第三十七戦 捜索②
いつ見つかるのかわからない。そもそも妹がこの役所にいるという確信はないのだから本当に見つかるかということは保証されないのだ。何時までとか決めないと妹がいない場合、終わらない捜索をしなければならない。
それにしても、ここはいつも人であふれている。小さな子供から、高齢者まで。老若男女がここに集う。
この役所ではいろいろな種類の契約や登録ができるため、人がいなくなるということは全くと言ってもいいほどないのだ。
人が多い。うるさい。狭い。
俺にとってここはあまり好きな場所じゃないんだ。
人のざわつきがおさまる気配がない。他人が大声で話せば、さらに大声で話さないといけなくなる。そいった連鎖がざわつきを酷くさせるのだ。
ざわつきを耐えられなくなった俺は両手で耳をふさいで歩き始めた。
耐えられないんだ、この当たり前のような日常が消えてしまうと思うと恐くなるんだ。
俺が勇者だった頃、知り合いが次々と残虐に殺されてしまった。
それが、俺の心臓にかさぶたのようにくっついているのだ。いわゆる、トラウマってやつだな。
殺された知り合いにはもちろん妹も含まれている。
どれほど探しても見つからない。
ここは、一度捜索するところを絞ってみるか。
「たしか、俺にも登録をしろって言ってたよな……」
独り言をぶつぶつと言いながら妹のいそうなところを考える。
その時の俺の姿は、他人から見れば近づいてはいけない人と見られただろうな。
気づいてんだよ、お前らが俺を見てみないふりをしていることくらいな。
一つ利点があるとすれば、非常に歩きやすいということだろう。本来であれば横歩きしないと通れないようなところでも、俺の目の前にいた人たちは親切に道を開けてくれるのだ。
ちなみに、ネガティブな考えをしないのが俺のポリシーでもある。
「それにしても、俺が登録しないといけないことってなんだ? 住民登録書だって、ずっと前にしたし。
冒険者の申請もしたはずだ。あの言い方からして、妹と俺の共通点が関係してるに違いないよな……」
あごに手を当て、名探偵のように考え始まる。
「冒険者の申請か? 確か俺は以前、悠理と一緒に登録したはずだよな」
しかしだ、急に不安な気持ちが俺を襲った。
いま俺が考えていることは普通ならありえない。だが、もし考えていることがあっているのなら……
――――妹は生きている。




