戻れなくなってしまった二人
「二人とも、すでに戻れないところに行っていた……」
B部の部室に戻ってきた俺は、A部で見たことを、B部の部長に向けてぼやいた。
「私なんかダッシュで逃げてきたのよ! 五十家君があんな事をするなんて、信じらんない!」
鳥なんかは涙目になって言っている。
「泥沼に足突っ込むの早っ!」
部長もその話を聞いて、驚いてそう言った。
「部に入って、一日目ですでにコスプレ撮影を始めるほどにハマるとは……」
部長はその言葉の先は言わなかった。おそらくこう言おうとしていたのだろう。
『そんな逸材を逃したのはおおきいな……』
いまだに涙目になっている鳥を見て、言葉の続きを言うのをやめておいたのだと思う。
「あの二人の事はどうする気だい?」
部長は、鳥と俺に向けて聞いた。
咲さんの事は好きだし、自分自身もオタクなんだし、コスプレ撮影をやってたくらいのことで相手を咎めるような事はしない。
「まあ、コスプレくらいで、五十家君の事を嫌いになるワケじゃないし……」
鳥も言う。俺達の考えている事は、大体同じようなものらしい。
「いっその事、A部に入ってしまうというのも、選択肢としてはアリだと思うぞ。こっちは部員は足りているし、鳥君だって入ったばかりのB部に義理立てする事もないだろう?」
「そりゃあ……そうだけど……」
鳥がそう言う。
「俺は、ああいうのは受け付けないな……」
だが俺はA部に入るのは嫌だった……
「まあ、岩城君は、一度A部に入ってから、逃げてこっちにやってきた経緯があるからね」
部長の言うとおり、俺は始めはA部に入っていた。
だが、コスプレ撮影や、アキバで買い物なんかをやってばかりのA部の活動内容についていけず、B部に鞍替えをしたのだ。
「何よ? あんた裏切る気?」
鳥が、じっ……とした目で俺の方を見た。
『裏切る』とは少々大げさではないだろうか……俺達は、一つ約束を交わしただけである。
その約束は、二人とも失敗に終わっているし、鳥とのこれ以上の縁はないはずだ。
「そういえば、新入部員はコスプレで撮影をするという決まりがあってな……」
お茶を濁そうとして俺は言った。
「五十家も咲さんも、その決まりに従っただけで、好きでコスプレをやったわけじゃないんじゃないかなぁ……」
俺のことを相変わらずじっ……と、見つめながらであるが、鳥は言ってきた。
「それ、本当?」
俺は元、A部の部員だ。多少の事ならA部の事だって分かっている。
「後で、直接二人から詳しいことを聞いたほうがいいんじゃないか?」
部長がここにきて、ナイスな案を出してくれた。これならば、今日は切り抜ける事ができるだろう。
「じゃあ、岩城は五十家君から聞いて。私は咲から聞いてくるから」
最後まで俺の事を睨んできた鳥は、マンガの続きを読み始めた。




