第8話「実戦訓練」
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『……この式典は、10年前の今日、3月20日に起きた、“魔女教”による“幼児集団誘拐事件”、その誘拐事件を巡る“魔女教”教徒と“第12魔法都市守衛魔法師部隊”との間で行われた大規模な魔法戦、それによる死者を偲ぶ会となっております。
この魔法戦において亡くなった多くの“戦闘魔法師”と、“魔女教”に誘拐され、そのまま帰らなかった子供達の冥福を祈り、事件の終結した午前11時37分に、式典に集まった人々による黙祷が行われました。………、』
俺は、12魔高の女子寮“桜寮”の部屋で、昼のワイドショーを見ながら、ぼーっと考え事をしていた。
数日前に、俺は突然マリとユウトとフレンダ、そしてユウナの四人から同時に告白された。
どうやら、四人はずっと俺の事が好きだったらしく、マリ達に至っては10年前からずっと俺の事を想っていたのだという…
10年前…、俺達にとってはあまり思い出したくないとある出来事のあった年だが、その件がきっかけで、マリ達は俺の事を男友達では無く、一人の異性として愛するようになったというが…、正直俺はあの時何も出来なかったという悔しい記憶しか無い。
まぁ、たかだか6歳のガキにあの時何が出来たのかという話ではあるのだが、それでも…、あの時の俺に力があれば、皆を怖い目に遭わさずに済んだのに……、と思ってしまう。
「でも、あの時マサト君が私達のために戦ってくれたから、」
「オレ達は勇気を貰えたっちゃん!」
「そうそう!あの時のマサト!すっごくカッコ良かったんだから!」
それでも、そんな俺に対して、そんな風に言ってくれるマリ達。
「だから、自信持って、マサト君!」
「そうそう!少なくとも、マサトはオレらにとっちゃ、唯一無二のヒーローなんやけん!」
「あ、でもこれからは唯一無二のヒロインかな?なんてね♪」
「それで、どうなん、マサト?わたし達と…、付き合ってくれる……?」
最後に、ユウナに上目遣いでそう言われた俺は、
「は…、はい……!」
と、流れのままにそう答えてしまっていた。
いや、俺だって四人の事を嫌いなわけはなく、むしろ大好きである。
ただ、俺のような男にはたった一人でも勿体無さ過ぎる程に素敵な美少女達が、四人も俺の恋人になりたいと言ってきたのだ。
頭はパニックで、まともに思考する余裕も無く返答してしまったが、本当に俺なんかを恋人にしていいのか?と考え直した方がいいのでは?と言い返したかったのだが…
その後の、俺の返事を聞いて喜ぶ四人の笑顔を見て、なおさら告白の返事を無かったことにするわけにもいかず…、結局、俺は四人と付き合うことになったわけだ。
「というか、お兄ちゃんが申し訳なく思う必要は無いやろ。
中学卒業と同時に、四人で一緒にお兄ちゃんに告白する、それがマリちゃん達の決めたことなんやけん、お兄ちゃんはその四人の想いを受け止めてあげればいいっちゃん。
それとも、お兄ちゃんは四人のことが嫌いなん?」
と、俺の部屋に来ていたマチが、ソファの俺の隣に座りながら、そう尋ねてきた。
「いや、嫌いなわけが無い。
むしろ大好きやけん、悩んどっちゃろもん…」
『……ええ、この魔法戦では、誘拐された子供達の両親である“戦闘魔法師”の方々も数多く亡くなっていて、天涯孤独の身になった子供達、それに未だ行方不明のままの子供達も………、』
テレビのワイドショーで、解説者の元“戦闘魔法師”の女性が話している声を聞き流しながら、マチにそんな風に答える。
「…気になっとーのは、マミちゃんのこと?」
マチのその言葉に、俺はビクッとなる。
白瀬麻美、俺とマチの従妹で、マリの双子の妹。
彼女は、10年前のあの事件以来、行方不明となっている。
思えば、俺の人生で一番最初に告白してきたのは、彼女だった。
あの頃はまだお互いに子供で、恋愛とか何も分かっていない、単なる言葉遊びみたいなものだったのかもしれないが…
「…いや、恋愛のことを分かっとらんのは今もやな……」
「ん?何の話?」
「いや、こっちの話。それより、そろそろ出るか」
