EP4 公認
「滝野さんは、魔王様のことを魔王であると認めていない可能性があります。そのため、命令を素直にきいてくれるのかどうかは保証できないです」
申し訳なさそうにテラは上目づかいで俺に滝野事情を伝えてきた。
ここ最近で自分がどれほど変化してしまっているのかはわからないんだが、テラの様子を見る限りでは見た目だけは魔王になっているんではないだろうか。
そのせいで、思わぬところでテラをおびえさせてしまうのだ。
「そんなことぐらい問題外じゃないか。認めてもらえなくて当然だと俺は思っているくらいだからな」
今度はテラを傷つけてしまわぬように、最上級に気を付けながら言葉を発した。
テラにおびえられてしまうと俺のこころが罪悪感で締め付けられる。
そういえば近所にいたガキの面倒を見ているときもこんな気持ちになったよな。
どうすれば泣かないでいてくれるのか、必死に考えたっけ。
「じゃあ、初めましての挨拶でもしに行くか!」
両腕を天にのばして、大きな伸びをした。
このあとに待つイベントはかなり疲れるであろうと予想できる。
「わかりました」
可愛くテラは相槌をうった。
「それでは、第一階最深部に転送します」
「おう! 頼む!」
両手で口をおおい、生唾をのんだ。
二度も同じことで苦しみたくないからな。
自分のことを賢いとは思わないが、あいにく同じ過ちを繰り返すようなバカではない。
「では、飛びます!」
先ほど同じく、青い光が二人を包んでいった。
視界が次第に青色へと染まっていく。
数秒後、光の玉に包まれきった俺たちは、光速の速さで一層の管理者である滝野がいる場所へと向かった。
「着いたのか……」
ワープが完了したことが確認できる瞬間というものがわかった気がする。
地面に足がついてるなと気付くことができる時ってのが、ワープが完了したときだと思う。
ワープするって考えるより、空を飛ぶって考えたほうがイメージがわきやすいかな。
俺の予想は的中していたようで、視界が開けていった。
「来たか、餓鬼」
ん? 今の声は聞き覚えがないぞ。誰だ?
まだ視界がぼやけているため、その声の主が誰でありどんな姿であるという情報を入手することができない。
餓鬼って言われたことに対してはなんとも思ってないが、とりあえず様子を見るために無視してみるか。
「……」
「おい! 聞こえてるんだろ?」
「…………」
「な、なあ。聞こえてる?」




