三話目 楽しい能力測定
少しばかり修正しました。
「どうかしたのか?」
王は心配そうに五人を見つめる。
ここで自分の名を明かしていないことに気が付く。
円滑な人間関係の構築は大事と考えた王は話し出す。
「余はエルマー=シンピジュームじゃ」
これを皮切りに王への質問攻めが始まった。
王は喋ったことを少し後悔した。
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玉夫達は今、客室に案内され一息ついていた。
情報は多いが、一つ一つ整理していこう。
まず、この世界の事。ここはガルガリアという世界だ。
玉夫達のいた世界の中世的な文化と別の文化が混ざり合ったものだ。
そして、今いる国はオーキッドと呼ばれる国だ。大きな城の周りにたくさん町ができており、その町は城壁で覆われていた。
オーキッドの南側には森を挟んでいくつかの町があった。東にはグルクマと呼ばれている国が見える。
次に戦争があること。
現在、グルクマとの戦争が始まりつつある。
オーキッドに限らず、今、世界では色々な国が争い続けていた。
領土争いや資源の独占を目論む国が増えてきたそうだ。
しかし、兵は足りず、防衛もままならない。こんな国が多くあったらしい。
そんな時、ある魔術師が思いついた。それは画期的ともいえる。
それが異界の者をこちらに呼び寄せることだ。
最初は失敗ばかりの転移だったが、試行錯誤の末についに成功した。
異界の者は皆強く、様々な知識をこの世界にもたらした。
無論、リスクがないわけではない。魔力を大量に消費するため、大規模になってしまう。
さらに相手を選択ができないため、戦わない者も少なくなかった。
玉夫達は戦争に参加させるために召喚したそうだ。
グルクマには異界の者はいないとのことだ。
「皆さん、準備が整いました」
玉夫達は声のする方に目を向ける。
赤い髪は少し癖のあるロング。頭の黒い巻き角が印象的だ。
彼女はオーキッド騎士団の小隊長を務めている、ネリーア=セルディオという。
隊長に代わって玉夫達に修行を付けることとなったそうだ。
五人はネリーアについて行った。
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玉夫達は倉庫のような場所へと連れてこられた。そこには武器や鎧といったものが置かれている。
この部屋の中央にある石版は一際目立っていた。
「今からステータスを測定させてもらいます」
ネリーアが言うには、この石版は触れたものの身体的能力を測定するものだそうだ。仮の名を与える目的もあった。
この世界では五人は名を名乗ることができない。元の名前ではなにかと不便であるためである。
「まずは、あなたから」
指名されたのは桐嶋だった。
「ここに手を当ててください」
彼女が指差すのは、石版にある丸いくぼみだった。
桐嶋は言われるがままに石版に触れる。周りにも緊張が走る。
石版には少しずつ文字が浮かび上がっていく。
その石版にはこう書かれていた。
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ジェフ = ノーランド 男
筋力:A
耐性:C
敏俊:B
体力:B
魔力:D
技能
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項目は大体そのままの意味だ。
横の記号は現在のステータスへの評価だ。
技能とは個人が持っている特別な力の事だ。
評価はS>A>B>C>D>E>Fの順番となる。
Sは滅多に出ることのない評価で、Fは騎士であれば恥とも言われる評価だ。
桐嶋はかなりの高評価を受けているのだ。この世界では優秀な人材と言える。
他の四人も測定する。
次は加藤。
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エリファレット = パーラー 男
筋力:C
耐性:B
敏俊:D
体力:A
魔力:D
技能
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次に飯田。
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フレデリック = リーガン 男
筋力:C
耐性:D
敏俊:C
体力:B
魔力:A
技能
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その次に雨宮。
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ヴァイオレット = ミーク 女
筋力:D
耐性:B
敏俊:D
体力:C
魔力:A
技能
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ここまでの四人は総合的に優秀だった。
やはり召喚された者は強い。ネリーアは疑いもしなかった。
最後に玉夫。
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アルス=ファーゲット 男
筋力:E
耐性:E
敏俊:E
体力:F
魔力:S
技能
魔法分解
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彼のステータスはひどいものだった。
魔力は最高位なのに他が伴っていない。
体力なんてそこらの子供程度だろう。
場の空気が凍りついた気がした。
どうしたらこうなるのか教えてほしいとネリーアは思った。
「これはひどい」
最初に口を開いたのは玉夫だった。
その言葉にここにいた全員が頷いていた。