零話 プロローグ
※ラブコメです。
世界の始まりから存在するという四柱の古代龍。
一柱は風を操り狂飆を起こす。
一柱は火を操り噴火を起こす。
一柱は水を操り津波を起こす。
一柱は土を操り地震を起こす。
さらにもう一柱、それらを統べる王にして始まりの龍、“始祖龍”
この5柱の神龍達によって世界の均衡は保たれていた。
風神龍は西の地を。
火神龍は南の地を。
水神龍は東の地を。
土神龍は北の地を。
そして、中央から全てを見護る始祖龍。
その平和は永遠に続くものだと思われていた……。
始祖龍を始めとした龍神達には寿命がない。
正確に言うと肉体には寿命があるが、彼等は転生を繰り返し、記憶と力を引き継いでいく。
始祖龍は一万年、古代龍は三千年ごとに老いた体を捨て、新たに生まれ直す。
1度に1匹しか産まないはずの龍種が双子の龍を産む時、その片方が始祖龍または古代龍の転生した姿である。
さらに始祖龍、古代龍の双子の兄弟として産まれた龍は、その生涯を従者として過ごすことになる。
そして、前回始祖龍が転生してから一万年の年が経とうとしていた。
通算にして記念すべき六十万回目の転生。
而して今までになかった問題が発生する事となったのである……。
◇
「ウルガン。この一万年世話になったな……」
「とんでもございません。始祖様の従者に産まれて生涯共に過ごせたこと、この上ない幸せにございました」
目の前で恭しく頭を下げているのは、蒼く輝く龍鱗と空と同じ様な澄み切った天色の瞳をした体長二十mメートルほどの龍。我われの従者にして一万年もの時を支えてくれた相棒とものスカイドラゴンだ。
前回の転生時に、最も新しい龍種で最も勢いがあったのがこのスカイドラゴンで、どの龍よりも速く空を飛び回る姿が何より格好良かった。
そのため転生先として選択したのだが、我自身は転生して卵から孵った時にスカイドラゴンの姿になるわけではない。産まれた時から始祖龍である。
体そのものは一年かけて本来の大きさ、体長五十mほどになるが、同時に産まれた従者までも一年で成長するわけでもない。スカイドラゴンの寿命は五百年~千年ほどであるが、従者となった龍の寿命は我が次の転生を行うまで延びる。つまりここで我が転生すれば、魂で繋がっているウルガンの寿命も尽きる。転生はしない。
「では、我は逝くぞ。ウルガン、長きに渡り感謝している……。そして、安らかに眠れよ……」
「はい、ありがとうございます始祖様……。始祖様の新しい生が輝かしいものになるようお祈り申し上げます。」
そう言うとウルガンは月光花で作られたベッドへ体を横たえ目を瞑る。
我も釣られるように目を瞑り、今生の記憶を思い出しながらも来世へと思いを馳せる。
段々と意識が薄れていき、体が軽くなっていくような浮遊感を感じてくる。毎度お馴染みの転生が始まったのだ。
――次はどんな龍種に世話になるか。
体が光へと変わり、魂は龍脈へと流れ込んでいく。
――久しぶりに海龍系にしてみようか。
海龍は龍の中でも最大の大きさを誇る種族だ。最近新しく陸にも適用した上位種が誕生したとも聞く。
海龍へと向かう龍脈を進んでいこうとする……が。
――!?
横から強烈な力の奔流が流れ込んできて思うように動けない。
必死にもがいてみるも、目指していた海龍種の転生からぐいぐいと押し出されていく。
――な、なんだ!? この力は…! な、なが……流されるっ……!
力の奔流はそのまま我を包み込み、強引に転生させようとしてるようだ。
何度も抵抗しようとするが、徐々に意識が遠のいていくと同時に覚醒していくような感覚がある。……これはもうまもなく転生が完了してしまうということだ。
――我はいったいどこへ転生してしまうのだ……。
答えも出ないまま、ゆっくりと意識は覚醒し、そして、転生は完了した。