坂上さんの目的
「あいつには絶対負けない!」
鳥は、喫茶店から出ると、そう言い出した。
俺の制服を掴み、俺の顔をグイッと近づけてきた。
「あんたの働きにかかってるんだからな。気合入れろよ!」
「俺と咲さんの事も、忘れるなよ」
俺は鳥に向けてそう返す。鳥は、「分かっているわよ」と言って鼻を鳴らした。
俺の制服を掴んでいた手を離すと、鳥は一人で帰っていった。
俺の家は、鳥とは逆方向にある。鳥と、逆方向に向けて歩いていると、声をかけられた。
「岩城君。ちょっといい?」
俺が、声のしたほうを向くと、そこには坂上がいた。
「俺に何か用か……?」
今度は何だろうか……俺が一人になるのを待って話しかけてきたという事は、今度の標的は、確実に俺だろう。
「岩城君と御射山はどういう関係かな? って思って」
「坂上さんが思っているような関係じゃない。鳥も言っていただろう」
俺がそう言うと、坂上さんは、俺の顔に、自分の顔を近づけてきた。
「別に珍しいことじゃないよー。恋の相談をしている相手の事を好きになっちゃうなんて事は、結構あるもんさ」
「少女マンガの世界ではよくある事なんだろうけどね」
俺が言うが、それでも坂上さんは笑いながら俺に言ってきた。
「大した自信だね。そんな事、絶対にありえないって思ってるんだ」
もちろんそうだ。鳥が好きなのは五十家だ。それと同じく、俺が好きなのは咲さんである。
「目的は一体何なんだ? 鳥にどんなちょっかいをかけようとしているんだ?」
「急くね……咲さんとの仲を取り持つ役を、私が代わってあげてもいい……って言ったらどうする?」
坂上さんは、そこまで聞いていたのか……
俺は考えた。
「坂上さんは咲さんとそこまで仲がいいのか?」
鳥と、咲さんは親友同士だ。咲さんに近づくのもたやすいし、彼女の事も、よく知っている。
咲さんに近づくのなら、鳥の方がいいはずだ。
「だけど、志士屋さんと御射山がそんなに仲がいいか? っていうと、最近はそうでもないんじゃないかな? 岩城君と五十家君が仲が悪いのと同じで……」
まあ、今回はいきなり拉致をされたからなぁ。
五十家が、自分が泥沼に足を突っ込むようになってしまった原因である俺を、A部に引き込んで、同じく泥に足を浸からせようとしているのと同じ心境なのだろう。
咲さんだって、鳥を引き込もうと考えている。
「目的は何なんだ? 鳥とは、五十家との仲を取り持つ事を条件にしてこの役を引き受けてる訳なんだ」
「私は特に条件を出したりしない。好きに使ってくれていいよ」
坂上さんの目的が分からない。俺は首をひねって考えた。一体彼女の目的は何なのだろうか?




