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7 旧資料室イベント。

  本文前小話劇場

 NGシーン ~歪な少年。より~

忌「……あのさ、俺の顔なんかついてる?さっきからすげぇ見てるけど。穴開ける気か?」

魔「んー。……それも面白そうだねぇ」

忌「マジか!?」

魔「てな訳でカモン!」

サブ「イエス・マム!!」(ボウガンの引き金を引く

忌「へ?……ぎゃあ!?」(直ぐ脇をボルトが通過

魔「おっしぃなぁ……もっちょいだったのに」(ちっ

忌「マジで穴開ける気?今のマジだったよな!?」

ス「すみませーん。やるのならちゃんと狙ってくださーい」

忌「俺の味方ゼロ!?」

「何であそこの資料室に置いてあるのよ……。ちゃんと移し換えてないの?」

 基本誰もが近寄りたいと思わないⅩⅢ教室に向かって進む女子生徒が一人。茶色い髪を頭の左上でまとめており、女子としてはそれとなく高い身長だった。

 ⅩⅢ教室を通り抜け、今は使用されていないはずの資料室の扉を開けた。

「うわ……。埃っぽい」

 顔をしかめ、左袖で口元を覆う。掃除されていない資料室は埃っぽく、どこかカビた臭いもする。

 普通ならばこのようなところに好き好んで入ろうとはしない。女子生徒はここに来た原因とも言える教師の顔を思い起こしながらため息をついた。


『あ、疾風(ハヤテ)。悪いけど旧資料室から取ってきて欲しい資料があるんだが。……いやぁ、移し換え忘れというか、あまり重要じゃないから移されなかったんだよ。でもそういうのってたまに必要になる時とかあるだろ? だからあそこの資料室自体にその資料も未だにそのままなんだ。……という訳で頼んでもいいか? 次の授業で使うんだ。あぁ、ⅩⅢクラスは無視していったほうがいいぞ? 面倒ごとに巻き込まれたくないだろ?』


 頼まれたら断れない自身の性格を少し憎く思いながらも疾風は頼まれた資料を探し始める。昔からそんな性格だった彼女は周りから『面倒見のいい奴』と見られ、結構慕われている。が、そんな彼女を幼い頃から見ている幼馴染は『そんな性格』とズパッと切って捨ててきた。

 彼女自身それはわかっているが、これは完全に性分だ。今さら治りそうにも無いので治すのは諦めた。とはいえ、もう少し断ることもしようかな? 位のことは考えている。

「……っと、あったあった」

 探し物は一応見つかった。……が、ちょっと高い位置にその資料は収められていた。

 少し背の高い自分が背伸びしてぎりぎり届くかどうかの高さ。少し周りを見渡すが、調度良く踏み台になりそうなものは無かった。

 仕方なく疾風は目の前の棚に左手をかけ、精一杯背伸びをし、右手を伸ばす。

 つま先がプルプル震えるが、心なしさらに伸びる。

 右手の指先が目的の資料に触れ、捕らえ、そのまま引き抜いた。

 目的の資料に巻き込まれる形で両隣の資料も引きずり出され、そのまま真下……疾風の真上に落ちかけた。

「げ」

 多少薄い資料でも、高いところから降ってくれば痛いし、もし角が当たったらより痛い。疾風はすぐに来るであろう衝撃に備え目をつぶった。

 が、いくら待てとその衝撃が来ない。

 訝しげに目を開けると降ってくる資料は無く、代わりに自分の左隣から伸びている誰かの右腕が見えた。その腕が落ちかけた資料を止めてくれたようだった。

 何故自分以外にここに人がいるのかとも思ったが、助けてもらったのは事実で、疾風は礼を言おうと左隣に立つ人物に向かって体を向けた。

「助かった! ありが、と」

 う。という言葉は口の中で消えてしまった。

「……平気か?」

 疾風を気遣って声をかけてきたのはある意味誰もが知っている有名人物だが、誰もが関わりを持とうとしない人物だった。

「へ、いき」

 ぶんぶんと首を縦に振る疾風の様子をみて、目の前にいる白髪の少年は苦笑した。

「ここの扉が少し開いてて気になったんだ。それでちょっと覘いてみたらアンタの上に本が落ちてきそうだったからつい。……迷惑だったか?」

「そんなわけない!! 助かった。ありがとう」

 今度こそはっきりと礼を言った疾風は【忌み子】に向け勢い良く頭も下げた。

「ちょ。何やってんだよ!?」

「勢い余って……?」

「どんな勢いだよ」

 ははっと笑った【忌み子】の顔を疾風はどこか心ここにあらずとばかりに見た。


 ……【忌み子】も笑うのか。というか、なんか笑い方可愛くないかこいつ?


 想像していた【忌み子】と違っており、疾風は戸惑った。

 疾風はどこか【忌み子】というのは無表情で、冷徹で、ともかくこういう風には笑わないものだと一方的に想像していた。

「ちょっと奥に行けば踏み台あるから、またここ来る時があったら使えよ。まあ、それでも届かないところにあるのなら背の高い奴引っ張ってくるしかないかもしんないけどな」

 旧資料室の奥に目を向けて【忌み子】は言った。疾風はその視線を追わず、自身より頭一つ分は上にある顔をぼけっと見ていた。

「どうした?」

「……はっ! なんでもない」

「……最近やけに顔ガン見されるな……?」

 首を傾げながら【忌み子】は身を翻し、資料室の出入り口に向かって歩く。疾風も頼まれた資料は今手にある一冊だけなので【忌み子】の後を追って歩き出した。

 出入り口で【忌み子】が止まり、扉から身を脇にずらして疾風に道を譲る。

「先に出て行けよ。俺は後で出るから」

「なんで」

「もし誰かに見られたら、アンタが困るだろ?」

 【忌み子】と一緒にいるところ見られて、変な噂流れたらたまらないだろ? と【忌み子】が言ってきたが、直ぐには疾風は動かなかった。

「? どうした?」

「いや、大丈夫だ。……なあ」

「ん?」

「さっきは本当にありがとう。助かった」

 【忌み子】の漆黒の目を見ながら疾風は微笑みながら再び礼をいい、旧資料室を出て行った。

 疾風はついさっき【忌み子】が言った言葉を何故か全力で否定したいと思った自分に驚いていた。


 少なくとも、アイツは噂のような奴じゃなかった。


 なんとなく周りが知らない【忌み子】を自分は知っていると思うと、自然と口角が上がってきた。

 後にはぽかんとした顔の【忌み子】が呆然と旧資料室で突っ立っているだけだった。

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