鳥との交換条件
「あんた……どういうつもりで私に話しかけたの?」
教室から離れ、廊下に出てきた俺。
鳥はみんなから離れた場所に着くと、俺を睨みつけてきた。
「どういうつもりって……」
俺は咲さんが目当てで鳥に話しかけていった。こいつと仲良くなれば、咲さんと話す機会だって増える事だろう。
普段は無口で、近寄りがたい雰囲気のある咲さんに近づくためには、友人の鳥から近づくのが一番いいと思ったからだ。
「あんたの目当ては、咲なんでしょう?」
やはり見抜かれているのか……鳥の反応を見て、そうだと思ったのだが……
「ああ……そうだよ……」
俺が言うと、『それ見たことか』といった感じで体をふんぞり返す鳥。
「咲に用があるんなら、直接あいつに話せばいいんじゃないの?」
冷たい目をしているのが、声だけでも分かる。俺は、冷たい汗が背中をつたっていくのが分かった。
「そうしてフられてった奴が大量にいたからな」
咲さんには、いままで、何人もの男が告白をしていった。
だが、咲さんは全員の男をフったのだ。
何がいけないのか……? それが分からない。咲さんの理想が高いのか? それとも、他に好きな男でもいるのか?
「フり方もすごいキツいんだよ。『私は、あなたには興味がない』とか、『私はあなたは絶対に合わない』とか、取り付くシマもない言葉で思いっきりバッサリだもん」
「そんな事まで調べていたの? キモい……」
鳥は明らかに嫌悪感をみせた。
「だがなあ……難攻不落の城を落とすには、どうしても情報が必要なんだよ。城を真正面から攻めると多大な犠牲がだな……」
俺は平身低頭をしながら鳥に言った。だが、鳥の反応は冷たいものであった。
「知らなーい。勝手にやりなさい」
ぐ……だめか……プイッっと後ろを向く鳥の背中を見ながら、俺は奥歯を噛んだ。
「と……言いたいところだけど……」
鳥がそう言うと、クルリと体を反転させた。
「交換条件って事でどう?」
クスリと笑った鳥が言い出す。鳥のだす条件とは一体何なのだろうか?
「五十家君なんだけど……」
そう切り出してくる鳥。鳥の出してくる条件とは何か? 俺は鳥の話を聞いた。
「彼をサブカルチャー研究部に上手く誘ってくれる?」
五十家とは、このクラスでも女子達のアイドルである。
成績優秀でスポーツ万能で整った顔立ち……ここまで言えば分かるだろう。
つまりはこのクラス一番のイケメンだ。
「五十家君が、一人でいる時、『乙嫁語り』を読んでいるのを見てさぁ……」
『乙嫁語り』は、部室にあった漫画だし、俺も読んでいる。
『綺麗な絵と、牧歌的な内容で、ストーリーも絵も、高水準で構成されている良作』とは部長の言である。
「なかなかの通みたいだな……」
マンガが好きそうな奴だったら、誘ってみよう。そう思った俺は、その話を承諾した。
「それなら、私の方も咲の事を誘ってみるね」
なるほど、鳥の言う条件とは、単純なギブアンドテイクである。
俺が五十家をサブカル研に誘う。それに対して、鳥は咲さんをサブカル研に誘う。
「それとも、咲に聞いてみようか? 『岩城の事をどう思う?』って……」
「それはやめてくれ!」
真っ向から突撃をするようなマネはしたくはない。なんせ、相手は難攻不落の咲さんなんだ。
「なによー。肝っ玉のちいさい男ね。そんなんじゃ咲にもフられるわよ」
その言われようはないだろう……
「なら、サブカル研への勧誘なんて、まどろっこしい事はやめて、お前の事をどう思っているか? 五十家に聞いてやろうか?」
「そ……それはやめて! まだ、私の事をどう見ているかわかんないし……」
それ、見たことか……鳥だって、結局はそういきなり告るのは、嫌なんだろう。
「とにかく、俺は五十家でお前は咲さんだな」
そう言い、俺は鳥と別れて教室に戻った。




