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第7話「告白」


 ユウナ含めた幼馴染の少女達と実家に戻って来た俺達。


 俺とマチの兄妹きょうだい、そして従妹いとこのマリと、幼馴染のユウトとフレンダの五人は、10年前に起きた()()()()()で、“戦闘魔法師”だった親を亡くして以降、同じ家で暮らしてきた。

 なので、家に帰って来ると、それぞれに役割分担が決まっていて、俺が何かを言わずとも、皆がそれぞれに動いて家事などをし始める。



 料理が得意なマリとユウト、そしてユウナの三人は、帰りに買い物してきた食材を持ってキッチンへと向かった。

 マチは、風呂の準備や、しばらく使っていなかったマチ達の部屋や、今日泊まるユウナのための来客用の部屋の掃除を始めた。


 そして、特にやることの無い俺とフレンダは、居間のソファに座ってテレビを見始めた。

 フレンダは料理や掃除といった家事がとにかく苦手なせいで、手伝わせると逆に仕事が増えるということで、戦力外通告を言い渡されている。

 俺に関しては、一人暮らしもそれなりに長かったので、一通りの家事は出来るのだが、マチ達がさせてくれないのだ。



 そうして余った俺達は、特にすることもなく、テレビを見て過ごすしかない、というわけだ。



 ソファに並んで座っていると、フレンダが、



「んっふっふっ〜♪この時間だけはボクがマサトを一人占めできるから好き〜♪」



 と言いながら、腕を絡まながら俺に寄りかかってくる。

 いつものことながら、そうされると、必然的にフレンダのたわわなお胸様が俺に密着してくるわけで…



「えっと…、フレンダ?そうくっつかれると、フレンダの胸が、」


「もう♪そんなのわざとに決まってんじゃん♪何度も言わせないでよ♪」



 何が楽しいのか、フレンダは毎回決まり事のようにそう言うと、さらにぎゅっぎゅっと胸を押し付けてくるように俺の腕を抱きしめてくる。

 小学生の頃は、まだ互いにお子ちゃまだったから、こうされても特に何とも思わなかったが、中学生になり、思春期を迎えた今の俺には、服越しとはいえ押し付けられる美少女のおっぱいは、非常に毒だ。



「マサトだって、本当は嬉しいんでしょ?ほれほれ♪」


「そ、それは…、嬉しいか嬉しくないかで言えば、大変に嬉しいことではあるんやが、それはそれとしてだな、」


「あ!“雪月花”先輩!」



 そろそろ俺の股間のムスコが暴走しそうになったところで、テレビのニュース映像を見ていたフレンダがそう言ったので、釣られてテレビに視線を移すと、今朝の翼タイガーの事件の様子が映し出されていた。



『…にて、たまたま現場に居合わせていた緑川博士の指令を受けた、魔法師育成学園高等部に在籍する、チーム“雪月花”と呼ばれる“魔法少女”三人組が出動し、見事、翼タイガーを討伐し、“魔法少女”としての初陣を飾りました』



 女性のニュースキャスターが説明をする中、画面では“雪月花”先輩達が翼タイガーを倒している映像が流されていた。



「あ!ここにマサトも映ってるじゃん!」


「え!?マジで!?」



 フレンダが指差した先、画面の端の方に、確かに緑川博士を抱えた俺の姿(マジョリティブラック)が映り込んでいた。



「え!?どこどこ!?」


「おおっ!マジやん!マサト映っとーやん!」


「ほ、本当にこれがマサトなん…?」



 と、いつからそこにいたのか、俺達の背後から、マリとユウトとユウナがテレビを覗き込んでいた。



「うおっ!?びびった!?」


「ちょっ!?三人とも、いつからそこにいたのさ!?」


「フレちゃんが、“雪月花”先輩がテレビに出とーって叫んどーのが聞こえたけん、ユウちゃんが、ひょっとしたらマサト君も映っとーかもしれん!って言うけん、慌てて見に来たんよ」


