王であるだなんて、私には思えませんが」

「あなたの言う通りです。彼はまだ魔王になったわけではありません」

 滝野の考えを読んでいたかのように、テラは一切動揺した仕草を見せることなく即答した。

「まだ魔王というには足りないものばかりですからね、先ほどの『絶対反射』もそうですしなによりもステータス面が貧弱すぎます。この程度なら私でも容易く殺せますから」

 俺はテラに指をさされ散々なことを言われていても、なにも言い返すことができなかった。テラの言うことはひとつも偽りがなく、事実だったからだ。

 だが、そんなことをいいつつもテラは俺のほうを見て、呆れたりするわけでもなくただニッコリと笑っていた。気のせいかもしれないが、テラは口パクで「私に任せてください」といった気がした。

「なるほど、しかしそれでは『魔王であることの証明』にはなりませぬが。それに対してはどのようなお考えをされてるのですか?」

 滝野の目は真剣だった。

「まだ証明はしてませんよ。私、今ここで証明するなんて言いました?」

「「なッ!?」」

 俺と滝野の声が重なった。

 驚いた理由は違うとおもうが、これが言葉の綾ってやつなのだろうか。いや今回の場合意思疎通の綾なのか?

「証明はまだ先、それまでの間彼には冒険者に戻ってもらいます。絶対反射をもった状態であろうとも、ダンジョンのモンスターやボスモンスターを倒し、この城の最上階まで登ることができればそれ自体が『魔王であることの証明』になるはずです」

 テラは最初からこうなることを望んでいたのだろうか。

 俺を勝てるわけがないと分かったうえで滝野と一戦させたのは、自身に魔王の能力「絶対反射」があると思わせることと、


 魔王の城を守る各層のボス及び魔王のことを甘く見すぎだと伝えたかったのだろう。



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