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第6話「もう一人の少女」


 それから、昼休憩を挟みつつ、夕方頃までマリ達に付き合ってもらって魔法の基礎練習をした俺は、一度、俺がこれから住むことになる女子寮に向かうことになった。


 女子寮は学年ごとに分かれており、俺達新一年生が入る寮は昨年まで三年生が使っていた“桜寮”と呼ばれる寮になるらしい。

 ちなみに、昨年の一年、つまり新二年生の寮は“菊寮”、昨年の二年つまり新三年生の寮は“桃寮”となっている。



 そんな桜寮へと向かっている道中で、ふとサンゴがこんなことを言い出した。



「しかし、マサト君、君の幼馴染達はおっぱいが大きい娘ばかりだね?」


「何を急に言い出しよん!?」



 確かに、俺の妹と従妹いとこも含めた幼馴染達は、美少女というだけでなく、美巨乳どころが揃っている。


 俺の聞いたところによれば、妹のマチが94、従妹いとこのマリが95、そして幼馴染のユウトが98でフレンダが93だったハズだ。



「やはりこれはマサト君の趣味なのかい?」


「いや…、意味が分からんのやが…?」


「お兄ちゃんが巨乳好きなのは事実やろ?今更隠す必要無いやん?」



 と、マチが兄の恥ずかしい性癖を暴露しやがった。

 確かに俺は巨乳好きだが、周りにいる幼馴染達のおっぱいが揃いも揃って大き過ぎるから必然的に性癖がそう歪められただけなのだ!



「感謝しろよ、マサト!お前の巨乳好きに合わせて、オレらも頑張っておっぱい大きくしたんやけん!」


「あ、大きくしたって言っても、整形したとかじゃなくて、れっきとした天然物だからね♪」



 ユウトとフレンダが自身の胸を強調しながらそんなことを言った。

 いや、俺の巨乳好きに合わせて大きくしたって、そんなこと出来んのかよ!?



「だとすると、わたくし達もマサトさん好みな体型、ということかしら?」



 そう言ったササラの胸もまたかなりのモノで、見た感じで95はありそうだった。



「おっと、いくらマサト君でも、ササラは渡さないからね?彼女はボクの恋人なんだから!」



 ササラを守るように盾となったサンゴだが、そのサンゴ本人も推定で98はありそうな素晴らしいモノをお持ちだった。


 ちなみに余談だが、今この場にはいない緑川博士の推定バストサイズは96、翠山みどりやま博士は86となっている(俺調べ)。



「いや、別にササラを奪うつもりなんて無いよ…」


「何っ!?君はボクのササラに魅力が無いとでも!?」


「逆ギレっ!?」



 どう答えりゃ良かったんだよ…



「そういや、ユウナちゃんもおっぱい大きかったよね」



 と、マチがぽつりと呟いた。

 中学に入ってからの俺の女友達であるユウナも、聞いたところでは、バストサイズは97あるという。



「それマジですの…?」


「おいおいマサト君…、さすがに君の周りは巨乳キャラが渋滞し過ぎだろう…?」


「そんなこと言われてもな〜…」


「そういやユウナはオレらと初めて会った時はそこまで大きくなかったくないか?」



 と、ユウトがユウナと初めて会った時、つまりは中一のゴールデンウィークの時のことを思い出しながら、そんなことを言った。


 

「そういえば…、そうだったか…?」



 ユウトに言われて思い返して見れば、確かにそうだったな…

 中学生になって成長期に入ったということなのだろうか?



「ほら、ユウナちゃんもやっぱりマサト君の為に頑張って大きくしたっちゃん、きっと!」



 マリまでそんなことを言い出すが、そもそも何でおっぱいを大きくすることが俺のためになるんだ。

 確かに、目の保養にはさせてもらってたけど……



「ま、こればかりは、ね……」



 マチがまた、呆れた表情で俺の方を見てくる。

 だから、その表情は何なんだ…?



 そんな他愛もない話をしていると、目的地である“桜寮”へと辿り着いた。





 12魔高の学生寮は、全て作りは同じで、外装の色だけが異なっている。

 男子寮が青で、“桜寮”が薄いピンク、“菊寮”が黄色で、“桃寮”が濃いピンク、という感じだ。

 正直、“桜寮”と“桃寮”はもう少しなんとかならなかったのかという感じがしなくもないが、学園長の趣味だというから仕方が無い。

 ちなみに、12魔高の学園長は、見た目は幼女だが、2000年を生きる“吸血鬼ヴァンパイア”だという、嘘か本当か分からない噂を耳にしたことがある。

 魔法やら魔獣なんかが存在する世界だから、“吸血鬼ヴァンパイア”という種がいてもおかしくは無いのかもしれないが、どうにも信じ難い話である…



 そんな12魔高の学生寮は、一階に食堂や遊戯室、談話室、大浴場といった施設があり、二階から五階までが個人部屋となっているそうで、各階廊下を挟んで10部屋ずつ、計20部屋あるから、最大で80人まで住むことが出来るという計算だ。

