なんで、俺がこんな修羅場に付き合わないとならない……
「御射山さんって、五十家君の事が好きなんでしょう?」
笑顔で言う坂上。だが、目が笑っていない。口元だけを動かした笑いだった。
「それがあんたに関係あんの?」
お互いに、一言をいうたびに、コーヒーに一口、口を付ける。
「志士屋さんと仲がいいらしいわね」
坂上さんがそう言うと、鳥はテーブルを指でコンコンと叩いた。
「早くよ・う・け・ん」
語尾を伸ばしながら言う鳥。
そして、笑顔を固くした坂上さんが、言い出した。
「私も五十家君の事が好きなの」
坂上さんがそう言うのを聞くと、鳥はコーヒーを一口すすった。
「そう……」
坂上さんは鳥に合わせてコーヒーを一口すする。
二人のこの動作を見ると、俺は喉が渇いていく。早く終わらせてくれ……
鳥も、坂上さんも黙って睨み合った。俺が口を挟める状態ではないのは分かる。だが、俺がここに居なきゃならない理由は分からない。
まあ、今になってそんな事を言ってもしょうがない話だが……
鳥が、俺の手を握る。テーブルのしたでは、鳥は、俺の手を握っている。
理由は後で聞こう。今は、何も言わずに二人の話を聞いているしかない。
「五十家君は私が付き合うの、あんたなんかには渡さない」
「それを決めるのは五十家君でしょう? そんな勝手な妄想をしているなんてキモいね」
フン……と行った感じに鼻を鳴らした鳥。
「ここで、『五十家君には近づかないようにしな』って、言おうと思ったんだけど、あんたに言っても理解できないみたいね」
坂上さんは、そう言った後にコーヒーのカップを傾けて、コーヒーを飲み干した。
「分かった。要件はそれだけ」
そうして、自分の分のレシートを持って喫茶店から出ていった。
鳥は、坂上さんの背中を睨みつけていた。坂上さんは、俺達の前から姿を消す前に俺達の方を振り向いた。
「あと、一つ教えてあげる」
坂上は、鳥の事を見下ろして睨みながら言った。
「言いたきゃいえば?」
鳥は、まるで坂上さんの言葉には興味がないといった感じに髪をいじりながらそう答える。
「五十家君は、あなたみたいなタイプは苦手だって言ってたよ。ご愁傷様」
鳥が、髪をいじる手を止めた。鳥は、動揺をしたらしい。
それを目ざとく見つけた坂上さんは、ふん……と、鼻を鳴らしてから喫茶店を出ていった。
鳥は、坂上さんの姿が見えなくなると、俺の手を握っていた手を離した。
「勘違いしないでよね」
鳥の口調を聞くに、さっきの修羅場のトゲがまだ残っている。余計な事を言わないように気を付けよう。
「ああ……お前が好きなのは、五十家だ」
こんなくらいで大丈夫だろう。俺が言うと、鳥は机に突っ伏した。
「おい……いきなりどうした?」
顔をテーブルに押し付けている鳥は、完全に俺の事を無視していた。
「おまえ……顔を上げろ」
俺は、鳥の頭を掴んで引き起こした。
鳥の顔を見てみると、なぜか泣いていた。
「見るんじゃない……」
そう言い、鳥はまたテーブルに顔を押し付けた。




