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第十二戦 指名手配

 意識がうっすらと戻り始めた。


 おれの意識がいつから飛んでしまったのかは、はっきりとわからない。それでも最後にテラの声が聞こえたような気がする。『からだを借りる』的なことを言っていたような……


 それにしても、おれの顔面につたわるこの感覚。どこかで体験した気がする。


 ごく最近のことにちがいない。


 冷たくひんやりとした、低反発の二つのクッション。


 ん? 二つ?


 俺は目を開けた。だが、視界は暗くなにも見えない。


「なにかはよくわからんが、なんだか甘い匂いがするような」


 俺はこの状況がまったく把握することができない。


 ただ、なにかに巻き付かれているような締め付けが身体全体にある。


 とりあえず、ほどいてみようと動いてみた。


「ふにぁっ!?」


 ん? なんだ今の声は。


 近くに猫でもいるのだろうか。


 それにしても、まったくほどける気配がなく。だんだんと息がしずらくなってくる。


 俺は目の前にあるものを、力一杯押しのけた。


 フニッとした感覚。同時に、キャッとかん高い声も聞こえる。


 とりあえず、うまく脱出することができたようで先程まであった締め付けがなくなった。


「なんだ、まだ暗いのか」


 俺は暗さになれない目で、辺りに明かりがないか探した。両手両足をつけた四足歩行で辺りを捜索。


 でも、ない。明かりとなってくれるものがない。


「あ、そうだ! テラ、あの刀出してくれよ」


 あの紫色に光る刀なら、少しでも明るくなるはず。


「仕方ないですね。わかりましたぁ」


 やる気のないだらけた返事ではあったが、刀を出してくれた。


 刀の効果は絶大で、一瞬にして暗闇がなくなった。


「お! 明るくなった。ありがとうな……」


 亮平は感謝をのべようと、テラのほうを向いたのだが。驚きのあまり、あごがしまらなくなった。


「もぅ、このケダモノぉ」


 よこにいたのは、全裸のテラ。


「お、お、お、おまえ! 服着ろよ!」


 俺には刺激が強すぎる! 頼むからやめてくれ!


「あれ? いいんですかぁ? こんな美少女の裸なんて滅多にみれませんよぉ?」


 いやいや、見たくないから。見ても喜ばないから!


 まてよ、さっき俺がさわったあの感触って……


「それに私もあんな大胆に襲われるとは思いませんでした」


 やっぱりそうだったのかよ。


「寝てるときはどんな男の子でも、正直になるんですね!」


 なにが目的なんだこいつは。


 さっきまでのクールなテラはどこにいったんだよ。帰ってきてくれ。


「まぁ、この話は後程ということにしておいて――」


 まだ俺をいじめるのかよ。


「明日のことについて、少しお話します」


 テラの顔が急に真面目になった。それと、ともに何故かびしびしと緊張感がその場にはしる。


「ごくっ」


 亮平は緊張で唾をのみこんだ。


 手汗が、止まらない。


「今日、私たちが倒した敵なんですけど。どうやらこの辺にある大きな王国の有権者だったらしいんですね」


 うんうん、と、おれはうなずく。


 実際、俺が倒した訳ではないのだけれど。ここは突っ込まないでおこう。


「で、あなたは王国の有権者を殺してしまった。つまりは、犯罪者となってしまいまして。その王国で指名手配となっています」


「おれが、か?」


「はい」


 なんでだよ! おれ、殺してねーよ。


「指名手配されるのは、テラのほうじゃないのか?」


 男として最悪の発言だとは、思う。しかし、本当におれは殺してないし、なにもしてない。


 記憶のないときに勝手にそんな話になってもらっても困る。


「確かに、殺したのは私です。ですけど、殺したのはあなたの身体。命を奪ったのは、あなたの身体なのですよ」


 テラは、かわいそうだなと言わんばかりの目でこちらを見てくる。


「うそだろぉぉお!」


 亮平は頭をかかえて、その場に座り込んだ。


 顔色は真っ青になり、冷や汗がからだのすみずみからでてくる。


 おれ、犯罪者になったのかよ。


 








 



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