第三十六戦 捜索
俺は走っていた。次々と背後に駆けていく街の風景は朝日に照らされ、眩しい光を反射させている。この美しい景色は街の自慢できることの一つだろう。これほどに、朝が気持ちいいと思える街なんてこの街以外は考えられない。
目指す場所はもう少しで見えてくる。
そこに行けば俺の気持ちが納まってくれるのだろうか……
――――いや、結果によっては無理なのかもしれない。
妹は生きているのか、生きていないのか。この二つ、実はどちらの結果になろうとも俺の心への負担は回避不能なんだよ。
ついに役所の大きな門が顔を出した。ここに来たのは初めてというわけではないが、毎回この建造物の大きさには驚かされている。目立つような建物が存在しないこの街だからこそ役所の大きさが際だってしまうのだろう。
もちろん、大きいのは門だけじゃない、役所も並外れた大きさである。かなりの田舎に国会議事堂が建っているような感覚。
白く塗装されたきれいな壁。これは街の住民たちが早朝から自発的に掃除をしているからこそ、きれいな状態で保たれているのだろう。
いまも目の前に何人か掃除をする街の住民がみられる。
「朝早くから大変だよな。いったいなんのために掃除してんの」
俺には壁や、門を掃除する人々が何を考えているのか、まったく理解できなかった。
感謝。という気持ちがないのだ。
毎日使わせてもらっているからこそ、掃除をしてきれいにする。これが街の住民が掃除する理由だ。
そんなこととはつゆしらず、俺は街の住民を無視してずかずかと役所の門をくぐった。役所の入り口まで続く長いレンガの道端には、きれいに花咲く花壇があたり一面に広がっている。これもまた、街の住民が毎朝手入れしているからこその美しさなんだがな。
ほんとうにここは街の住民から愛されてる。
俺は鉄製のドアノブを握り、押した。きいい……とドアの錆が嫌な音を鳴らす。それはたいして大きいわけでもないから耳をふさぐほどではない。それに、街の住民であればこの音にはすぐになれるのだ。
例えばコンビニに入るときに、どこからか楽し気な音が流れているのだが気付く人は少ないと思う。気付いても「あっ、そうだっけ?」といった反応が多いのではないだろうか。
それとほとんど似たようなかんじで、ドアから出る嫌な音も慣れれば気付かなくなるのだ。
ドアを完全に開き切った後、視線を前に向けるとすでに街の住民たちで中は溢れていた。
「このなかから、探せってか?」
帰りたいと嘆き始めそうになる気持ちを必死にこらえた。
何百といる人込みから探す、これがどれほど面倒か。
俺はため息を深くつき気持ちを切り替えると、顔をこすって気を引き締めた。




