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姉から聞く

「普通、そんな事までしないって……相手の男の子、勘違いしちゃうんじゃないの?」

 家に帰ると、自分が買ってきた本や、お弁当箱を見た姉に、しつこく状況を聞かれた。

 ある男の子にお詫びのつもりでお弁当をあげる事にしたという、必要最小限の事だけを教えたら、この言葉を言われた。

 ソファーに寝転び、携帯をいじりながらそんな事を言われても、ウザいだけだ。そのまま、さっさと寝てしまえばいい。

 私は、黙って弁当箱を開いた。プラスチックの臭いがする。一度洗っておいたほうがいいかもしれない。

 私は水道の蛇口をひねる。洗剤を使ってお弁当箱を洗い始めた。

「ほら……聞きなさいよ。そんな事をすると、相手の子が勘違いするって言ってるでしょう?」

「勘違いしたら何?」

 私は、姉の言葉を面倒に思いながらもそう返事をした。

 姉はいつも、このようにしつこく聞いてくるのだ。

 別に、姉に意見を求めているワケでもない。私が全部勝手にやるだけのことである。

「あんたは、好きでもない男の子に『自分に気があるかも』なんて、考えられたら迷惑だとは思わないの?」

「迷惑だと思うけど?」

 そりゃあ、迷惑ではある。だが、そんな事は今に始まった事ではない。いままで、何人もの男子に告白をされているし、それを全部断ってきている。一人二人そんな相手が増えても、別に大した事ではないというのが私の考えだ。

「ならやめておいた方がいいって」

「そんなの、今に始まったことじゃない。いままで、何度も似たようなことがあった」

 男の子に告白をされるなんて事、私にとっては初めての事じゃないし、いつものやり方で対応が可能だ。

「あんた、そのうち男に興味がないんじゃないか? とか噂されるんじゃない? それで、可愛い後輩の女の子に告白をされることになったりしないといいけどねー」

「その話は、飛躍しすぎ」

 女の子から『お姉さま』だとか呼ばれて女の子に好かれるなんて、マンガの中だけの話だ。現実に起こるはずがない。

「あー……フラグが立っちゃったー」

 姉は、相変わらすイラつく事を言ってくれるものだ。

 私が今ここで、同性愛を否定したから、本当にそれが私の身に降りかかるとか、姉はそういう事を言いたいのだ。

 そんなワケない。あんなものは、マンガの世界だけの事。

 私はエプロンを付ける。

 いつものように料理を開始すると、姉が声をかけてきた。

「私、今日はフランス料理フルコースが食べたいー」

 また無茶な注文をしてくる。それに、これは明日のお弁当のための下ごしらえをしているところだ。コロッケに衣を付ける段階まで作っておく。明日の朝起きて油で揚げればいいだけの状態にしておくのだ。

 三人分の料理を作るとなると、一口ハンバーグと作るのにも、一人分の量が必要になる。

「姉なんていない方がいい。できる事なら、鳥の誕生日プレゼントにして、くれてやりたいくらい」

 姉はまた言ってくる。

「あー……またお姉ちゃんに向けてヒドい事を言ったなぁ!」

 シクシク……と、いった感じに嘘泣きをはじめる姉に、私はさらにイライラした。

 決定……姉のお弁当のコロッケをひと切れ減らしてやろう。

 大学生をしている姉は、よく家にいる。大学のシステムがどうなっているのか知らないが、卒業に必要な単位は十分取っているとの事で、家でのんびりしている時間が多いのだ。

 鳥は、家族との時間がなく、兄弟もいない。

 姉がいる私が羨ましいとか言っていた事もあるが、私にはそれが全く理解できない。

「こらー! こっち向け! おねえちゃんに謝れー」

 そう言い、私の背中にぬいぐるみを投げつけてきた。

 コロッケひと切れじゃ甘いな……おかずを全部半分に減らしてやる。

 私は姉の事を無視してウインナーに切れ込みを入れていく。これを焼けばタコさんの形になるのだというが、本当にそうなるのだろうか?

 出来上がったものは全部冷蔵庫の中に入れておく。あとひと手間で料理になるという所で調理を止めておくのがミソである。

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