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新世代魔法少女オレガ・マギカ〜魔法師になれなかった俺ですが、何故か魔法少女になって幼馴染の魔法少女達とイチャイチャしちゃってます〜  作者: 藤本零二
第一章〜“魔法少女”になった少年〜

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第3話「“第12魔法都市”魔法師育成学園」


「お、お兄ちゃんが…、」


「マサト君が…、」


「「“魔法少女”ぉおおおっ!?」」



 先程起きた翼タイガーの件の話を聞いた妹のマチと従妹いとこのマリは驚きの声をあげた。


 いや、まぁ、それは驚くだろうな。

 俺だって、妹が突然弟になったと聞けば驚くし、ましてや魔法を使えなかった俺が“魔法少女”になるだなんて、想定外もいいとこだろう…



「ああ、そういうわけで、黒霧君…、と、こう呼ぶと妹君と混同しそうなので、黒霧兄君と呼ぼうか、その黒霧兄君には、特別推薦枠として12魔高女子科の私のクラスに入学してもらうことになった」



 驚く二人に、緑川博士が淡々と説明を続けていく。



「い、いやいや、ちょっ、待って下さい、先生っ!」


「まだ私達、マサト君が“魔法少女”になったって部分で理解が追い付いていないんですけど!?」



 パニクる二人に、先輩であるチーム“雪月花”のメンバーであるセツナ先輩が声をかけた。



「まぁまぁ、まずは落ち着いて二人とも」


「そんな、落ち着いてられませんよ、セツナ先輩っ!」


「そうですよ!だってお兄ちゃんがお姉ちゃんになったなんて、私どうしたら…、」


「それは違うぞ、黒霧君。

 黒霧兄君の性別はあくまで男のままで、“マギアコンパクト”で変身した時のみ女になるという仕様だ」


「どんな仕様なんですか!?」


「えっ…!?じゃあ、マサト君は男の子のまま、魔高女子科の“魔法少女クラス”に入るんですか?」


「そうなるな」


「「えぇ〜……」」



 さすがに驚く気力も無くなったのか、二人は脱力しきった表情で俺へと視線を向けた。



「はぁ…、全く、どうしてこうなったとよ、お兄ちゃん…」


「いや、俺だって急に色々あり過ぎて混乱しとーとって…」


「というか、私まだ信じとらんよ?マサト君が“魔法少女”やなんて…」


「そうっちゃ!本当にお兄ちゃんが“魔法少女”に変身出来るんか、今ここで変身してみせてっちゃ!」


「ええっ!?」


「いや、それは少し待ってもらおうか」



 マチの提案に、緑川博士が待ったをかけた。



「え、何でですか?」


「うむ、黒霧兄君を“魔法少女クラス”に入学させておいて何だが、彼が変身することにおける肉体への影響、リスクに関するデータが皆無なので、現時点でそう何度も変身を繰り返すのは止めたほうがいいと思われるからだ」


「ちょっ!?それってお兄ちゃんが危ないってこと!?」


「いや、そうは言っていないよ、黒霧君。むしろ、変身することで、彼の持つ遺伝子疾患による発作が完全に抑えられるという短期的なメリットは存在する。

 しかし、一方で、男の身体から女の身体に変化してはまた戻って…、という変身行為を何度も繰り返すことによる、身体機能への長期的な影響に関する知見はまだ無いのでね、変身するには慎重を要したほうがいい」


「だったら、俺は二度と変身しない方が良いのでは…?」



 と、俺が緑川博士に言うと、緑川博士はこう続けた。



「だが、そうなると君はこれから路頭に迷うことになるぞ?何せ、君が受けるはずだった高校への受験キャンセルの連絡はすでに済ませた後だからな」



 そういやそうだった…

 まぁ、高校に行けなくても、生活保護があるので路頭に迷うことは無いが、しかし就職するにしてもせめて高校だけは出ておきたい。



「何、心配することは無いよ。

 君の体調に関してはこちらでしっかりと管理して無理の無いよう計らうから。

 それに、ひょっとすると君のその遺伝子疾患を治す手立ても見つかるかもしれないしな」



 と緑川博士が言うと、俺以上にマチが食いついた。



「先生っ!それ本当ですかっ!?」


「可能性の話だがな」


「でも、この“呪い”に関しては完全治癒は不可能だって言われていますけど…」



 現代の医療は、マナを利用した魔法医療技術の発展に伴い、かつては治療不可能と言われていた病なども治療することが可能となっていた。

 例えば、切れてしまった神経細胞を魔法医療技術によって再生し、繋ぎ直すことで、動かなくなった身体を再び動かせるようになったり、といった感じだ。


 だが、そんな魔法医療技術でも、【魔女】の“呪い”によるこの遺伝子疾患は治療不可能で、ただ薬を飲んで発作を抑える対症療法しか無いのが現状だ。



「確かに普通なら無理だが、今の黒霧兄君に関してなら例外的に治療することが出来るかもしれないんだ」


「それは、どういうことですか?」


「うむ、詳しく説明すると長くなるので、つまんで説明すると、“魔法少女”になった君の体細胞を使って、遺伝子疾患を抑える抗体細胞を作り、男の君の身体に移植するんだ。

 本来細胞移植をしようとすれば、他人の細胞同士のため、拒絶反応が起きて、抗体細胞が上手く被験者に適合せず、上手くいかないのだが、黒霧兄君の場合は、同一人物の細胞で、抗体細胞を作れるため拒絶反応の心配をする必要が無いんだ。

