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第三十三戦 共に

「へー。度胸あるんだね。てっきり君のことは、ビビりで何もできない軟弱な男だと思ってたよ。ここに来てからはずっと私の後ろに隠れていたようなものだったからね」


 香澄からテラの視線が離れた。いま、テラの視線に捕らえられているのは俺だからな。


 テラの目からはかつてのような可愛さは失われていた。残っていたのは、親の魔王と同じ人を殺すようなまなざしだけだ。


「でもね。私も言ったことは曲げない。あなたは私の命令を聞かなかった、だから私はあなたを殺す。最後なんだから言いたいことがあるなら言ってちょうだい。ただ、殺さないでなんていう命乞いは無意味よ」


 香澄の喉元を捕らえていた剣が離れる。急に死の危険からまぬがれた香澄は身体の力がすべて抜けてしまう。その場に立つことすら不可能とみられた。


 いっぽう、その剣はというと。香澄から離れた後、持ち主のところには戻らずに一直線に俺のところに飛んできた。


「ぐあああああああああああっ!」


 手が熱い。ドクドクと脈を打っているのがよくわかる。


 自分の手を見ると、剣が手のひらを貫通したまま壁に刺さっていた。


 あまりの痛さに神経がおかしくなったのか、火に燃やされているような痛みが襲う。


 痛すぎて気を失いそうだ。


「なに? 優しく殺してもらえるなんて思ってたわけ?」


 テラは俺の近くまで来ると、壁に刺さった剣を蹴った。


 剣が抵抗もなく、より深く壁に刺さる。どうじに俺の手に倍増された痛みが襲う。


「さあ! 言いなさいよ!」


 完全に狂ってやがる。拷問でも受けている気分だ。


「そうだな……じゃあ言わせてもらおうか…………」


 気が少しづつ遠のいていくが、気力で意識をなんとか保つ。


 そして、呼吸が整わないまま絞り出すように声を出した。


「わりーな。まだ死ぬわけにはいかねんだわ」


 にやりと、笑った後。勢いに任せて手に刺さった剣を抜こうとした。


 抜けない。深く壁にめり込んでしまっているからというのもあるが、そもそも刺されたほうの手に力が入らないのだ。


「うがああああああああああああ!」


 刺されていない手で、剣を持ちいっきに引き抜く。


 本当にこれが俺の血液なのかと思ってしまうほどの血があたりに噴き出す。


「まだ、抵抗するの? おとなしく死ねばいいのに」


「遠慮させてもらうよ、確かに俺はもういつ死んでもおかしくないな」


 テラが新たに背後から剣を出現させると、俺にさらに語り掛けてくる。


「何が言いたいわけ?」


「言わなくてもわかるさ」


「そう? よくわからないけれどあなたを殺すわ」


 テラはあの時と同様の動作で剣をこちらに飛ばしてきた。


 俺からすればこの行為は想定内だ。これを狙っていたといってもいい。


「お前の負けだ魔王の娘」


 


 


 

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