「そしたらドンピシャやったな!」


「未だに信じられんけど…、本当にマサトは“魔法少女”になったんやね……」



 ユウナが未だに信じられないという表情で俺の方を見る。

 俺も未だに自分が“魔法少女”になっただなんて、夢なんじゃないかと思ってるよ…



 と、そうこうしてる内に画面が切り替わり、今度は“魔法少女”に変身した“雪月花”先輩のインタビュー映像が流れ始めた。

 どうやら、学園に俺を連れて行った後に出て行ったのは、マスコミ対応のためだったらしい。



『…はい、あたし達は新三年生ですが、“マジョリティ”適正があったため、“魔法少女クラス”に所属することになりました。

 “魔法少女クラス”には他にも新二年生の子達もいて、設立初年度の今年は三学年合同クラスという感じですね!』



 そう答えるのは、三人の中ではリーダー的存在であるマジョリティローズこと、セツナ先輩だ。

 

 そのセツナ先輩に、女性レポーターが質問を続ける。



『御三方は新三年生、ということですが、では現時点ではまだ高校二年生、ということになりますよね?

 本来、魔法学園の生徒は三年生にならなければ、訓練以外での実戦には参加出来ないハズですが、その点に関してはどうなのでしょうか?』


『確かにその通りですが、四捨五入すれば三年生なので、問題無いのでは?』


『え!?いや…、それは…、』



 セツナ先輩の突拍子も無い回答に女性レポーターが困惑していると、隣にいたマジョリティウインディことカノン先輩が、女性レポーターのマイクを奪って、こう説明し始めた。



『確かに、ボク達は本来の“戦闘魔法師”であれば、まだ訓練以外での実戦には参加出来ない学年だが、“魔法少女”としてはそうでは無い、ということを証明してみせたに過ぎないのだよ』


『と、言いますと…?』



 マイクを取られて余計に困惑する女性レポーター(心なしか、カノン先輩に対して熱い視線を

向けているような気がする…)の問に、カノン先輩が説明を続ける。



『つまり、博士の発明した【マジョリティ】システム、通称“魔法少女”は、従来の“戦闘魔法師”の常識では測れない存在、ということさ』


『…えっと、要するに、わたし達“魔法少女”の力は、すでに実戦経験を積んでいる“戦闘魔法師”の実力に近く、魔物相手であれば、学生レベルでも十分に対応出来るということを、世間の皆さんに証明してみせた形になります』



 と、最後に、マジョリティホークことツキネ先輩が丁寧に説明してくれたことで、インタビュー映像は終わった。


 その後、映像はスタジオに戻り、アナウンサーと解説者らしき人達が、改めて“魔法少女”についての説明を続けるのだった。



「あはは、先輩達は相変わらずやな〜!」


「だねー」


「インタビュアーの人も大変やったろうね」



 “雪月花”先輩達のインタビュー映像を見ていたマリ達三人がそんな感想を述べる一方、ユウナは小声でぶつぶつと何か言っていた。



「………マサトの“魔法少女”姿、もっと見たかった、今の映像録画しときたかった、また深夜のニュースとかで流れるかな…?………、」


「おーい、ユウナ…?大丈夫か?」


「ひゃいっ!?なっ、何がっ!?」


「いや、何がって…、なんか怖い顔してめっちゃぶつぶつ言いようけんなんかあったんかと…、やっぱ、俺が勝手に魔校に通うってなったけん、怒っとる?」


「あー、えっと…、それはまぁ、少しあるけど…、と、とりあえずその話はまた後でやろう!マリちゃん、ユウトちゃん!夕飯作りに戻るよっ!」


「はーい」


「お、おう!そうやったな!」



 そうして三人はキッチンへと戻って行った。


 残された俺とフレンダは、その後夕飯が出来るまで、そのままソファでテレビを見ながら時間を潰すのだった。

 相変わらずフレンダの距離が近くて、あふれ出そうになるリビドーを抑えるのに必死で、テレビの内容はほとんど頭に入ってこなかったが……





 マリとユウトとユウナの用意してくれた豪勢な夕食は、その辺の外食チェーン店で食べるよりも、量は多くて、おまけにめちゃくちゃ美味しかった。

 


