鳥と、映画を観る
「何よ? 準備がいいわね」
鳥がそう言うのに、俺は映画を起動させた。
「上映中はお静かに」
そう言うと、鳥は俺の隣に座っておとなしくして映画を見始めた。
「楽しいよね……」
映画を見終わると、鳥は俺に向けて言い出した。今の映画の事だったら、正直あまり楽しくはなかった。
「ねえ、実は私は、今日が誕生日なの」
「誕生日に俺なんかと一緒でいいのか?」
俺が言うと、鳥はムスリと顔を歪ませた。
「別に……親と一緒にいるよりはマシかなぁ? って、ぐらい」
「親と……そんなもんなのかねぇ?」
女の子の気持ちは分からん。親と一緒にいるよりも、俺と一緒にいる方がマシってのは、どういう事なんだ?
「そういえばさっき、私の家の話はしないようにって言ったわよね」
「ご無体な話だな。家の話をしてきたのお前の方だろう?」
そういうと、鳥は顔を背けた。
「ねぇ、どうすればいいの?」
俺の方を見もせずに、鳥は言う。
「何を? どうするんだって?」
俺は鳥の言葉にそう聞き返す。意味の不明な言葉を言った鳥だが、俺にその言葉の意味を教えてくれる気は無いらしい。
「そうだ! 岩城は五十家君をやってよ!」
いきなりそう言う鳥。なんでそんな話になっていくのか? 皆目見当がつかない。
「私は、そのうち五十家君と付き合うでしょう? その時のシミュレーションとして、五十家君みたいにしてくれればいいのよ」
そのうち、五十家と付き合うとは、大きく出たものである。そして、シミュレーションのために五十家のフリをしろとは、難易度の高い要求をしてくるものである。
「ほら……こんなふうに……」
そう言うと、鳥は俺に肩を寄せてきた。
そして、俺の腕をとって自分の肩に置く。
「ねぇ……こうしてると恋人同士みたいに見えるでしょう?」
そう言って、鳥は俺の腕を首にからめ、俺の手を握った。パソコンの画面に、俺と鳥の姿が反射して映る。
いつもは見せない穏やかな顔をしている鳥を見て、思わず胸が高鳴った。
なんだこいつ……こんな顔もできるんじゃないか……
「これからどうしよう? 映画をもう一本見る? それとも……」
ニヤリと笑った鳥が、俺に見せたのは、リリカルなのはのDVDであった。そいつだけは勘弁して欲しい……
「映画だな。あと二本あっただろう?」
「それじゃあ、こっちから……」
一つの映画をながし始めた鳥。そうしたら、さっきみたいに俺の首に手を回し始める。横目で、鳥の事を見ると、さっき見た、憂いでも含んでいるような顔をして鳥を見て、俺の胸は静かに高鳴っていた。




