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夢見て 見られて 夢の中

作者: 金平糖侍

夢です。でも、ただの夢じゃありません。

暇なら最後まで読んじゃいましょう。

いや、読んでください。

 今日も1日平穏だった。俺は田中隼人24歳、泣く子も黙るサラリーマンである。

 平穏な日々が一番の幸せだと思う。でも、できるものなら異世界行ってみたい。だってそうだろ?男のロマンだろ?

 さて、例え平穏でも、仕事は疲れる。今日はもう寝よう…





 気がついたら俺は見知らぬ所にいた。

 辺りはまばらに家々が立ち並んでいた。どこかの村の様だ。その中で「武器屋」と書かれた看板が目に付いた。

 ……ぶきや…す

 住人らしき人の格好は何かしらのゲームのキャラに似ている。中には鎧を身に付けた人もいる。


 まさか、まさかここは異世界!?

 異世界転生しちゃった!?

 いやいや、それしかないだろ

 周りファンタジー要素しかないし


 ギャオー

 その時頭の上からなにかの鳴き声が響いた。

 空を見上げると、ド、ドラゴンが飛んでいた。


 間違いない、異世界だ…


「おい、田中。何してるんだ?」

 いつの間にか40歳ぐらいのおっさんがいた。タンクトップで短パンと休日のおっさんの格好している。あきらかなメタボも加わって周りから浮いている。ってか、なんで俺の名前知ってんの?というかどっかで見たことあるな…


「おっさん、誰?」

「頭でも打ったのか?俺は魚さばきの佐藤だ。」

「はぁ」


 あきらかにファンタジー要素の欠片もない設定。

 …思い出した!このおっさん、近所の魚屋の店主だ。

 えっ?おっさんも転生したの?


 佐藤は怪訝な顔しながら続けた。

「さっさと魔王を倒しに行くぞ。」

「ま、魔王!?」


 何ですか?その「飲みに行くぞ。」的なのりは。そんな軽いのりでいいのかよ。

 でも、まさか俺は…


「おっさん、俺は勇者なのか?」

「何言ってるんだ?お前は『リーマンの田中』、勇者様のマネージャーじゃないか。」


 リーマンの田中だと…

 改めて自分の格好を見るとスーツ姿だった。一瞬嫌な予感がした。まさかな…


「しっかりしろよ、田中。」

 佐藤が背中馴れ馴れしく大きな音を立てて叩かれた。

 俺は落胆した。

「い、痛くない。」

 思わず膝まずいてしまった。

 ゆ、夢なのか…いやいや違う、きっとリーマンだけどチートな能力で痛みを感じない…はず…






「…」

 気がつくと森の中を歩いていた。

 この急展開は夢だな。


 ………俺はあきらめた。これは夢だ。俺の夢なら俺は最強のはずだ。なら、下克上で勇者を倒して、俺が勇者だ。

 


 今一緒に歩いているのは俺含めて4人と2匹。

 先頭を歩くのが多分、勇者だろう。どうやったらキープできるのか分からないダイナミックな髪型、鎧はないものの背中のマントには何かの紋章、そしてイケメン。間違いないなく勇者だ。


 その後ろには佐藤のおっさん。相変わらすの短パンタンクトップのメタボ腹。背中に大きなリュックサック。どっかで見たことある格好だな。


 その隣には、全身ピンクでフリフリのスカートを装備した魔法少女?いや、服は魔法少女だ。キラキラ光るステッキ持ってるし。着ているのが20歳ぐらいの女性。ぎりぎりセーフな年かな?本人も気にしているのかずっともじもじしている。まあ、アイドルとはいかないものの美人だからいいか。


 その後ろを行く俺とチワワと豚。

 なんなんだこのパーティーは!?本気で魔王倒す気あるのか?


 とりあえず、状況確認のため魔法少女に話しかけてみよう。

「ちょっといいですか?」

「ひゃいっ」

 彼女は驚いたのか声が裏返った。

「お姉さんの名前はなんて」

「おい、リーマンの田中、魔女っ子谷村、おいてくぞ。」

 佐藤の声に話を遮られてしまった。

 というか、やっぱり魔女っ子なんだ。魔法少女よりアウトかも…

 佐藤を無視するわけにはいかず、魔女っ子と歩き出した。

「あ、あの」

 今度は魔女っ子から話しかけてきた。緊張してるのか震えていて少し萌える。

「田中さん、魔女っ子って何をすればいいんですか?」

「え?」

 魔女っ子である本人に聞かれても分かるものではない。何かの試験だろうか?