「三人とも!めちゃくちゃ美味しいよっ!最高過ぎるっ!!」


「ふふ♪ありがと、マサト君♪」


「ま、マサトの好きな味は全部把握しとーけん、当然っちゃ!」


「ちょっ、マサト?美味しいのは分かるけど、ちゃんと噛んで食べりぃよ!?」


「分かっとるって!そんな子供や無いんやけん!」


「あ!フレちゃん!トマトだけ私のお皿に入れんで!」


「えー?マチ、トマト好きでしょ?だから親切心からあげたのにー」


「好き嫌いしちゃダメだよ、フレちゃん?」


「そんなこと言いつつ、ボクのお皿にピーマン乗せたのバレバレやけんね、マリ!?」



 と、そんな風に賑やかで温かな団らんの時間が過ぎていく。



 そして、ある程度落ち着いたところで、俺の今後について、改めてユウナに話した。



「……というわけやけん、その…、俺は今後は“魔法少女”として、魔校に通うことになる。やけん、ユウナと同じ高校には…、」


「うん、分かった」



 ユウナはあっさりとそう言った。

 この反応は少し拍子抜けで、てっきりユウナは俺の事を怒るかと思っていた。

 

 ユウナとは中学からの友人で、魔術的“呪い”の影響で、遺伝子に疾患を抱えていた俺は、男子からも女子からも腫れ物扱いされていた。

 いつ体調が悪化して、死んでもおかしくない人間とは、極力関わり合いたくないと考えるのは、家族や、医療関係者以外の人間からすればそうおかしなことではないだろう。

 まして、子供(準成人)の中学生であればなおさらだろう。

 目の前で倒れられてもどう対処すればいいか分からないだろうし、まして死なれでもしたら寝覚めも悪いというものだろう。



 そんな俺に、唯一家族や幼馴染以外で普通に接してくれたのが、ユウナだった。

 ユウナは、家にいる以外のほとんどの時間を俺と一緒にいてくれて、高校を決める際も、運動神経の良いユウナには、いくつかの高校からスポーツ推薦といった話もあったようなのだが、その全てを蹴って、俺と同じ高校に進学することを決めてくれた。


 そんなユウナを、俺は一方的に裏切ってしまったようで、今更ながらに、あの場で雰囲気に流されて第12魔校に進学することを決めてしまったことを少し後悔していたのだ。



「マサトには“魔法少女”としての才能、いや適正か、それがあったわけやろ?なら、その力を皆のために使う責任と義務があるわけやん?

 それに、“魔法少女”になることで、マサトのその“呪い”を治療出来るかもしれんっちゃろ?なら、断る理由なんて無いやん!

 そういう話なら、わたしがマサトの入学を止める理由は無いし、むしろわたしも応援するっちゃ!」


「で、でも…、ユウナとは同じ高校に行くって約束してたし…、それに、そのせいでユウナのスポーツ推薦とか全部…、」


「ああ…、まぁ、その辺は気にせんでいいっちゃん!確かに中学ではそこそこ色んなスポーツの大会に出て活躍出来たけど、その道一本でプロになれるか…、って考えると……、どれも中途半端になりそうやけん、端からスポーツ推薦は受ける気なんて無かったんよ?」



 ユウナのその言葉に、嘘は無さそうだった。



「そういうわけやけん、わたしのことは気にせんでいいけん、マサトはマサトの道を進んで!それに、マサトと離れ離れになるってわけやないしね」


「まぁ、それはそうだが…、」


「実はね、マサトの話を聞いて、わたしも覚悟決めたけん」


「ん?何の覚悟だ?」


「ふふ♪それは内緒で♪」


「内緒って、」


「と、も、か、く!

