ハーレム王
いいタイミングで現れた坂上。
写真を撮られた事を、なんとも思っていない感じの五十家。もしかして、二人で打ち合わせでもしていたのか?
「なあ、五十家。坂上と最近仲がいいのか?」
それとなく五十家に聞いてみると、五十家はまた爽やかな笑顔で答えた。
「そうさ、彼女は僕のかわいい子猫ちゃんの一人目だからね」
『かわいい子猫ちゃん?』その言葉にどういう意味があるのだろうか? 『絶対に聞きたくない』と、思ったが、俺の視界の先。五十家の後ろに、鳥がいるのが見えた。
その鳥は『早く聞け』といった感じのジェスチャーをしてくる。聞くしかないようだ。
「かわいい子猫ちゃんって何?」
心の底から、俺はそう思っていた。だけど聞くのは嫌だった。聞くと、やるせなくなるような変な返答が帰ってくるのが想像に難くなかったのだ。
「僕のハーレムの一員って事さ」
ハーレム……? 俺がチラリと鳥の方を向くと、鳥はあぜんとした顔をしていた。そして『もっと聞け』といった感じのジェスチャーをしてくる。
ハーレムとは何か? それくらいの事は、俺でも知っている。
いきなり、ハーレムだのなんだと言い出す奴を前にして、一体何を聞けっていうんだ……?
俺があぜんとしていると、五十家はいきなり拳を振り上げた。
「ハーレム王に、俺はなる!」
力強く、大きな声で言う五十家。
俺は、反射的に五十家の事を殴った。
「思わず殴っちまった!」
俺は、自分が握った拳を見つめながら言う。
とてつもなくアホな事を言ってくる五十家。俺が殴ったというのに、五十家は平然とした顔をしていた。
「君には、僕の大きな野望を教えておいてあげよう」
「聞きたくねぇよ! なんて嫌なルフィだお前!」
俺の言葉なんて、全く意に介さない五十家は、自分の野望を語りだした。
「僕は、生まれついて持っている甘いマスクで、女の子達をたぶらかしてやるって決めたんだ……」
「聞きたくねぇって言ったろう!」
ノリに乗っている五十家は、俺の言葉などまったく聞いていないようで、勝手に続きを話し続ける。
「自分で、自分の顔を、『甘いマスク』なんて言うんじゃねぇ! 顔が良くても、頭の中身が腐ってちゃ、しょうもねぇだろう!」
「どうせ目指すなら、男の夢を目指そう。王侯貴族でもなければ達成のできない夢! 男のロマンがそこにある!」
「そこにあるのは、腐った頭のイケメン一人だ! お前の事は、ついさっきまで残念なイケメンと思っていたが、お前はもう、残念のレベルじゃねぇよ!」
後で知った事だが、俺と五十家のやりとりは、教室にいた全員が聞いていたらしい。しばらくの間、俺には『ツッコミ岩っち』などという、不本意極まりないあだ名がつく事になった。




