涙が舞い散る桜になって~secret message~
──私の初恋の話をしましょう……
──それは中学2,3年の頃のお話。
……遅めの初恋でした。
私は〖恋〗というものがよくわからなかった。
だから気づかなかった、というのもあるのでしょう。
──いつの間にか、恋をしていたのです。
……その恋が叶うことがなくとも、
私はあの人への想いを止めることができなかった。
───〖初恋は実らない〗───
その言葉を信じたくないのに、
私はその言葉を思い出す。
あの人に伝えたかった──……
自分の気持ちを──……
……──私の初恋の相手。
それは友達の彼氏でした。
その彼氏は小学校の5,6年の時、
同じクラスの人でした。
その時から、気になってはいたのです。
でもある日、その人とその友達が笑っていました。
友達といた私を見て。
そして、友達から聞いてしまいました。
「さっき、あなたの笑い方でわらってたんだって。変わってるって。
キモいって。」
その時から、笑うことが少なくなりました。
中学生になってから、その人とは別々のクラスになりました。
笑うことがあっても、あの時の言葉が思い出され、
思い切り笑うことができなかった。
友達に「笑い方、変わってるよね」と言われる度に、
私は恐くなりました。
その人もまた、裏では「気持ち悪い」と言っているのではないかと。
それからは、その人のことは何とも思わなくなりました。
好きになるはずない───
あんな人、好きじゃない───と。
でもある日、塾で聞いてしまった。
彼と私の友達が、つき合っている……
その瞬間、私の思考が止まりました。
──嘘でしょ……?
そんな言葉を口にすることもできず、
ただ「そうなんだ」と、言いました。
いつもなら、「すごいね」「おめでとう」と言えるのに、
その時は言えなかったのです。
その日から自分の気持ちが、
わからなくなりました。
───中学2年のクラス替えで、
その人と同じクラスになりました。
その彼女と共に。
その時の私は「あの人なんか好きじゃない」と、
自分に言い聞かせていました。
でも私は自分でも気づかないうちに、
彼を目で追っていました。
──そして、気づいたのです。
私は彼が好きなんだ。
彼と目が合うだけで、私の心は躍りました。
自分の気持ちに気づくと、話すことが恐くなってしまい、
ただ目で追うことしかできませんでした。
ある日の休み時間。
彼の彼女がからかわれていました。
「あいつの隣に行ってきなよ」
「隣に座らせてもらえば?」
彼のすぐそばでそう言ってからかうその人達は、
すごく楽しそうでした。
彼女は恥ずかしいのか嫌がっていました。
私は彼のほうに目を向けると、
──彼はただ体の向きを変えただけで、
その場に居座っていました。
「嫌じゃないんだ」
そう、思いました。
ふと彼女に「つき合ってから、どれくらいになるの?」と聞きました。
答えは「もうすぐで1年になるよ」
───叶わないな………
……胸が痛くなり、苦しくなりました……
私は心の中でそっと言いました。
『あなたがずっと、好きでした……。』
それから私は、自分の想いを抑え込み、
彼らの幸せを願うことにしました。
私の頬を伝う涙が
舞い散る桜になって
彼らをはじめとした色々な人々に
幸せを届けられるように。
私も笑ってすごそう。
いつか幸せを掴めると信じて──……