第二十二戦 就職
「どうするんだ? 働くのか? 働かないのか?」
脅迫をするような恐ろしいその声に、俺はただうなずくことしかできなかった。
「そうか! いっきに二人もスタッフが増えるなんてな!」
ん? ふたり?
おれはまさかと思い、テラのほうを向く。テラも男のその言葉に疑問を抱いたようで、首をかしげていた。
「あ、あの……」
テラは聞かずにはいられなくなったようで、男におびえながらも問うた。
「二人って、この人だけですよね? だったら、一人ですよね?」
「あ? 何言ってんだお前も合わせるにきまってるだろう?」
男の鋭い眼は、今度はテラに向けられた。
しかし、テラは負けじと男を睨む。睨みあう二人の間にはバチバチと火花が飛び散っていた。
こいつ、恐いって思わないのかよ……
さすがは魔王の娘。父である魔王よりも恐いものなんてないってか。
「私は働くなんてしないわ! 資産ならたくさん有り余っているわ。一生働かなくてもいいほどあるのよ」
冒険者たちが落としていった金貨などがまさかこんな形で使用されようとしていたとは……
元冒険者であった俺もこればかりは、呆気にとられる。
「今、その資産とやらは出せるのか? 本当に金があるのならこんな田舎にいないはずだぜ?」
「だって、私はここの住民じゃないもの。だからここにいるのはたまたまなのよ」
男はテラと話をしても意味がないと考えたのか。俺のほうに視線を戻した。
「仕方ねーな。ここで働いてくれるっていうなら宿賃くらいは出してやれるぜ? あんたならどうする?」
条件がとても良すぎる。お願いしますと答えたいところだが、まだ指名手配という言葉がのどに詰まっている。
それよりも先ほどから、妙にあたりが騒がしい。それは俺らの声じゃない、音は窓の外から聞こえている。
窓の外には鬼の形相をした待ち人たちが、待ちきれずに窓を叩いている。それを必死に先ほどの店員が止めようとしているが一人では手に負えないほどの人数だった。
窓の外を見ている俺に気付いたのか、男は返事を待たずに話をつづけた。
「あーあ、このままだったら王国の兵士が来てしまうな。どうしようか、お前らを営業妨害者として扱ってもいいんだぜ?」
その言葉に、俺とテラは敏感に反応した。体に電気でも走ったかと思うほどに。
「そんなのひどいわよ!」
「働きます!」
俺たちの声はほとんど重なった。だが、声の大きさでは圧倒的に俺が勝っていたため、テラの声は男には届かなかった。




