コスプレを見られて
五十家は自分が着替えてから、ずっと咲がカーテンから出てくるのを待っていた。
椅子に座り、じーっとカーテンを見つめている。着替えを始めてから二、三分経ったが、咲がカーテンから出てくる事はなかった。
『もしかして……』
そう思った五十家は、カーテンに向かって声をかけた。
「ぼくの方は着替え終わったよ」
五十家がそう言うと、カーテンが動き、隙間から咲がこちらの事を覗いてきた。
『この子って、実は可愛いんだな……』
クールで冷たい印象を周りに与えている咲であるが、実は臆病者である。
着替えが終わっても、まったくカーテンから出てこなかったのは、五十家に声をかけるのが怖かったからだ。
カーテンの裏から、『この先に危険がないか?』を、確かめるためにこちらを覗いている小動物のような行動に、微笑ましいのを感じる五十家だった。
「なんで、もっと早く言わないの?」
そう、冷たい目をして五十家の事見つめながら言う咲。
さっきの事で、その咲の行動は虚勢をはっているだけだというのが分かった五十家は、ニコリと笑いながらその様子を見つめていた。
「さぁ……写真を撮るよぉ」
部長が言い、五十家は直立不動の姿で、部長のカメラの前に立った。
「ポーズとかをとってもらっていいかなぁ? その方が映えるもんでねぇ」
五十家は、巨大な剣を肩に担ぐポーズをとった。
「そうそう。いい感じだねぇ」
パシャリと写真を撮った部長。次は咲に声をかけた。
「咲たんも撮るよぉ。準備してぇ」
小さく唇を噛んだ咲は、部長の前まで歩いていった。
「『咲たん』って呼ばないで……」
絞り出すようにして言った咲。
『なんか……すごく怒ってるんじゃない?』
五十家は咲の事を見て思った。
「だいじょぶかい……?」
咲に向けて言う五十家。
「えぇ? 何ぃ? 咲たんどうかしたのぉ?」
五十家の言葉の意味を理解していない部長が聞いてくる。
「なんか……背中がゾワゾワする……」
フルフルと体を震わせた咲であるが、それでも、部長に剣の切っ先を向けるポーズをとった。
「おおぉ。いいねぇ咲たん。今日のベストショットだよぉ」
そうして写真を撮られる咲。写真が撮られると同時に、部室のドアが開いた。
「すみませーん、五十家と志士屋さんはいますかー?」
「咲ぃーちょっと話があるのー」
そう言いながら入ってきた二人は、五十家と咲の姿を見て、ぎょっとして目を丸くした。
「お邪魔だった……?」
部室の中に突然入ってきた二人。そのうちの一人の佑吾は、ギョッとして目を丸くする。
鳥の方は、五十家の格好を見て、走って逃げ出してしまった。
「……ごゆっくり……」
部室からダッシュで離れた鳥を追うようにして佑吾も扉を閉めて、部室の前から姿を消していった。
「違うんだって……」
五十家が部室のドアに向けて言ったが、その声は、当然、佑吾と鳥には聞こえていなかった。




