第二十戦 ファミレス
ファミレスの前に俺たちはいた。先ほどのことを反省したテラは、肩を小さくしておとなしくおれの横にいる。ただ、子供のように頬を膨らましてまったくおれと目を合わしてくれない。
拗ねてるな。これは。
そんなことはもうどうでもいい。このファミレスで情報を手に入れる。それが俺たちのいまここに立つ理由なのだから。
「入るか……」
「……」
拗ねているテラは返事ですら返してくれない。まったく、小学生かお前は!
一度拗ねてしまったら、なにかいいことがあるまでずっとこのままなのだろうか。
しかし、テラにかまっている余裕なんておれにはない。一応、指名手配をされている身であるためこうしている間にもいつ捕まってもおかしくないのだ。
おれは、覚悟を決めて店のドアノブに手をかけ、ゆっくりと押した。
開き切るとともに、鈴のような甲高い音が響く。
チリン。
その音は、なつかしい風鈴のようなあまい音で緊張で固まったおれの体を解してくれた。
「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか!」
店内から走ってきた店員につい驚いてしまう。接客業だから仕方ないんだけど。そこまで走ることもない気がする。
横にいるテラにふと視線を向けるとまだ拗ねているようだった。
ま、この人でもいいか。とりあえずなにか知っているといいんだけど……
俺は深呼吸をして落ち着きを取り戻し、この店員にあのことについて問うことにした。
「あの、すみません。聞きたいことが――」
「何名様でしょうか!」
なんて一方通行な店員なんだろう。おれの話題を完全に消滅させてきやがる。
「あ、あの……」
「すみませんお客様。後ろでほかのお客様も待たれていますので……」
後ろを振り向くと、さっきまではなかった人の行列ができていた。
店内にいたほかの店員が看板を持ち、店のそとに走っていった。すれ違った時には看板に書かれていた文字に気付かなかったんだけど、入り口付近にある大きな窓からその文字をしっかり見る事が出来た。
そこに書かれていた文字に俺は言葉をなくしてしまっていた。
最後尾はこちらです!!お待たせして申し訳ございません!
それって、遊園地とかで使うものじゃないの? それよりも入り口付近にその看板を用意するほどこのファミレスって人気なのかよ。
俺は窓の外に移る光景に目を奪われていると、左腕にグイグイと引っ張られるような感覚があった。