 わたしもわたしの道を進むってことで!お互いに頑張ろうね!」



 これで、この話は終わりとなり、後はいつもの幼馴染達を含めた他愛の無い雑談が始まるのだった。





 わたし、緋崎郁凪あかさきゆうなは小学生の頃、孤独だった。


 周りに人がいなかったわけでは無い。

 運動神経が良かったから、色んなスポーツの助っ人に呼ばれたりして、それなりにチームに貢献したりして、自分で言うのもあれだが、それなりに人気はあった。



 だけど、本当の意味で友達と呼べるような人はいなかった。

 皆、何処かでわたしと一歩距離を置いていて、何と言うか、そう、スポーツ選手とそのファンみたいな、そんな距離感があった。



 皆と一緒にいるハズなのに孤独だった。



 だからというわけでは無いが、わたしは黒霧優人くりぎりまさとという男の子に、勝手に共感を覚えていた。


 “呪い”のせいで、遺伝子疾患を抱える彼に積極的に近付こうとする者はおらず、わたしとは正反対の意味で孤独だった彼に、わたしは勝手に共感して近付いて、そして…、



 いつの間にか、彼に恋をしていた。



 この感情は、すごく勝手なことだと自分でも思っている。

 わたしは、自分の孤独感を埋めるためだけに彼に近付いた、悪い言い方をすれば、彼を利用していたわけだ。


 だけど、彼はそんなわたしにごくごく普通に接してくれて、本当の意味での友達になってくれた。

 気兼ね無く、スポーツ選手ではない一人の女子として、彼の学校における唯一の友人として付き合っていく内に、いつしかわたしは彼のことを一人の異性として見るようになっていた。


 そんな彼を通じて、彼の妹や幼馴染である“魔法師”の女子達とも知り合い、彼女達も友達になってくれた。

 そして、彼女達もまた、彼のことを異性として見ていることを知った。


 “呪い”の影響で、男子の数が減った現代では、ハーレムは当たり前で、わたし以外の女子が彼のことを好きであることは普通に受け入れられたし、彼にもわたし以外の親しい人達がいたことは素直に嬉しかった。



 彼は、決して孤独では無かったことが嬉しかったし、そしてわたしもまた孤独では無くなったことが、この上なく嬉しかった。



 そんな彼のことを想うわたし達女子グループは、ある一つの約束をした。



 それは………





 俺が“魔法少女”になってから数日が経った。



 その間、俺は自由登校となっていた中学に行って、これまでの経緯と今後のことなどを担任に説明したりだとか、第12魔高の訓練施設を借りて、マリやサンゴ達と魔法の練習をしたりして過ごした。


 不思議なもので、最初の内は“魔法少女”に変身するのが恥ずかしかったのだが、何度も変身していく内にすっかり慣れてしまっていた。

 胸や股間の違和感はまだ少しあるが、“魔法少女”の姿になること自体に抵抗は無くなっていた。

 それに何より、魔法を使えるというのは、魔法が当たり前の現在でも、厨二心がくすぐられるというか、どうしてもワクワクしてしまうものだ、だって、男の子だもん。



 そんなこんなで、あっという間に中学の卒業式を迎え、俺とユウナは中学を卒業した。


 ちなみに、ユウナは愛宕あたご高校への入学を辞退して、スカウトが来ていたという新設高に入学したらしい。

 どんな高校で、何の競技でスカウトされたのか聞いたのだが、「今はまだ秘密♪」として教えてくれなかった。

 ユウナの進路は気になったが、“第12魔法都市”内に今年出来たばかりの高校だということで、その気になればいつでも会えるということだったので、そこは安心した。


 なんだかんだで、ユウナは俺にとって貴重な友人となってくれた大切な人だから、このまま離れ離れになるのは寂しいと思っていたからな…



 卒業式の後、再びユウナを含めた幼馴染達と集まり、中学卒業と高校入学祝いを兼ねたパーティーをすることとなった。

 このパーティーでも、マリとユウトとユウナが腕によりをかけた最高の手料理を振る舞ってくれて、俺はこんな美少女達に囲まれながら、その美少女達の最高級手料理を頂ける幸運に感謝をした。



 だが、こんな時はふと思うのだ。



 彼女達にとって、本当にこれでいいのだろうか、と。



 俺はこの現代では貴重な男子ではあるが、魔術的“呪い”のせいで、この身がいつどうなるか分からない状態だ。

 定期的な健康診断と、症状を抑える薬のおかげで、今すぐどうかなる可能性は限りなく低いとはいえ、万が一ということもある。


 そんな俺に付きっきりでいてくれるのは本当にありがたく、感謝の気持ちしか無いのだが、彼女達の人生を考えると申し訳なくなる。

 俺のせいで貴重な青春を謳歌出来ていないだけでなく、真っ当な恋すら出来ていないのではないか?


