表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

3 忌み嫌われる存在。

  本文前小話劇場

 NGシーン ~情報屋の大山猫。より~

三「……要するに自白剤だな」

曙「三笠センセー!! 生徒が可愛くないんですかっ!?」

三「いや、お前別に可愛い生徒じゃないし」

曙「マッドサイエンティストォォォォォ「あ」おぼろ!?」

三「スタッフー? この薬じゃねーよ?」

ス「え? すいませーん。……だれだよ間違えた奴」

ス「あ、おれです。すいません」

曙「ちょ、おれ何の薬飲んだの!?」(ぼん!

三「あー……これ二年前につくったサンショウウオになる薬だな」

曙「(なんでそんなチョイスなんだよ!!)」


アケボノが人に戻るまで撮影中止されました。

「三笠センセェェェェェ!! 何するんだチクショー!」

「さて、何か隠し事はあるか? アケボノ」

「隠し事? リューン(生物最速を誇る騎乗鳥。幼鳥は人を乗せ、地を駆ける。)舎でこっそり超美猫な白猫を飼ってる。って、はああああぁぁぁぁぁ!? 何言ってんだおれぇぇぇぇぇ!!」

「猫……」

「な、なんだよ。猫の何処が悪い! ……ナナは超美猫だからな! 超可愛いんだぞ! 毎日おれ担当のリューンと一緒にブラッシングしてやってるし、遊んであげてるし、リューン舎の全てのリューンと仲がいい、リューン舎のアイドルなんだぞ! ……って、また何言ってんだおれぇぇぇぇぇ!!」

「アケボノ」

「……なんだよ」

「お前、すっごいピュアだったんだな……すまない」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 三笠とアケボノの会話はコントのようだった。ⅩⅢ教室の後ろでそれを聞いていた魔猫(ケットシー)は微笑ましい事でも秘密であるのならと楽しそうに聞いていた。この教室の全員に聞かれているのならばあっという間にこの話が広がるのは目に見えているが、それでも良しとした。

 ⅩⅢ教室には魔猫を含め二十人前後の生徒がいる。他のクラスと比べて圧倒的に少ないが、学年の問題児全てをこの教室に突っ込んでいるのだ。これ以上問題児がいたらさらにまとまらない。

「んー。アケボノって勢い余って教室半壊させた奴だっけかなぁ? あっちには半壊どころか教室全壊犯もいるねぇ。うん、何事もなく、というのは無理だねぇ。……それに」

 視線を横にずらす。魔猫と同じ最後列の一番端の席に座る少年。ただでさえ空席が目立つ教室内だが、その少年の周りはより一層空席が目立つ。

 机に突っ伏して寝ていても目に入る頭髪。色を抜いている訳でも染めている訳でもないその髪は他の色を知らないような真っ白な髪だった。

 この世界で色を持たないという事は本来ありえない。確かに歳を経るごとに色素は抜けていくが、産まれながらの純粋な白を持つ者はいない。

 そして、彼は世界に忌み嫌われる存在だった。

「【忌み子(いみご)】、かぁ」

 魔猫は興味津々に彼を眺めた。

 彼のような存在……【忌み子】とは、世界に天災、(わざわい)をもたらし、強大な力を持つと言われている。その力の所為なのかはわからないが、【忌み子】は極端に色素の薄い頭髪になる、という特徴を持っている。

 多少なりとも色があれば言い訳も出来るだろうが、彼のような色素の薄いどころか色素の無い髪色ではもう何も言い訳など出来ない。

 少年は【忌み子】だった。

「同じクラスになるとはねぇ。ま、あたしがあんなヘマしなければ今頃ⅩⅠかⅩⅡクラスだったかもしんないんだけどなぁ」

 魔猫の言う『ヘマ』とは、とある教師の浮気情報を入手し、どういう経緯かその教師の伴侶に情報が届いた。だが、それが偶然ばれてしまった事だ。それが原因で彼女は『問題児』の烙印を押され、ここにいる。なお、その教師は奥さんから平手……ではなく何故か目潰しを貰い、離婚を言い渡された模様。

 その教師が魔猫に報復を考えてもおかしくないのに、彼女には『問題児』扱いはされてもそれ以上の干渉は少しも無かった。……理由は彼女がその教師に対してまだまだ弱みを握っているからとだけ言っておこう。


