幕間
私、志士屋 咲は、毎日のようにサブカルチャー部A部に通っていた。
置いてあるマンガを最後まで読みたい衝動に駆られて、ここに来ているのだ。
同時に入ってきた五十家君も、同じのようで、放課後になると、ここに来てマンガを読んでばっかりいる。
このところ、毎日この部に顔を出しているのは、私と、五十家君と坂上さんくらいだ。
入ったばっかりの頃は、みんな部に通い詰めるのだという。
読むマンガのストックも無くなり、表紙を見て敬遠していたマンガばかりが残っていく。
それらを、もし手にとってみても、表紙の印象通りの内容で、面白くもなんともない。
それから、ここに通うことも少なくなり、幽霊部員となっていくというのが、パターンなんだという。
だが、ここには来なくなっただけで、オタクになったという事実は消えない。
それぞれのクラスで、クラス一のオタクとして、個人活動をしているらしい。
個人活動っていうのは何かと思えば、布教活動などの行動らしい。
私はそんな事しようとは思えない。五十家君だって、人に教えるような人じゃないと思う。まあ、あんまり長い付き合いでもないし、イメージで言っているだけなんだけど……
「ねえ、五十家君お菓子食べない?」
自分の持ってきたお菓子を、五十家君の前に差し出す坂上さん。
見てるだけでも、五十家君にアプローチをかけているのが分かる。坂上さんは五十家君の事が好きなのだろう。
確かに、イケメンだし、いつもの様子を見ても、友人だって多い。
彼の事を狙う子も多いだろう。
私は五十家君の事をそれくらいに思っていた。
五十家君の様子を見ていると、坂上さんが私の事を、じっ……と見てきた。
『あなたは、五十家君に手を出さないで……』とか、そういった意味のある視線に感じる。
別に、五十家君に興味があるわけでもない。私は両手を上げて答えた。多分意味は伝わるだろう。
気持ちが伝わったのか? どうかは分からないが、坂上さんは、五十家君にちょっかいを出すのを再開した。
そっちは勝手にやってくれればいい。私は、自分の読んでいるマンガを読み続けた。
鳥だって、五十家君の事をカッコイイとか言っていたな……
まあ、今は岩城君といい感じになっている。岩城君のどこがいいのか? 私には分からない。別に悪い事はないが、特に魅力を感じるわけでもない。それくらいの印象である。
まあ、鳥の趣味の事なんて、私が考えることじゃないか……
私は、五十家君の方に視線を向けないように注意しながら、マンガを読み続ける。
「そういえば、僕も布教をさせてもらっていいかい?」
そんな声が聞こえる。五十家君がオススメのマンガでも坂上さんに紹介をしているようだ。
私は五十家君の話に耳を傾けた。
新しいマンガの話だったら、私も興味がある。五十家君のオススメとはどういうマンガだろう?
「リリカルなのはって言って……」
そういう言葉と共に、五十家君はカバンの中からDVDボックスを取り出した。
あんなものをカバンの中に入れていたのか……教科書とかを入れていないのかな?
まあ、教科書を学校に置きっぱなしにするなり、友人に借りるなり、方法はいくらでもあるだろう。
そのDVDボックスの、ジャケットを見ただけで、坂上さんの顔は引きつった。
あんなものを出されると、反応に困る事だろう……
私は、その光景から目をそらした。
そしたら、ねっとりとした部長の声が聞こえてくる。