 魔法師育成学園の一学年の生徒は、毎年女子でだいたい60人~70人前後、男子が10人〜20人前後ということなので、寮の部屋がいっぱいになるということは、滅多にないらしい。



 そんな寮の個人部屋だが、これまたとんでもなく豪華だった。

 なんと、1LDKにトイレ、シャワールームまで完備しており、寝室にはシングルベッド、クローゼットに鏡台、テレビは寝室にもリビングにもあって、冷蔵庫、除湿機能と加湿機能の付いたエアコン、洗濯機などなど生活に必要な物はほとんど揃っていた。


 一階に食堂や大浴場まであるのに、個人部屋にもキッチンやシャワールームがあるのは、プライベートを大事にしたい生徒への配慮からだという。

 …これなら、男子の俺も()()()()女子寮で一人暮らし出来そうだ。





 “桜寮”に着いてから、同じ五階に住んでいるサンゴとササラとは別れ、残った俺達幼馴染組は五階のマチの部屋に一度集まることにした。


 マチの部屋は503号室で、その隣、504号室がマリの部屋、502号室がフレンダの部屋で、角部屋の501号室がユウトの部屋となっているらしい。


 そして、501号室の向かいの部屋511号室とその隣の512号室はすでに埋まっていて、519号室がサンゴ、520号室がササラの部屋となっている。

 つまり、残りの505号室〜510号室、512号室〜518号室が空いており、俺はその何処かに入ることになるわけだが…、ここで少し一悶着があった。



「妹の私が責任もってお兄ちゃんの面倒を見るけん、お兄ちゃんは私の隣の部屋にすべきっちゃ!」


「それなら従妹いとこの私の隣の部屋が空いとるんやけ、マサト君は505号室でいいやん!」


「待て待て!マサトの世話は料理も裁縫も出来るオレがすべきっちゃろ!やけん、フレンダ、お前マサトと部屋変われ!」


「えー?それならもういっそボクの部屋でマサトと二人暮らしってことで良くない?」


「「「良くない(ねぇ)っちゃ!!」」」 



 とまぁ、こんな感じである…



 そんな幼馴染達の話し合いが続く中、壁にかかっていた時計で時間を確認してみると、魔物騒ぎで二時間遅れで始まった高校の入学試験がそろそろ終わる時間帯だった。


 とりあえず部屋決めの話は彼女達に任せて(どうせ俺が何を言っても聞かないだろうしな…)、ユウナに連絡しようとスマホを取り出したところへ、ちょうど当のユウナから着信(試験があるからと着信音やバイブ機能はオフにしていたので、スマホ画面に“緋崎郁凪あかさきゆうな”という名前と共に着信の表示がされているだけの状態)があったところだった。


 俺は幼馴染達から少し離れた所に移動し、通話に出た。



「もしも…、」


『良かったっ!!ようやく繋がったっ!!マサトっ!大丈夫やった!?』



 電話口から、心底俺の事を心配してくれていたんだろうユウナの声が聞こえてきた。



「ああ、ゴメン、すぐに連絡返せんくて…、試験中やと思ったらさ…」


『うん、それはわたしも同じやったし、一応メッセージの既読は付いとったのも確認しとったし、それに朝の件で被害者は出とらんってことやったけ、無事なんやろうとは思っとったけど…

 それで、マサトは今何処おると?まさか、例の発作とかで病院におったりせんよね?』


「あぁ…、えっと、それなんだが…、話せば長くなると言うか……」



 そこで俺はユウナに今朝から今までのことを説明した。

 当然、ユウナは俺の話を最初は全く信じていなかったが、ちょうどその頃には話し合いも終わったのか、マチ達も俺のすぐ近くにいて俺達の会話を聞いていて、電話を代わったマチ達の声を聞いて、少なくとも俺が魔法師育成学園にいるということは信じてもらえたようだ。



『…はぁ、なんかもう……、本当に何て言っていいものか……』


「いや、うん…、本当に……

 俺もどうしてこうなったのか……」


『とりあえず、今日はこれからどうするん?こっち帰って来ると?』


「え?あー…、うん、そうだな、引っ越しの準備とかもあるし、一度帰るつもりではあったんやけど…」


『なら、今日、この後!マサトの家で集合ね!』


「え!?今日この後!?でも、ユウナ、お前試験終わったばっかやろ!?今日これからウチ来るって、キツくないと?」



 ユウナの家と俺の住んでいる家は少し離れているが、それでも徒歩で行き来出来る距離にある。

 だが、その道中はひたすらに坂道(その坂の途中に、戦前にあった競輪場が再建されたことから、地元民は“競輪場の坂”と呼んでいる)となっていて、ユウナの家から俺の家に来るにはその坂をひたすら登らなくてはならないため、かなりシンドいのだ。