「やっぱり、魔法で戦うんではないかと…」

「で、ですよね。私、気がついたらここにいてなにがなんだか…」

 その困った顔はとても愛らしい。モテるんだろうな。

 こんな子がいるなんて、俺にしては上出来な夢だ。


 それから無言のまましばらく時間が過ぎた。俺としては、早く勇者を倒したいんだけど、いくら自分の夢とは言え1対3と2匹で戦うのは流石に勇気がいる。万が一負けたら最悪の目覚めだ。朝から仕事たまっているので寝起きぐらい気分のいいものにしたい。


 にしてもいつまでこの道は続くんだ?森の中をまっすぐ進む道には終わりが見えない。





「…」

 相変わらすのこの急展開には驚かされる。

 一瞬で俺たちは黒いオーラが出ている城の目の前にいた。周りの木々もどす黒い色をしている。

「魔王はこの城の最上階にいる。」

 勇者が皆の指揮を高めるかのように声をあげた。

「さあ、最後の戦いに行こう!!」

 勇者は腰につけていた剣を抜き、高らかに空にかざした。それを待っていたかのごとく、城の門が開き真っ黒い生物が無数に飛び出してきた。

「魔王の手先の悪魔だ。一時解散。魔王の前で会おう。やあああっ」

 勇者は剣を振りかざし、悪魔を瞬殺しながら城の中へ消えていった。


「勇者だからって強過ぎだろ…」


「田中、死ぬなよ。」

 横には佐藤がいた。リュックサックはどこかに置いてきたらしく、手には厚手の包丁を持ってる。確か、魚を捌く出刃包丁って言う包丁だと思う。

 流石に包丁じゃ、戦えないだろ…


 佐藤は出刃包丁を天に翳した。

 包丁と佐藤の天辺ハゲの太陽光を反射した光が交差する。



 ま、まさかな…俺の夢だぞ…

 そしてそれは現実となってしまった…



 佐藤は包丁を降り下ろしながら、叫んだ。

「変身っ!!」

 ハゲと包丁の光が広がり佐藤を包んだ。

 光の中から鮫をモチーフにしたであろう白銀の鎧を全身にまとった騎士が現れた。

 もはや別人だろ。腹周りは半分以下となり、伸長は30センチは伸びている。第一手足がモデルの如く長い。2メートルはあろうかという長剣となった出刃包丁を持つ姿から、佐藤のおっさん要素ゼロである。

 おっさんに釘付けになっていると


 アンギャァァァァ


 いつの間にこんな近くにいたんだろう?突然視界に3メートルはある男が現れた。よく見ると手足には水掻きらしきものがついている。魚人かもしれない。その手は明らかに俺に向かって降り下ろされる。死を前にすると割と冷静になれるらしい。まあ、夢だから死ぬもなにもないけど…

 死を覚悟した時、俺と魚人の間に佐藤が割って入った。

 そして長剣を構えたと思うと、魚人は血飛沫をあげながら後ろへ大きな音と共に倒れた。

 太刀筋が見えなかった。速い…というか強い。


 そして長剣を肩に乗せ一言

「魚を捌き、悪魔を裁くのが俺の仕事だ。」


 何無駄に上手いこと言ってるの?しかし、カッコいい…なんでこれが佐藤のおっさんなんだか…

「勇者様に続けっ」

 佐藤も城の中へ消えていった。

 改めて周りを見ると悪魔はおらず、俺と豚だけが取り残されていた。

「どーすればいいんだよ…」

 思わず愚痴ってしまった。俺の夢なのに思い通りいかず、リーマンの田中だと?魔女っ子の方がまだ戦える。

「田中は魔王のとこ行かないの?」

「武器もないのに無理だろ。……え?」

 そこには豚しかいない。

 ぶ、豚がしゃべった!?無駄にキレイな声だし。落ち着け俺、これは夢だぞ。

 豚は鼻で俺を笑うと唐突もなく話し出した。

「田中さっき死にかけたでしょ?」

 俺は頷く。

「肉体に戻れなくなるわよ。」

「は?」

 豚は澄ました顔でいちいち挑発してくる。

「とある魔界のお話しです。その魔界の魔王のご子息は人間界のゲームが大好きでした。それはもう朝から晩まで寝る間を惜しんでやるほどでした。ある日ご子息は睡眠不足で倒れてしまいました。魔王は魔界一腕が立つ魔女を城に呼び、ご子息にスリープの魔法をかけさせました。」

 しまいには俺の足元をぐるぐる周りだした。すごくイライラする。


「しかし、そこは溺愛するご子息のため。夢の中でも遊ばせてやって欲しいと魔女に命令しました。魔女は考えた挙げ句RPGの世界の夢を見せることにしました。普通に見せたのでは面白くありません。そこで、人間界からテキトーに人間の魂を召喚して、ご子息の思い通りに動かないキャラを用意しました。」


 ま、まさか…


「そうです!その魔界一の魔女こそ、このわたっ」 ドスッ

「どうでもいいっ!」

 思わず豚を蹴ってしまった。いや、でも本当どうでもいい。問題はこの世界が…


「ん~、快感♪」

「え?」

「そう、ここはご子息の夢の中。ここで死んだら元の世界じゃ植物人間確定ですよ。」


 今この豚蹴られて喜んでたような……

 ここ魔王の息子の夢の中か。でもこれって夢だよな?

