◆柏木弘也◆1
以前何処かで触れた気もしますが、柏木が弥也子に背中を押される話です。
恵美1と2の何処かで、柏木と恵美が弥也子の事を話題にした場面があった筈だと見直しましたが見当たりませんでした(-.-;)
まだ書いてないなら良いのですが、それが気になって途中で止まってしまいました
大筋は変わりませんが弥也子と柏木の接点に触れた箇所を見かけた方がいらしたらメッセ 拍手ボタン 感想 何処からでも良いので教えて下さると助かります_(._.)_
お恥ずかしい話ですが、設定メモを間違って破棄した為、何処でどんな伏線を張ったか判別が難しくなってしまい色々停止中なのです( ノД`)…
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加那子がまた実家に戻り随分と愚図っていたので、高島家を訪問した弥也子である。
一応訪ねる前に連絡は入れたのだが来客中で、出直そうかと告げたが引き止められた。
「是非ご同席をと主は申しております。」
「……?お客様はどなたですの?」
「柏木家のご当主でございます。」
柏木弘也と云えば、やり手で有名だった。
弥也子は「そう云えば」と、高島家の老執事に尋ねた。
「柏木さまは、お義兄さまの後輩でしたわね。」
「左様にございます。」
執事は流石…とでも云いたげに一瞬だけ眸を瞬き、慇懃に肯定した。勿論ベテランの執事が明白な表情の変化など見せる筈も無く、弥也子だからこそ見抜けた僅かな感情である。
高島家の主が可愛がる弥也子に対しての隙と云えば云えるが、それが無くとも彼女ならば気付いたかも知れない。
「宜しければご案内致しますが。」
「そう…ね。」
柏木との縁は結んで損は無い。
――それに、もしかしたら噂のウサギは柏木氏だと睨んでるのよね、私。
弥也子はおっとりとした眼差しに、内心を隠して頷いた。
「ごめんね。お姫さま。」
「いいえ。私で何かお役に立つなら。」
義兄は弥也子に相談が有ったと云う。連絡をした時には、寧ろ丁度良いとばかりに誘ったのだと義兄に告げられ、弥也子は柔らかい口調で応じた。
そして柏木を見て、弥也子はニッコリと笑いかける。
直之の言葉と、此処に柏木が存在する事を鑑みれば、その意味は知れる。
おっとりと問い掛けた。
「お悩みのご様子ですわね。」
「そう見えますか?」
柏木は弥也子相手と云えど、不遜な眼差しを揺らがす事は無い。
弥也子はクスリと笑いを零した。
「私の親友は、現在家が大変ですの。恐らく、近日中にご結婚が決まりましょうね。」
「そ……れは。彼女から、何か?」
動揺も顕な柏木に、弥也子は内心失笑した。
しかし、プライドを刺激すれば、体勢を立て直されるだけだと、控え目にそっと微笑んだ。
「いいえ?ただ。世間は狭いですし、人の目は至るところにございますから。」
「……噂が?」
「いいえ。たまたま、私の手元には情報が集まり易いだけですわ。」
柏木の眼差しが、不安と安堵に揺れた。
「親友と、仰有いましたね?」
「ええ。」
「彼女の不名誉な噂は流れないと云う事ですね?」
恫喝を滲ませた男に、弥也子はスッと眸を細めた。
ニッコリと微笑んで告げた。
「そんな台詞は、相手をご覧になって仰有るべきですわ。」
ゆっくりとカップを傾けて一口、お茶を飲んだ。
柏木は対処に惑い、口を噤んだ。
義兄に向かって、弥也子は謝罪した。
「帰ります。お役に立てなくて、申し訳ありません。」
「仕方ないね。」
直之は苦笑して頷いた。
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