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第二十五戦 女

「なぁ、聞いてんの? あんたらの声がうるさいって言ってるんだ。なにか言うことくらいあるだろ」


 静まり返った廊下にその女の声が重く響く。


 その女性は特に恐くしているつもりはないのだろうが、俺たちからすれば非常に恐く見えてしまうのだ。


 面倒なことになる前に逃げられるといいんだが。


「ごめんなさい!」


 とりあえず何か言わないと殺されると感じた俺は深々と頭を下げて謝った。


 だが、横にいるテラは謝るどころか頭を下げようとすらしない。こんな状況でも自分の気分を優先するとは……


 いったいこいつのメンタルはどーなってるんだよ。恐れるものはないってか?


 さっきみたいにならないでほしいな。また睨みあいにでもなったら俺には止められなーぞ。


 恐る恐る視線を女のほうへ向けると、さっきまで奥のほうにいてたはずの女はこの一瞬でおれの目の前に立っていたのだ。


「いぎゃああああああああああああああああああ!」


 俺は幽霊でも見たかのように驚き、後ろに飛び跳ねてしまう。


 怒っている状態のテラもさすがにこの声には驚いたようで、小さな方をビクンとはねさせていた。


 しかし、女はその声を聞いても無反応でまっすぐテラの方向に向かって歩いて行く。


 そして、女はテラの前に立つとピタリと足を止めた。


 ま、まずい! このままじゃテラが……


 また喧嘩腰になってしまう。一難去ってまた一難ってやつか。


「そこをどきなさい」


 女はテラの目の前に立つとそう言い放った。テラはなぜだろうと疑問の表情を浮かべながら女の言うとおり、廊下の端に移動する。


 テラもてっきり自分がターゲットになっていると思っていたようで、女が言った言葉がよく理解することができなかったようだ。


 道を開けたのを確認すると女が再び足を動かし始めた。


 一歩踏み出すごとにタッタッタと、女のヒールの堅い音が鳴る。


 え? 嘘……もしかして俺がターゲットなのか!?


「んなワケねぇよな……」


 なんて情けない通わな声を出しながら俺は女の方向を見た。


 顔はなんの感情もこもっていない。喜怒哀楽のどれにもあてはまらないその表情が逆に恐ろしい。


 そのヒールの堅い音がまるで頭の中で響いているようで、近くなればなるほど頭が痛くなっていく。


 痛みという形での幻に俺は苦しんでいると、気付いた時には再び女が目の前にいた。


 


 


 

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