五十家を取り戻せ
放課後になり、俺と鳥は、二人で話し合ってこれからの作戦を話し始めた。
「いい? 五十家君にそれとなく聞くのよ」
鳥からの指示を受ける俺。俺と鳥は、仕切り直しをしてまた二人をB部に誘う事になった。
まずは俺の番だ。五十家に昨日の事を聞いてみる。メンバー写真を作るためにコスプレをやっていたのならば、五十家の意思でコスプレをやっていたわけではないのが分かる。
鳥にとって重要なのは、五十家が自分の趣味でコスプレをやっていたかどうか? である。
五十家が好きでコスプレをやっていたのだとしたら、自分も挑戦するくらいのつもりでいる。長い付き合いではないが、鳥はそういう奴だというのは、俺にも分かる。
五十家の周りの、友人の輪が引いたのを確認して、五十家に話しかけに行った。背後を振り返ると、じー……っと、俺の事を見張っている鳥の姿が見える。
『分かってるよ。上手くやってくる』
そういう意味を込めて頷き返すと、俺は五十家のところに向かっていった。
「五十家。昨日の事でききたいことがあるんだけど……」
俺がそこまで聞くと、五十家は俺の方を見た。そして、目をキラーンと輝かせたかと思うと、五十家は立ち上がり、大声でしゃべった。
「確保!」
五十家の言葉が合図になり、咲さんと五十家が俺に組み付いた。
そして、教室の外から入ってきた面々も、俺に組み付いてくる。その面々の顔には見覚えがある。
彼らはA部の部員たちである。
「お前ら! どういうつもりだ!」
咲さんと五十家を含む数人に抱えられた俺は、教室の外に連れ去られてしまったのだ。
「何これ……?」
俺が連れ去られていく所を見た鳥は、しばらくボーゼンとした顔をして、教室に残った。
「岩城君。君と顔を合わせるのは久しぶりになるねぇ」
俺が連れてこられたのは、A部の部室であった。A部の部長が、俺の事を見下ろしながら、言う。
「五十家君を誘ったのは君なんだってねぇ。五十家君は怒ってるよぉ。一人だけパンピーのままでいるなんてねぇ」
部長のねっとりした声は、久々に聞いた。A部に所属をしていた時は、部長の声をきくだけでイライラしていたものだ。
今回も、部長の独特な話し方を聞いて、嫌悪感を感じているのだが、それよりも、言葉の意味が気になった。
「五十家が怒ってる?」
どうしてだ? 俺は怒られるような事をしたか?
「部長……ぼくは怒っているわけじゃないです」
五十家が部長に向けて言うのを見た俺。
俺は、五十家が次に言う言葉を待った。
「今の僕は、君に誘ってもらってこの部に入ったようなもんだろう?」
五十家は言う。『入ったようなもん』っていう微妙な言い方が逆に怖いな……
だが、五十家がA部に入ったのは、半分以上は、俺のせいではない。ここで断言をさせてもらう。
「今日も、カバンの中に入れてあるDVDボックスの事が、ほかの人にバレないか? どうか? って考えると、気が気じゃなかったんだから」
「なんで、学校にそんなもんを持ってきてるんだよ……」
「布教だよ。ぼくの昔から好きだったアニメを、みんなに見てもらおうと思って持ってきたんだ」
『昔から好きだった』という五十家。つまり、俺が声をかける前から、五十家はアニメ好きだったという事か。
五十家……こいつ、隠れオタだったんかい……DVDボックスまで買っているなんて、相当なもんだな……
A部の面々に睨まれながら話しを聞く俺。
「僕をこの世界に引き込んでおいて、自分だけ外にいるなんてひどいと思わないか?」
「最初っから片足を突っ込んでいた状態だったんだろう? こうなるのは必然だったんだって……」