と俺が言ったタイミングで、来客を知らせるチャイムが鳴った。
寮の各部屋は、遮音性能が抜群で、扉をノックする音さえ聞こえないため、各部屋の扉にチャイムが付いているのだ。
今のチャイムは、きっとマリ達だろう。
今日はこれから、“魔法少女”の皆と、魔物退治の実戦訓練を行う予定となっていた。
「おっ、ちょうどマリ達も来たな。さ、行くぞ、マチ」
「あ…、うん!」
俺は点きっぱなしだったテレビを消すと、マチと共に部屋の部屋の扉へと向かうのだった。
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“桜寮”を出て、校舎の方へと向かう途中で、ふと俺は気になっていたことを皆に尋ねた。
「そういや、ずっと建設中やったあの新校舎?完成したっぽいな?」
「ん?ああ、らしいな?」
「そういやそんな感じだよね?一昨日くらいから工事用車両みたいなの見かけなくなったし」
ユウトとフレンダも気付いていたらしい。
俺は詳細を知らないが、初めてこの12魔高に来た時はまだ完成していなかった、新校舎と見られる建物、それがどうも最近完成したらしく、遠目から真新しい校舎の外壁が目に入っていた。
ちなみに、現時点で校舎は二棟あり、それぞれ男子科と女子科に分かれている。
であれば、三棟目となる件の新校舎は何のために作られたのか?
「さぁ…?私も詳しくは…」
「ボクも姉さんからは何も聞かされてないな…」
「わたくしもですわ」
ところが、マリもサンゴもササラも、新校舎については何も知らないという。
同様に、マチとユウト、フレンダも首を左右に振って、知らないことをアピールした。
高校に入学したばかり(正確には入学式はまだなので、入学すらしていないが)のマリ達が知らないのはまだ分かるが、高校に勤める緑川博士と翠山博士の妹達も知らないとは…
「姉さんに聞いたことはあるんだけど、今はまだ秘密だと教えてくれなくてね」
「入学式になれば分かる、としか教えてくれませんでしたわ」
一体、件の新校舎にどんな秘密があるのか…
気になりつつも、俺達は実戦訓練を行うという、12魔高の校門前に広がる洞海湾の海岸沿いへとやって来ていた。
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12魔高の目の前に広がる洞海湾。
ここは、第12魔法都市の戸畑区と若松区を隔てる海で、“マナ結界”の内側に存在する海で、その両区を結ぶ真っ赤な橋、若戸大橋が観光名所としても有名である。
外海とは、“マナ結界”により、海水のみが出入り出来るような状態で繋がっており、外海の魔物が入って来ることは(一部の強力な魔物を除いて)無いが、元々洞海湾に住んでいた魔物達は、逆に外海に出て行くことが出来ずに残っている。
なので、そうした魔物達の数減らしも兼ねて、定期的に12魔高の生徒達による実戦訓練が行われているらしい。
ちなみに、元々洞海湾に生息していた、脅威度の高い魔物は、すでに駆逐されており、今残っているのは、脅威度の低い魔物達ばかりだそうだ。
脅威度の低い魔物達を駆逐しないのは、学生の訓練に使うためだ。
そんな実戦訓練だが、本来なら入学してからの野外授業ということになるのだが、“戦闘魔法師”となったばかりの俺やサンゴ、それにデビューしたてのマリ達“魔法少女”や、マチ達“魔砲少女”にはちょうどいい練習台ということで、春休み中にも関わらず、特別に行うことになったのだ。
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普段は比較的大人しい洞海湾だが、春先のこの時期は、通常深海域に生息する“鎧イカ”や“一角ダコ”といった魔物達が、繁殖期を迎えて凶暴化し、海面付近まで上がってくるため、若戸大橋を車で渡る人々に影響を与える恐れがある。
本来は、4月に行われる二年生以上の実戦訓練で本格的な討伐が行われることになるのだが、今回はまだ少し時期的にも早く、魔物達もそこまで凶暴化していない、ということで、“魔法少女”初心者の俺達でも比較的安全だということで、この場が設けられたわけだ。