 コントでHRは終わった。アケボノは疲れきった様子で机に突っ伏している。

「それじゃー今日は第二訓練場だからな。遅れるなよ」

 三笠はそう言うとさっさと教室を出て行き、HR中も騒がしかった教室内がさらに騒がしくなった。

 ちらほらと教室を出て行く者も多く、基本このクラスには戦闘好きな生徒が多く、座学は逃げるが戦闘授業は喜んで参加する者ばかりだ。

 魔猫もそんな彼らに続いて教室を出ようとし、チラリと【忌み子】の方に目を向ける。

 視線が合った。

 未だに寝ているものだと思っていた魔猫は内心焦ったが、不自然に目を逸らすのもと思い、逆にガン見してみた。

 真っ白な髪とは反対の真っ黒な眼。【忌み子】でなければもてたんだろうなと魔猫は思った。

 一向に視線を逸らさない魔猫を不審に思ったのか、【忌み子】は首を傾げた。

「……どうした?」

「喋った!」

 おお! と意味もなく魔猫が驚くと【忌み子】は不本意そうな顔をした。

「いや、俺別に人形じゃねーから喋るよ? 当然」

「あ、ごめんねぇ。気に障ったら誤るよ?」

「ん、別にいいけど。基本さっさと逸らすか睨んでくる奴ばっかりだからさ、変な奴だなと」

「君のほうが失礼だねぇ!」

「珍獣扱いしてきたからお相子でいいだろ?」

 ニッと【忌み子】が笑った。思っていた以上にテンポ良く会話が成立され、なおかつ意外に親しみやすかったことに魔猫は驚いていた。

「ま、それでとりあえずいいとしようかな?」

「上から目線! ……あ、次何処行けばいいんだっけ?」

 席から立ち上がりながら【忌み子】が訊いてくる。さっきまで完全に寝ていた事を証明する質問に笑いながら答えた。

「第二訓練場だよ。内容は訓練場で聴けだってさ」

「ふーん。ありがと」

 再びニッと笑った彼はもう二人しかいない教室から出て行き、左に曲がった。

 それを見た魔猫は廊下に出ると【忌み子】の背中に向けて声をかけた。

「ねぇ」

「ん?」

 軽くこちらを向いた【忌み子】に見えるように魔猫は反対側を指差しながら言った。

「第二訓練場こっちだけど」

 今向かっていった先にあるのはもうほとんど使われていない資料室だ。早速サボる気なのだろうかと考えていたが。

「……あれ?」

 きょとんとした顔の【忌み子】を見れば素で間違えたらしい。

 居心地悪そうに頭を掻きながら戻ってきた【忌み子】を思わず魔猫は可愛いと思ってしまった。

「……可愛いねぇ」

「え。嬉しくないんだけど!?」

「にゃはは! ごめんごめん。案内してあげるから許してよ」

 おとぎ話に出てくる猫のように笑いながら魔猫は歩き出した。しばらく歩いても付いてくる気配が無く、振り向くと先ほどと同じところに立っていた。

「? どうしたの」

「いや……。先行っててくれ」

 どうも動かない【忌み子】を疑問に思ったが、まあいいかと再び歩き出し、それとなく距離がひらいたところでようやく【忌み子】が歩き出した。

 よくわからないが、彼は魔猫の直ぐ側を歩きたくないようだ。今までの会話で距離をあけて歩かれる理由があっただろうかと魔猫が頭を捻ったが結局解らずじまいで第二訓練場付近までついた。

「この先まっすぐ行けばいいのか?」

 さっきまでずいぶんと距離があったはずなのに、【忌み子】はあっというまに距離を詰めてきた。

「そうだよぉ」

「ありがとな」

 そう言って【忌み子】は魔猫を抜いて歩き出した。

「ちょ、どうせなら一緒に行こうよ」

「いや、別々のほうがいいだろ」

「なんでさ」

 再び【忌み子】は顔だけ振り向いて、ニッと笑った。

「【忌み子】と仲良くなんてしたくないだろ?」

 急に【忌み子】の笑顔が『笑顔』に見えなくなった。

 一人さっさと歩き出した【忌み子】の背中を見送りながら魔猫は感じた。

「……変な奴」

 確かに【忌み子】と仲良くしていれば周りから変な目で見られるのは確定しているようなものだ。だがそれを当の本人が理解し、必要以上に魔猫を自身に近づけさせないようにしている。

 きっと、彼自身から他者に関わることは無いのだろう。

「ホント、変わってるねぇ【忌み子】君。……そういえば君の仮名は何なんだろうね?」

 周りから蔑まれているのに関わらず、他人を気遣う変わり者。他人の為に自分と関わるなと忠告する【忌み子】。

 魔猫が興味を持つには十分だ。

「できれば君の仮名を君自身から聞きたいなぁ」

 魔猫の目が細まり、煌いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