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幕間 2

「五十家君。いきなりそれはマズいよぉ」

 私はこの声が好きではない。普通に話をしているというだけでも、背中に嫌な感覚が走ってくる……

「咲さん……咲たんだって五十家君から顔を背けたよぉ。女の子に勧めるような作品じゃないんだって……」

 ちょっと待て、部長……なんで最初に『咲さん』って言っておいて『咲たん』って言い直した……

 私の事を『咲たん』なんて、呼んでいるのはわざとか……? 私の事をからかって遊んでいるのか……?

 私は部長の事を睨んだ。横目で私の事を見てニヤリと口元を歪める部長がいた。

 これは完全にからかわれている。怒って蹴りでもくれてやろうと思ったのだが、それでは、部長の思う壺にはまるようなものだ。私は、憮然としてマンガを読み続けた。

 私と五十家君は、部長から面白いアニメを見せられてこの部に入る決心を固めた。

 五十家君も、それと同じ事をしたいのだろう。

「その気持ちはわかるよぉ。だけど、いきなりそんなものを勧められたら、普通の人はどう思うかなぁ? 少し前まではパンピーだった君になら、よくわかるだろぅ?」

 この、部長がいう『パンピー』の意味は、一般ピープルの意味らしい。

 オタクで無い人を指して言う言葉なんだそうだ。

「だけど、部長は、布教で今のメンバーを集めたって……」

「そりゃあ、見せる作品は選んでいたからねぇ。僕だって、いきなりそんな高難度の作品を見せたりしないよ」

 会話の意味が、私にはよく分からない。アニメに高難度も低難度もあるのだろうか?

「他の誰かにも、その作品を見せたかぃ?」

「バスケ部のみんなに勧めてみた……」

 それを聞くと、流石の私も驚いて五十家君の事を見た。

 あんなものをいきなり見せられたら、絶対引くに決まってる。

「ほら、君のやった事はとんでもない事なんだってぇ。咲さん……咲たんの反応を見ても分かるだろぉ?」

 部長が、また言った。絶対にわざと言っている。もう蹴ってやろうかなぁ……とも思うが、反応をしても部長を喜ばせるだけである。私は堪えた……

「咲さん……僕のやった事ってそんなに……」

 五十家君が私に聞いてきた。そんな事を聞かないで欲しい……何て答えればいいのだろうか?

「五十家君……」

 私は、そう声を絞り出した。こうなってしまえば、言ってしまおう。

「多分、あなたは今、残念なイケメンって呼ばれてる」

「言い得て妙だねぇ。咲さんの言いたいことがわかるかぃ?」

 五十家君は、急いでDVDボックスを仕舞った。

「今日の事は忘れてくれないか……?」

 本気で恥ずかしそうにして言う五十家君は、部室から出ていった。

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