 そう思って、以前マリ達に「恋人はいないのか?」と尋ねたことがあった。

 すると、「もう…、本当に鈍感やね、マサト君は…」と呆れられた顔でそう言われた。

 つまり、俺が気付いていないだけで、マリ達にはすでに恋人がいる…、いや、むしろ俺の知らないところで、幼馴染同士が付き合っているのではないか?


 現代では、女性同士のカップルも珍しくない、というかむしろそちらの方がメジャーとなりつつあるので、マリ達がすでに恋人同士の関係にあってもおかしくは無い。

 というか、男の影が無い以上、それ以外に考えられない。


 だが、そのことを俺に言わないのは、恋人のいない俺に対して気を遣ってくれているからなのだろう。

 本当に、気配りも出来て心遣いも出来る、最高に素敵な幼馴染達だ。


 そんな彼女達の優しさを無碍むげにするわけにはいかないので、以後は、俺もあえてそのことは口にせず、気付いていないふりをしてきた。



 しかし、この春から高校生、つまりは成人となり、婚姻が認められる年齢になった今、このままの関係を続けるわけにはいかないだろう。

 今日はその辺りのことも含めて、一度話し合っておこうと思ったのだが…、



「ね、マサト君」


「オレ達からマサトに、」


「話しておきたいことがあるんだよね!」


「だから、今夜、時間空けておいてくれる…?」



 と、マリ達の方から話を振ってきたのだ。

 俺としては、別に今すぐでも良かったのだが、まぁ、食事中に話すような内容でもないかなと思い、俺は了承した。



「じゃあ、今晩10時にマサト君の部屋に行くけん、待っとって♪」


「ああ、分かった」


「頑張ってね、お兄ちゃん♪」



 と、最後にマチが俺に向かってウインクをしてそう言ったが、俺に何を頑張れというのだろうか…?

 まさか、マリ達の仲人なこうどを頼まれるとかそういうことなのか?



 とにもかくにも、夕食を終えた俺は、風呂に入ったりして時間を潰しながら、夜の10時を迎えるのだった。





 夜の10時。

 部屋の扉をノックする音が聞こえたので、返事をすると、マリとユウトとフレンダ、そしてユウナの四人が一斉に部屋に入って来た。

 三人とも、清楚で可愛らしい寝間着を着用しており、ほんのりと漂うシャンプーの優しい香りが、少し色っぽかった。



「えっと…、そ、それで話って、何かな…?」



 俺は四人の色っぽさによる緊張から、少し上ずった声が出てしまった。

 また、緊張していたせいで、この場にマチがいないことにも気付かなかった。



「あのね、マサト君…!えっとね…!」


「す、少しだけ、目を閉じとってくれん…?」


「え?あ、あぁ…、い、いいけど…」



 ユウトに言われた通り、目を閉じてしばらくして、



「「「「ちゅっ♥」」」」


「……へ?」



 と、俺の左右の頬とこめかみ辺りに、四人の柔らかい唇の感触がした。



「な…っ!?ななな…っ!?」



 突然の四人からのキスに、俺はパニックになりながら後退って、尻餅をついた。

 そんな俺を、頬を染めた四人が見つめながら、こう言った。



「マサト君、」


「マサト…!」


「マーサト♪」


「マサトっ!」


「「「「愛してますっ!付き合って下さいっ!!」」」」



 こうして、中学を卒業した俺に、四人の恋人が出来たのだった…

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