『それなら大丈夫よ。わたし、今からバスで門司もじに戻るところやけん、49番に乗って帰れば、マサトの家まではすぐやろ?』



 49番と言うのは、俺の家の最寄りのバス停を通る唯一のバスの番号で、ユウナの家の最寄りのバス停は通らないバスだ。


 ちなみに、この49番のバスはユウナの今いる愛宕あたご高校からは乗れないため、途中で乗り換える必要がある。

 なので、俺は今朝高校へ向かう際は、最寄りのバス停ではなく、少し歩いた場所にあるバス停を通る、愛宕あたご高校へ直接行けるバスに乗り込んだのだ。

 そのバスが通るバス路線上に、ユウナの家の最寄りのバス停もあって、当初はバス車内で待ち合わせて一緒に高校へ向かうという話もあったのだが、色々な事情があって、別々のバスで高校に向かうこととなり、ユウナは俺より少し前のバスに乗っていたことで、魔物騒ぎに巻き込まれずに無事に愛宕あたご高校へ着いたが、俺は魔物騒ぎに巻き込まれて、“魔法少女”になってしまった、という経緯だ。



「確かに49番やと直接俺の家に来れるけど…、」


『なら決まりね!あ、マチちゃん達もこっち帰って来れる?』



 ユウナがそう尋ねると、電話口に集まっていたマチ達が次々に答えた。



「あー、そうやね」


「おう!マサトが帰るんならオレらも帰るぜ!」


「そうだね。元々、マサトの入試の邪魔しないようにってことで、ボク達は家に帰って無かっただけだし、マサトの進路が決まった今なら家に帰らない理由は無いからね〜」


「じゃあ、今夜は皆で久し振りにパーティーしよっか!ユウナちゃんもどうせ来るなら泊まっていくっちゃろ?」


『いいね!じゃあ、バス乗り換えるついでに“ニューチャチャタウン”で買い物していくね!』


「あ、それなら一緒に行こうよ!

 12魔高と愛宕あたご高校はバスの路線が同じやけん、時間合わせて、同じバスに乗って“ニューチャチャタウン”まで行こっ!」


『りょーかい!じゃあ、そういうことで!』



 と、女子達の間でトントン拍子に話はまとまり、この後、ユウナとはバスの中で落ち合うことが決まったのだった。

 ちなみに、“ニューチャチャタウン”とは、小倉こくら砂津すなつにあるショッピングモールで、魔獣災害などで一度失われてしまった“チャチャタウン”を再建したものだ。

 中には、ファストフード店や、スーパー、服屋、映画館、本屋、ゲームセンターなどなど様々な店舗が入っていて、中央にある広場では、週末や連休の折に様々なイベントが開かれたりして、“第12魔法都市”の市民の憩いの場ともなっている。





 ユウナとの通話を終えると、マリ達は外泊届やらなんやらの手続きをしながら、手早く帰宅する準備をしていた。

 帰宅する準備と言っても、着替えやらは家にも常備してあるので、本当に最低限の物だけでいいから、比較的早く済んだ。



 また、俺はマチから、色々と話し合った結果、最終的にじゃんけんとなり、部屋割りは現状維持の上で、俺の部屋は505号室、つまりはマリの隣の部屋に入ることが決まったと伝えられた。

 それから、俺が正式にこの寮に入る(と言っても、家具なんかは揃ってるので、着替えやその他日用品などを運び込むだけだが)日は、明日以降になるとして、それまでは自宅から時間のある時に、魔法の練習を行うために通うということになった。


 実家と寮の行き来に関しては、バスなどの公共交通機関などを利用することになる。

 その際にかかる費用は全て学園が負担してくれる(学生証がICカード代わりとなっていて、それを乗車時と降車時に端末にかざすことで、学園にデータが飛び、その際にかかった費用が自動で支払われるというシステムになっているらしい)。

 俺の場合、入学手続きがまだ完了していないので、ICカード代わりの学生証はまだ無いが、その代わりに仮学生証を渡されていて、学園と自宅の行き来はそれを使ってくれ、とのこと。


 公共交通機関なんか使わなくとも『転移』魔法を使えばいいのではないかと思われるかもしれないが、学生の間は、実戦訓練などを除いて、基本的に魔法を使用するための“マギアリング”や“マギアコンパクト”などのデバイスを学外に持ち出す事は禁止されているため、『転移』魔法による行き来は出来ないのだ。



 そんなこんなで、俺達とユウナはバス車内で合流し、砂津すなつの“ニューチャチャタウン”でバスを降りて買い物をしてから、門司もじにある我が家へと帰宅するのだった。

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