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第一章 始まり ―3―

 『姫』、それは学院の象徴。


 『姫』、それは全生徒の憧れ。


 『姫』、それは生徒会に入会するまたとないチャンス。


 そう、この学院には『姫』なる人物が置かれるのだ。




「もう決まったことなんだから覆すことは出来ないよ。なんせ『生徒会の決定』なんだから」


「いくら生徒会とはいえ、生徒の意志を無視しての行動は納得出来ないわね」


 百合は椅子に座り直した。気づいたら前のめりになっていたからだ。


 薄々は感づいていた。優太の発言や気遣い、そして今日ここに連れて来られた時から。


 しかし、百合にはわからないことが1つあった。『なぜ私なのか』ということだ。


 この学院には百合よりも裕福な家の生徒など沢山いる。現に、クラス分けの時点でそうなっているのだ。


 A組は、成績と家の財産の両方が優れている生徒。B組は成績はそれほどではないが家の財産が多い生徒。そしてC組は成績は優秀だが、家の財産が他と比べ劣っている生徒。


 つまり、この学院は成績よりも財産を重視しているのだ。実際に百合は成績は良いが、家の財産が劣っている為にA組入りは出来なかった。


 それを考えれば、C組の百合を選ぶよりA組やB組の生徒を選んだ方が生徒会にとっては良いだろ。寄付金等の工面も出来るからだ。


「……君は頭が良いから教えておくよ。生徒会の権限は絶対だ。それに、姫になればそれ相応の利点はある。何よりも、君は何かをしなければならないわけではない。寧ろ『象徴』としてそこにいれば良いんだ」


 沢山のご託を並べてはいるが、要するに『決定事項』でしかないようだ。


 扉をノックする音がした。英が開けに行けば、優太がトレイを持っている。


 先ほどの紅茶が入ったのだろう。手伝おうと立ち上がれば、それを義之が片手で制した。


「なに?」


「姫はそんなことをしなくて良いんだよ」


「……私は姫になった覚えはないわ」


 そう言うと百合は優太からトレイを受け取る。そして、各人の前にティーカップを置いた。入れたての香りが部屋いっぱいに広がる。


 ゆったりした気分に浸りたい所だったが、壁際に置かれた大きな時計を見れば時刻は8時35分を指していた。


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