第三十八戦 確保
「もしかして、タイムスリップしたのか? 俺は……」
過去に戻ったと考えれば、この状況を納得することができる。
妹が生きているということもありえてしまう。
急にやる気がわいてきた俺は、必死に妹の名前を叫びながら捜索を再開した。
するとさっそく、背中に誰かの手の感覚が伝わってきた。
それは、たまたまぶつかったものではなく、明らかに背中を誰かに軽くたたかれていたものだった。
妹かと思い焦って後ろに振り返る。
「ちょっと君。こちらに来てもらえるか?」
俺も後ろにいたのは、きっちりとした制服に身を包んだ男だった。
俺の声に反応したのは妹ではなく、役所の警備員だったのだ。先ほどからの行動を見ていたらしく、俺を不審者だと判断したらしい。
「ま、待てよ! 俺はただ妹を探してるだけで!」
「ああそうかい、そうかい。後でじっくり話を聞かせてもらうから、とりあえず来なさい」
腕をがっしりとつかまれて強引に引っ張られる。
抵抗はするが、力負けしてしまい引きずられてしまう。
「悠理! 悠理!」
引きずられながらも妹を探すことはやめなかった。
いるかもしれないのに、あきらめるなんてできるはずがないだろう。
頼む……返事してくれ……
「おとなしくしろ!」
俺が叫び続けている姿に我慢ができなくなったのか、警備員の男は俺を殴ってきた。
一撃が非常に重く、殴られるたびに視界が揺らいだ。
「あ、やっぱり。いたのか……悠理……」
その言葉を発した後俺は力尽きた。
「ちとやりすぎたか、まあ落ち着いてくれたからこれでいいか」
警備員はのびてしまっている俺をもう一度引きずり始めた。
意識が戻ると、俺は見たことのない一室に閉じ込められ椅子に座らされていた。手には不気味に光沢を放つ手錠がつけられていて、足も椅子にくくりつけられていた。
つまり俺は自由を奪われているということだ。
「それにしても俺は拉致監禁でもされているのか? ただ叫んでただけなのに」
あたりを見渡すと、この部屋にはテーブルと二つの椅子しかなく。窓がなかった。
本当に牢屋のような部屋だ。
俺が必死に手錠を外そうと無謀に頑張っていると、重いドアがゆっくりと開いた。
「なんでだよ! 手錠なんてつけなくてもいいだろうがよ!」
ドアの向こう側にいる人物に俺は怒鳴った。
手錠から皮膚に伝わる冷たさが、気持ちが悪くて仕方がなかったのだ。
ドアが完全に開き切ったとき、俺はそこに立っていた人物を見て言葉をなくした。




