序章 ―2―
Side:優太
『やっぱり1番か』
そう心の中で呟いた。副会長の矢倉英辺りは来ているかと思ったが、さすがに8時前に登校はしていないらしい。
優太は館に入るなり自室へ行き、今日の授業を確認した。そして、鞄の中に教科書やノートを入れる。
「こういうことに使えるから、ここは便利なんだけどな……」
改めて部屋を見回した。机にベッド、それに本棚。一見自室に見えるが、ここはれっきとした学院内にある施設なのだ。
優太は時々、自分がこんな所に居て良いのかと思う時がある。特別に勉強が出来るわけではないし、顔が良いわけでもない。
「はぁ、こんなこと考えてても仕方がないよな」
優太はドアを開け、大広間へ向かう。そこには10人程度座れる長テーブルとイスがある。
その先を見れば、誰かが座っていた。調度逆光になってしまい顔が判別出来ない。
「やぁ、おはよう優太」
「お、おはようございます、葉山会長」
柔らかい中にも凛とした声で背筋がピンと伸びる。目の前にいる人こそ、この聖泉学院の全てを握る会長……葉山義之だ。
「悪い、遅れたか?」
優太の後ろのドアから現れたのは副会長の矢倉英。義之とは違い、いかにもな体育会系な背格好だ。
「いや、大丈夫だよ。じゃあ、会議を始めようか」
義之の言葉に、2人は席に着く。しかし、何かが足りないことに気づいた。
「あの、会長。要先輩は?」
優太の疑問に義之は『あぁ』と短く答え、自分の鞄の中から携帯電話を出した。
「『みんなへ。僕は朝からなんて起きられないから、会議の決定を受け入れるから。それで宜しく』らしいよ」
「全く、あいつはいつもこうだ。義之、もうそろそろあいつの所遇を考えるべきじゃないか?」
義之がメールを読み終わると、英が呆れた口調で言う。確かに、朝からこんなメールを朗読されたら気分がしょげる。
「まぁ、要は要で色々やってくれてるからね」
義之の一言で英は黙ってしまう。英を黙らせることが出来るのは義之だけではないかと優太は常々思っていた。
『さて』と前置きをし、義之は話始めた。
「じゃあ、各々が考えた結果を教えて……我々の姫となる人物を」