「さて、君達のレベルと私達の【マジョリティ】システム、及び【マギキュリィ】システムであれば、鎧イカや一角ダコレベルならば問題無く対処出来るハズだ!」
「ですが、万が一、不足の事態が起きた時のために、チーム“雪月花”の皆さんには待機してもらっていますので、どうかご安心を」
緑川博士と翠山博士がそう説明すると、その背後にいた、チーム“雪月花”の三人の先輩達が“魔法少女”姿で手を振ってくれた。
「というわけで、皆!思う存分に暴れてきたまえ!」
緑川博士のその言葉を合図に、俺達はそれぞれの変身アイテムを構えて、叫んだ。
「「「「「『“マギアコンパクト”起動』!」」」」」
「「『“マギアロッド”セットアップ』!」」
そして、俺はマジョリティブラックに、マリはマジョリティホワイト、ユウトはマジョリティレッド、フレンダはマジョリティブルー、サンゴはマジョリティグリーン、マチはマギキュリィアインス、ササラはマギキュリィゼロへと変身すると、『飛行』魔法を使い、洞海湾海上へと飛んでいくのだった。
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海上を飛んでいると、早速、銀色の鱗で覆われた鎧イカの頭部が、海面から顔を出しているのが見えた。
鎧イカは、全長3〜5メートル程の大きさで、その名の通り、足以外の部分を鎧のような鱗で覆われた魔物だ。
この鱗の色によって性別が判別出来、赤ならばオス、茶色ならばメスで、繁殖期のオスに限り銀色に変化するという。
つまり、今目の前にいるのはオスということだ。
また、鱗はそれなりに硬く、一般の“戦闘魔法師”の魔法でも貫くのは難しいが、炎の魔法に弱いため、セオリーとしては炎の魔法で鱗を溶かしてから、現れた皮膚を攻撃する、という感じらしい。
あと気を付けるべき点は、10本の足による攻撃で、足に捕らわれ、足に付いた吸盤で吸い付けられたら自力で抜け出すのは難しく、そのまま餌食に…、ということにもなりかねない。
そんな鎧イカに対して、先陣を切ったのはレッドとアインスだった。
二人は、鎧イカの足がギリギリ届かないポジションに立ち、先手必勝とばかりに、レッドが炎の魔法を、アインスが魔砲を放った。
「よっしゃ!まずはオレから行くぜっ!『ファイアボゥル』っ!!」
「『アクセルバスター』っ!!」
『ACCEL BUSTER FIRE!』
『アクセルバスター』は、基本の魔砲らしく、杖状のノーマルモードの“マギアロッド”から放たれる術だ。
『キュルルルルリィイイイイッ!?!?』
レッドの放った『ファイアボゥル』が鎧イカの鱗を溶かし、剥き出しになった皮膚に、アインスの放った『アクセルバスター』が直撃して、そのまま爆発炎上した。
「うおっ!?マジか、一撃っ!?」
「何、自分でやっといて驚いとーと、レッド?というか、私の攻撃も含めて二撃やけどね?」
レッドが驚くのも無理は無いが、それだけ“魔法少女”と“魔砲少女”の一撃の威力が高いということと、鎧イカも一角ダコも、足の攻撃にさえ気を付ければ、それ程強い魔物では無いということだ。
「むぅー!ボク達も負けてられないよね、ブラック!」
「え、あ、ああ」
ブルーにそう言われて、反射的に答えた俺だが、これは魔物討伐の訓練なのであって、別に競争しているわけではない。
『シュルルルゥウウウウッ!!』
と、言っている間にも、今度は一角ダコが海面から姿を現した。
一角ダコは、全身2〜3メートルで、青い体色に人間で言う額に当たるような場所から、自分の体と同じくらいの長さの、螺旋状に線の入った角が生えている。
雌雄の判別は、この角の螺旋の違いで、右回りになっているのがオス、左回りになっているのがメスらしい。
だから、今目の前に現れたのは、
「今度はボク達の番だよ、ゼロ!『サンダーアロー』っ!」
「ええ、グリーン!『アクセルシュート』ですわっ!」
『ACCEL SHOOT FIRE!』
『シュルシュシュシュゥウウウウッ!?!?』
と、俺が雌雄の確認をする間もなく、グリーンとゼロの放った攻撃で、一角ダコは爆発炎上してしまった。
