表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者になれなかった俺は魔王に転職しました  作者: 白寺 迅
ビギナー
44/59

第四十三戦 いざダンジョンへ!

 冷たい汗が乾いた俺の頬をつたった。

 目がぐるぐるとまわり、動揺をかくせない。

「忘れて……くれないかな……」

「お兄ちゃんの行動次第だね」

「……十分で準備してきます」

 俺は布団から勢いよく飛び跳ねると、ドアを蹴りあけ階段を下って行った。

 時々曲がり切れずに壁に激しく衝突してしまい、家中に地震でも起こったかのような振動が響き渡る。

 それをただ目を丸くしながら見ていた悠理はぼそりと心の言葉をこぼす、

「本当に昨日からどうしたのかなあ。まるで別人みたい……」

 一昨日までは自慢できるような立派な兄だったはずなのに……

 突然の変化に悠理の頭は対応することができなかった。


 朝ごはんも一気にかきこみ、パジャマから私服に着替え、急いで階段を登ろうとした。

 しかし、二階に上がる必要はなく悠理は階段の一段目に座り待っていてくれていたのだ。

「……」

「…………」

 なぜか、時が止まってしまったかのように二人の間に沈黙が生じる。

「なにかいうことは?」

 視線を合わせてくれない……怒っているのだろうか。

 待たせないように努力したつもりだが。

「ごめん」

「なにが?」

「待たせた」

「で?」

「……」

 ここで、「で?」と言ってくるのか。なるほど、もしかすると悠理がほしいのは「ごめん」じゃなくてほかの言葉なのかもしれない。

 俺は額に張り付く汗をぬぐい、深呼吸をして気持ちを整えた。

 おそらく悠理が求めてる言葉はこれしかない!

「いくぞ!」

 悠理はその言葉に強く反応したようで、こちらに振り向いた。表情はとても驚いたようなかんじだ。

「ふっ……」

 笑いをこぼしたのは、俺ではない。悠理だった。

 片手で口を押えながら、クスクスと肩を震わせていた。

「うん! 行こう!」

 悠理は腰を上げると、俺の手をとった。そして、玄関に向かって走り始める。

 妹に手を引かれるのは、もう何年も前のことだろう。懐かしさだって感じる。

 俺たちは玄関から外に飛び出すと、目的地である「始まりの草原」へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