坂上さんが……
俺は、学校の帰宅時間になるまで部室でマンガを読んでいた。
だが、帰宅時間になった後まで、学校に居続けるわけにもいかないので、俺は周りを警戒しながら学校を出た。
また、A部の奴に捕まったりしないだろうか? 俺の隣を歩いている鳥は、俺の様子を見てため息を吐いた。
「聞くところによると、A部はあんたの事を勧誘するのは諦めたみたいよ」
「そんな話、信用できるか……」
「咲から、携帯に連絡がかかってきたの。確かな筋よ」
そうか、それなら信頼できるな。A部に入っている人からの情報ならいいだろう。
「咲からの情報だったら、無条件で信用するのかよ」
ふん……と、軽く息を吐いた後、鳥は前をじっ……と見つめた。
俺が前を向くと、坂上がいた。明らかに、人を待っていたという感じで、腕を組んで電柱に背中を預けていた。
「まだ何かあるのか……?」
俺が坂上に向けて言う。
「岩城君じゃないよ」
坂上はそう言った後、鳥の方を向いた。鳥に向けて刺すような目線を向けた。
「話しがある。ちょっとどこかで、話をしよう」
お互いに視線をぶつける。
鳥はその最中に、俺の手を握った。『逃がさないよ』といった事だろうか?
「御射山さん。もしかして、岩城君とデキてるの? オタク同士、いいカップリングじゃない?」
「岩城は、私の子分みたいなもんよ」
おい……勝手に何を言っている……
それから、俺たちは近くの喫茶店に入っていくことになった。
険悪な雰囲気のテーブル。お互いに睨み合う女子二人と、なんで同伴をしているのか分からない俺。
鳥も坂上さんも何も言わないが、隣に座っているだけでも分かる。これは修羅場だ。何が原因の修羅場なのかは分からないが……
水が出され、注文をしたコーヒーが出されて、俺がコーヒーに口をつける。
それだけの時間が経っているのにもかかわらず、二人は何も言い出さなかった。
緊迫をした空気が俺の皮膚を刺すような感じがする。耐えるのが辛い感覚だ。
「何か言ってくれ。坂上は、何のために鳥を呼び出したんだ?」
俺がそう言うと、坂上はニヤリと口元を歪め、コーヒーに、一口、口をつけてから言い出した。
「『鳥』だって……名前で呼ぶなんて、二人ともいい仲じゃん。本当に二人は付き合ってないっていうの? すっごく仲がよさそうに見えるけど?」
「こいつは、私の子分だって言ったでしょう?」
そう返す鳥。そして、鳥は俺のことをひと睨みする。その目が『余計なことを言うな』と語っていた。
「今回はコーヒー代は出さないよ」
そう言い、鳥は一口コーヒーをすする。坂上は、ニヤリと笑いながら言う。
「どうやって手に入れたお金か、分からないもんね。そんな不気味な金でコーヒーなんか飲みたくないな」
坂上の笑いは、明らかに鳥を挑発しようとした笑いだ。相手の神経を逆撫でするために、いやらしく笑ってみせるタイプの笑いだ。
いい加減に本題に入ってくれないかなぁ。この場にいるだけでも精神をガリガリと削られるこの感覚。早く終わらせてほしい……