「あぁっ!?また、先を越された!!」
「まぁまぁブルー、落ち着いて?これは競争や無いんやけね?それにしても、この調子なら、確かに私達だけでも何とかなりそうやね」
ホワイトの言う通り、魔法初心者のグリーンの放った魔法でさえ、一角ダコに対して大ダメージを与えていた。
「これなら、俺でも…!」
というわけで、若干不安な気持ちを抱えていた俺だったが、俄然やる気になってきたのだった。
*
『キュルルルルルゥウウウウッ!!』
メスの鎧イカの10本の足が俺に一斉に襲いかかる。
俺はそれを、縦横無尽に飛行しながら紙一重でかわしていく。
魔法による攻撃技術はまだまだな俺だが、この飛行技術だけは緑川博士もお墨付きだ。
「はぇ〜…、相変わらずブラックの『飛行』魔法の技術はスゴいね〜……」
「あぁ、あの飛行技術だけはオレらじゃ敵わねぇな…」
「ふふん!さすがはお兄ちゃん!」
皆に感心されて悪い気はしないが、俺としてはやはり一刻も早く攻撃魔法の腕を上達させたいところだ。
だが、緑川博士曰く、俺、マジョリティブラックが扱えるのは、本来人間が扱えないハズの闇の魔法だという。
そもそも、闇の魔力を扱えるのは、元からその力をその体内に宿す“闇属性の魔獣”だけなのだ。
例外として、かつてこの世界に混乱をもたらした【魔女】が、闇の魔術を扱っていたらしいが、それだけに、俺、マジョリティブラックという存在は、イレギュラー中のイレギュラーな存在らしい。
『大体からして、君の“マギアコンパクト”、“マジストーンブラック”は“魔法少女”用に作った物ではなく、私が趣味で研究用に作った物だからね』
とは緑川博士の言だ。
そんなわけだから、俺はまだ完璧には闇の魔法を扱いきれておらず、今回はあくまで皆のサポートに徹することにする。
『キュルルリリィイイッ!?』
と、そうこうしている内に、俺の思惑通り、鎧イカは自分の足がむちゃくちゃに絡まって、身動きが取れなくなっていた。
「よしっ!ホワイト!」
「うんっ!『ファイアバースト』っ!!」
『キュルルルルルルゥウウウウッ!?!?』
ホワイトの炎の魔法を食らった鎧イカは、見事にその場で爆発四散した。
「やった!」
「よっしゃ!」
俺とホワイトは、空中でハイタッチを交わした。
そんな俺達の周りに、皆が集まって来る。
「いや〜、結構な数倒したよね、ボク達」
「ああ、思っとったより大したこと無かったな!」
「そうですわね」
「まぁ、この時期の鎧イカと一角ダコは、まだ比較的穏やかな方だから、ボク達の実力でもなんとかなっている、という感じだけどね」
グリーンが冷静な判断を下す。
確かにそれはそうなのだろう。
と、“マギアコンパクト”から、緑川博士の声が聞こえてきた。
『今回の実戦訓練は十分な成果だった!というわけで、そろそろ帰還してくれたまえ!体力的にも限界が近いだろうからな!』
“マギアコンパクト”は、通信器の代わりにもなっていて、離れた仲間同士や、博士達との会話を双方向で行える。
「えー?ボク達まだまだ戦えるよー?」
『ブルーさん、無理は禁物です。
初めての実戦における魔物討伐ですから、一時的に気持ちが昂っていてそう感じているだけですよ』
『そうだ!君達は自分で思っている以上に体力を消耗しているハズだから、ここは大人しく、』
その時、俺達の真下の海面に突然巨大な渦潮が発生した。
「えっ!?」
「一体、何…、キャアッ!?」
直後、その渦潮の中から、二本の巨大な白い足が生えてきて、ホワイトとアインスを捕らえたのだ。
「ホワイトっ!アインスっ!」
俺は咄嗟に二人を助けに向かおうとしたが、さらに現れた足によって、背後から捕らえられてしまった。
「くっ!?し、しま…っ!?」
「なっ、なんだこりゃ…っ!?」
「ちょっ!?ゃんっ!?そんなとこ触らないでっ!?」
「いやぁああああっ!?」
「うぐ…っ!?ゆ、油断した…っ!」
見れば、レッドとブルー、ゼロとグリーンも同じように吸盤の付いた足で捕らわれの身となっていた。
やがて、渦潮の中から、巨大な、10メートルはあろうかという、白いイカの姿をした怪物が姿を現した。
こいつは…、鎧イカじゃない…っ!?
