最強オタクの称号
なんか、俺はさっきの件で、最強オタクの称号をもらったらしい。
「すごい演説だったそうだな! 君にオタクの神でも降臨したのかと思ったらしいぞ」
「だから言ってるでしょう。こういう普段からストレスを溜めまくっているような奴は、キレたらすごいのよ。それだけだって……」
B部の部室に帰ってきた俺は、部長と鳥の二人から、そう言われた。
鳥は、すでにマンガを片手に持っているし。部長は、パソコンの前に座っていた。
「普段からストレスをためてるって……」
そんな事はないと思う。そんな誹謗中傷は鳥の勝手な言い草である。
「ほら、今みたいに。顔がちょっと引きつってるのよ。何か言いたいことがあるって感じだけど、何も言わないのよね。あんたは」
「鳥君の言うとおりのようだな。今の顔を写真に撮って見せようか?」
俺はいま顔を引きつらせているらしい。部長は横に置いてあるカメラを持った。
「いいです……」
俺がそう答えるのをわかっていたかのようにして、部長はカメラをテーブルの上に置いた。
「君らはA部から五十家君を引き抜こうとしていたが、A部はA部で岩城君を引き込む算段をしていたようだな」
「私は?」
鳥が言う。
「私だったら、五十家君がいるならA部に入ってもいいんだけど?」
俺も、そうしてもらうのが一番であると思う。だが、多分A部は鳥の事を誘ったりはしない。
「ほら……その顔よ。私に何か言いたいことでもあるわけ?」
また俺は顔を引きつらせていたらしい。言いたいことがあるにはあるのだ。言ってしまおう。
「多分、A部の奴らは、おまえの事は狙わないぞ」
俺の事を睨み出す鳥。何か言われる前に続きを言い出す。
「お前みたいなギャル系は、オタクにとって天敵みたいなもんだ……」
「ふむ……なるほど……」俺が言った事を理解した部長は、うんうん……と頷いた。
「どうせ、アニメの話なんかしても、馬鹿にされるんじゃないか? って、思うんだよ。何度か馬鹿にされた経験だってある」
「そんな……馬鹿になんてしないのに……」
鳥は言う。本人にはその気はなくても、そういう印象を与えるのだ。
ここはA部の部室だ。つい、今しがた失敗した、岩城 佑吾の勧誘作戦の反省会をしているところだった。
最初に口火を切ったのは部長であった
「岩城君がぁ、あそこまでここを嫌っていたとはなぁ……」
「清々しいくらいだったよね」
坂上が言う。
彼女は、前まで陸上部に所属していたが。何のスポーツ部にも入っていないクラスメイトに五十メートル走のタイムで負けて以来、自信をなくし、この部に入り浸るようになったのだという。
「あそこまで言われちゃ、拍手しかできないじゃないか……」
五十家が言う。
一番、岩城を引き入れたいと思っているはずの五十家でも、あの演説を聞いたら気が変わってしまったのだ。
それほど、岩城の演説は効いた。
「だけど、成果なしで終わらせるのも癪」
咲が言う。部長を含め、A部の面々は咲の言葉に頷いた。
「だから、次は鳥を狙ってみるのはどう?」
咲が言う。咲にとっては鳥の方が憎むべき相手である。五十家が岩城を引き込もうとしたのと同じく、咲だって、鳥の事を引き入れたいと思っているのだ。
だが、仲間からの反応は冷たかった。
「彼女かぁ……」
最初に言ったのは部長であった。
「あの子を入れても大丈夫なの?」
坂上も言い出す。
「鳥は、元々マンガが好きだった。私は鳥の影響でオタクになった」
咲が言うが、ほかの面々の様子は、『どうも、乗り気ではない』と行った感じだ。
「ギャル系の子は僕の趣味じゃないな……」
ストレートに本音を言う部長。『別に、部長の趣味を聞いているわけじゃない』と思った咲。五十家の方を見ると、やはり難色を示した顔をしていた。
「あの子はこっちに呼ばなくてもいいんじゃないかなぁ。僕も、ああいうタイプは苦手で……」
『だから、趣味を聞いているわけじゃない』と咲は思う。
「志士屋さんの友達なんでしょう? 自分で話してみたらいいんじゃない?」
坂上も似たような答えだ。
五十家の場合は、岩城とはそんなに仲のいい間柄ではないというので、勧誘をするのにはこの手を使ったのだ。
結論、御射山 鳥を部に入れるのは反対の票数が多かった。




