第四十五戦 ダンジョン
俺たち二人は、仲良く兄妹トークをしながら歩いていた。あまりにも景色が良すぎてついついここがダンジョンであることを忘れてしまう。道端にきれいな花壇があり、道路はレンガでお洒落な雰囲気をだしているのだから、ダンジョンであることを忘れても仕方がないだろう。
「お兄ちゃん。そろそろ目的のアイテムがある最深部につきそうですね」
「ああ、もう少しだ」
「どんなところなんでしょうね、最深部って。聞いた話では景色がとっても綺麗で、カップルの二人がデートのために訪れるような場所らしいです」
「そう……なのか」
よかったな、俺がお前の兄貴で。悠理のその美貌で今の言葉を言われた男子は間違いなく、よからぬ妄想をするだろうからな。
正直なところ、兄である俺も少し平常心を崩してしまった。
しかし、そんな平和な時間も一瞬で砕けてしまう。
ようやく、ここがダンジョンであるということをわからせてくれたのだ。
前方。少し離れた地面から、緑色の何かが動いている。
もう少し近づいてそれを見てみると、レンガの隙間から湧き出るように。体積を大きくして言っている。
緑色のこの物体は、冒険者であれば誰もが知っている有名なモンスターだ。
「な、なんか。います! どうしましょう!」
横でおろおろと、悠理が焦り始めた。
無理もない、こんなモンスターを初見で見たやつはだいたい混乱するんだから。
得体も知れない、モンスターであるかすらわからない。その不安が、冒険者を混乱へと導くのだ。
「落ち着け。こいつは『スライム』だ。モンスターだけど、そんなに強くない」
強くはないが、攻撃手段が恐ろしいモンスターだ。
液体状のその体を活かし、人間の傷口などから侵入してくる。