 マジだったらやばいよな。俺戦えないし…


「何で俺は戦闘力ゼロなんだ?おまえ豚だし。チワワいたし。」

「いろんなステータスのキャラがいた方が盛り上がっ」

 ドスッ

 思わず豚を蹴ってしまったテイク2。というかそんな理由で俺危険なことなってるのか?

「はぁ はぁ いい…失礼、私が豚の姿なのは」

「言わなくていいから。」

 話を遮った。こいつといると自分のキャラが崩壊しかねない。

「そういう扱いされるのもいいかも~」

 豚は鼻歌混じりに喜んでいる。俺にどうしろと!?けしてSではないぞ。

「あと、チワワならあれを見て。」

「………」


 そこにあった光景は俺から言葉を奪った。

 チワワが、チワワが勇者やおっさんの倒した悪魔の屍を食っていた。しっぽ振りながら満面の笑みで。その笑みに癒され………ないっ!いや、恐いんですけど!?口から何かドロドロした緑色の液体垂れちゃってるし!!

 俺が震えていると豚は気にする様子もなく鼻で笑われた。イラっとするけど、多分狙ってやってる。


「ステータスはですね



 勇者様(Lv.max)

 装備 ものすっごい強そうな剣

 とにかく最強。魔法も使いたい放題。主人公だもん♪

 

 魚さばきの佐藤(Lv.93)

 装備 出刃包丁

 普段はただのおっさん。変身すると勇者様並みにつおい。


 チワワ(Lv.82)

 装備 赤い首輪

 悪魔を食べることで能力をコピーできる。また、口から出す炎は全てを焼き付くす。まあまあ強い。


 メス豚 (Lv.73)

 装備 なし

 戦闘力はないが体力はパーティー最強。時には身体を張って仲間を守る。………考えただけで快感♪


 魔女っ子谷村 (Lv.13)

 装備 マジカルステッキ

 頑張れば魔法とか使えそうな気がする。弱い。


 リーマンの田中 (Lv.1)

 装備 スーツ

 ぱっと見ただのサラリーマン。中身もただのサラリーマン。論外。


 こんな設定にしたよ♪」


「最後のふたりおかしくね!?」

 ツッコミたくもなるだろ。なんだよ、頑張れば魔法使えそうって…なんだよ、ただのサラリーマンって…

 



「あっ、なんか勇者様と佐藤が魔王倒したみたい。」

 豚が残念そうに言った。

「はい!?」

 いや、待てよ。なんだよ、なんなんだよ、この、この





「急展開はあああああああ!!!!」ガバッ

 ……あれ?

 そこは見慣れた俺の部屋だった。

「夢だったのか?」

 まあ、あれが誰の夢でも最初から夢だったけれどもだ。

 俺にしてはリアルな夢だったな。……やばいっ、遅刻だ!

 時計の針はすでに10時をさしていた。





 ―――その夜―――


 散々な1日だった。

 急いで家を出てからいきなり近所の散歩中のチワワに噛みつかれた。裏道を通っていたら曲がり角で美人のおねーさんとぶつかった。それはいい。ただ、その人の鞄の中から大量の魔法少女のグッズが辺りに散らばった。とてつもなく、気まずい。商店街を抜けようとすると魚屋につかまり、一時間説得され高級虎ふぐを買わされた。素人が捌けるはずがないのに…

 そして会社では上司に絞られ、残業ときたもんだ。

 疲れた…もう寝よう…





「…」

 そこは森の中だった。そこには4人と2匹。

「ご子息がまた、やりたいんですって。」

「今日は田中も戦うんだぞ。面白いから。」

「ワン(まあ、盾にでもなってくれ。)」

「田中さん、ファイトです。」

「さぁ、冒険の始まりだ。」

 なんだよ、なんだよ、


「この展開はああああ!!!」


 俺にしばらく、平穏な日々はかえってこないようである。



読みにくいって?いいです。夢だから。


でも、これを読んでるなら最後まで読んでくれたんですね。

ありがとーございます。

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