『君達っ!?大丈夫かっ!?』
『ま、まさか、この反応は…、魔獣っ!?』
『ギュリュリュルルラァアアアアアアアッ!!』
そう、突然現れたコイツは、魔物ではなく、イカ型の魔獣、“イカゲッソー”だった。
『く…っ!?まさか、このタイミングで“マナプール”が発生するなんて…っ!?』
魔獣は魔物とは違い、“マナプール”と呼ばれる、空気中のマナが一箇所に集まって出来るマナの溜まり場から、様々な条件を満たすことで発生する。
『計算上では問題無いハズだったのですが…、やはり、“マナプール”の発生を完全に予測演算するのは難しいようですね…!』
『君達!なんとか持ちこたえてくれ!今からそちらに、“雪月花”が、』
『いや、それには及ばないよ』
『『え?』』
俺達の知らない声が通信に割り込んできたかと思った、その直後、俺達の頭上に、二人分の影が現れた。
顔は太陽光を背にしているせいでよく見えないが、その影は、普通の人間のものではなく、ロボットアーマーを纏ったようなシルエットだった。
それらの影の内、片方は自身の背丈ほどもある巨大な両手剣を、もう片方は刀のような武器を手にしており、二人はそれらを同時に、イカゲッソーへと向けて振り下ろした。
「『終焉の大地』っ!!」
「『水龍の嘶き』っ!!」
『ギュリュリュキュリリリィイイイッ!?!?』
純白の閃光と紅蓮の炎の刃が、イカゲッソーの足を切断し、捕らわれていた俺達は解放された。
「な…っ、今のは一体…!?」
突然の出来事に驚いていると、巨大な両手剣を持った少女が、俺の目の前に降りて来て、こう言った。
「助けに来たよ、マサト!」
その少女は赤を基調としたメカニカルなデザインのアーマーを纏っていた。
胸元の大きく開いたアーマーに、ヘソ出しのコルセット、両サイドのくびれ部分には大きなリボン(ただし、結び目の下側はテールのように膝下まで伸びている)、背中には菱形の羽が装着されていた。
ボトムスはレオタード状になっていて、腰のベルトからはお尻と太ももを守るようにスカート状のアーマー(正面側は三角形に切り取られていて、Vラインが見えている)が装着されている。
両手には肘の少し上から掌までを覆うアームカバーが装着されており、両足には股下10センチメートル下から全体を覆うロングブーツを履いていた。
いや、そんなことより何より、そのメカニカルなアーマーを纏った少女には見覚えがあった。
「ま…、まさか、ユウナ…!?」
「うん!久し振り、マサト!」
その少女の正体は、まさかのユウナだった!
「ユウナ!?そ、その姿は一体…、」
俺がユウナに事情を尋ねようとしたところ、目の前にもう一人の少女、ユウナとは色違いの、白を基調としたデザインのアーマーを纏った少女が降りてきたのだが…、
「説明は後です!今はあのイカの魔獣を倒しましょう!」
「え…、ま、マリ…!?」
その白いメカニカルアーマーの少女は、マリと瓜二つの顔をしていた…!