二人のサブカルチャー部入り
「鳥は、B部にいた……」
「あの髪を染めた娘かい……」
志士屋 咲と五十家 渉は、A部の部室に帰る道すがら、気付いた。
『自分が誘われたのは、B部の方だったのか……』
事の顛末に今になって気づいた二人は、お互いに目を見合わせた。
二人が出会ったのは、サブカルチャー部A部の部室の前であった。
冷たくて、クールな見た目から、よく気が強いんじゃないか? と、思われる志士屋 咲だが、本当は臆病なところがあり、こういう始めて行く場所には入っていく事ができなかった。
新しくできたお店とかに入っていけないような娘なのだ。
部屋の前に立ち尽くしている咲を見つけた五十家が咲に話しかけた。
「その部室に、何か用なの?」
そう言うと、咲は体をビクッとさせて五十家の方を見た。
「ごめん。驚かすつもりはなかったんだ」
先ほどの咲は、まるで臆病な小動物がするように弱々しく驚いていたのだ。だが、そこから、すぐに気分を持ち直し、髪をサラッとかきあげた後に、五十家に向けて言った。
「私は驚いてなんかいない。気にしすぎ」
「だけど……さっき、思いっきり驚いていたよね。まるで、リスか何かのように」
「そんな事はない。こんな事で驚いたりなんかしない」
強情に言う咲を見て、それ以上の追求を諦めた五十家は、話を元に戻した。
「志士屋さん。君もこの部室に用があるの?」
「君も? 五十家こそ、ここに用がある?」
二人は、お互いを意識しあった。
周囲の評価もある程度高い二人であるからこそ、それなりにプライドが高い。
オタクの集まりの部に、入ろうとしているなんて事は、できれば人に知られたくなかったのだ。
二人は、相手の言葉を待った。
二人にしか感じることのできない戦慄が走る学校の廊下。
「俺の友人から、ここに入らないかって誘われていてね」
先にその張り詰めた空気を破ったのは、五十家の方からであった。
「まあ、誘われたんだし断っちゃうのも悪いと思ってね。義理で……飽くまでも義理で、ちょっとこの部室に寄ってみたんだよね」
本当は、サブカルチャー部に興味なんてない。それを強調して言った五十家は、咲の事をチラリと見た。
咲は、髪をかきあげながら答える。
「私も友人に誘われて仕方なくね……ちょっと見て帰るだけのつもりだから、ここに長居はしない」
お互いに笑顔を向け合いながら言った。
サブカルチャー部の前で、五十家と咲は、お互いに気まずい空気を発しながら立っていた。