 故に…、……、」



 と、その後も緑川博士が()()()()()説明をしてくれたのだが、専門用語が増えてきて、俺の脳じゃ処理出来なくなってきたので、その後の説明はここでは割愛する。


 要するに、俺が“魔法少女”としてこの12魔高女子科に入学すれば、俺の発作も治るかもしれないし、将来的には“戦闘魔法師”として職に就ける可能性もある、ということだ。



「まぁ…、そういうことなら、“魔法少女クラス”に入学することもやぶさかでは無いですが…、でも、男子が女子科に入るというのは、その、色々と反発が起きませんかね…?同じ“魔法少女クラス”の女子とかから…」



 すると、カノン先輩が舞台役者の男装麗人のごとく背景をキラキラとさせながら、自信満々にこう言った。



「何、心配することはないよ、マサト君!君のような素敵な男の子を受け入れない女子はこの学園にはいないさ!

 それに、もしも君を悪く言う女子がいたとしても、安心したまえ!君のことはお姉さんであるこのボクが守ってあげるからね!」


「は、はぁ…?」


「だからマサト君!このボクのっ、」


「はいはい、カノンちゃんは少し黙ってよーねー」


「もがっ!?もがもがぁああっ!?」


「それじゃ、あたし達は用事があるので帰りますね!マサト君、またね!」


「もががーーっ!!」



 セツナ先輩はカノン先輩の口をふさぎながら、カノン先輩を引きずって退室していった。

 そんな二人の跡を追うように、ツキネ先輩も、最後にペコリと無言で頭を下げて部屋を出ていった。

 結局、ツキネ先輩とは俺が男だと発覚してから、自己紹介以外でまともに話してない気がするな…





 先輩達三人が出て行ったところで、改めて先程の、俺が女子科に入学することに反発があるのでは無いか、という話になったのだが、“魔法少女”である以上、緑川博士の受け持つ“魔法少女クラス”に入ることは確定で、何かあった時に男子科では緑川博士の目が届きにくいため、常に俺の体調を管理するためにも、緑川博士の目の届く女子科にいた方がいいと、強く説得されてしまったため、俺の女子科への入学は決定事項となってしまった。


 また、男子科、女子科と分かれてはいるが、校舎自体は広い屋外演習場を挟んで隣同士で、その校舎と校舎の間に兼用の食堂がある上に、休み時間などは男子科と女子科で行き来が普通に行なわれていたり、一部の実戦演習授業では男女混合で行なわれていたりするなど、そもそも女子側に男子を(極端に)忌避する傾向は無く、むしろ男子の“魔法師”という貴重な(遺伝子)を求めて、一部の女子は積極的に男子に声をかけたりして()()()()を築いたりしているそうだ。



「ハーレム、ですか…」


「ああ。と言っても、一人の女子を中心とした男子と女子の()()()()()()だがね。まぁ、中には特別優秀な男子を中心とした女子ハーレムも存在するにはするが」



 男子の少なくなったこの世界では、女性同士での結婚、もしくはハーレムは珍しくなく、女性同士で子供を作るためのiPS細胞技術が飛躍的に発展し、さらには、それとは全く異なるアプローチによる魔法生化学技術もここ数十年で確立してきていると聞いている(こちらの方の成功例はまだそこまで多くないそうだが)。

 

 だが、それでもやはり男性の出生率は低く、人口はどんどん減っていく一方だ。



 閑話休題。



「まぁ、そんなわけだから、黒霧兄君は、何も気にせず、堂々と“魔法少女クラス”に入学してくれたまえ。風霧かざきり君の言葉では無いが、君はむしろ嫌がられるどころか、君を狙う少女達がわんさか訪ねてくるかもしれないよ?」


「それは…、どうでしょうね…?」



 俺の場合、貴重な男子ではあっても、“魔法師”では無く、おまけに遺伝子疾患も患っているため、女性からモテるということは、これまでの人生で一度も無かった。

 従妹いとこのマリや、幼馴染の二人とは仲良くしてもらっていたが、異性の関係とまではいかなかった。

 “魔法師”でなくとも、せめて、普通の男子として生まれていれば、俺の人生は変わっていたのだろうが、そんな事を考えても詮無きことだ。



(お兄ちゃん、『自分はモテてない』みたいな顔しとーけど…、)


(自覚が無いのも困るっちゃんね〜…)



 マチとマリが小声で何かコソコソと話していたが、そのことを聞こうとする前に、「それより!」とマリが話を先に進めた。

 


「考え方を変えれば、これからはマサト君とずっと一緒におられるってことよね?」



 今のこの世界において、小学校までは“魔法師”の才能がある無しに関わらず同じ学校に通うことになっているが、中学以降は、“魔法師”を目指す者は魔法師育成学園に通い、それ以外は通常の中学に通うことになる(当然、魔法の才能があっても、“魔法師”を目指さない者もいたり、場合によっては高校から目指そうとする者もいる)。


 なので、幼い頃から小学校卒業までずっと一緒だったマチとマリ、そして幼馴染の二人とは、中学の三年間、長期休暇以外で一緒にいることは無くなってしまった。

 俺が“魔法少女”にならなければ、今後もそうなっていたハズで、彼女達が就職した後も、会うような機会は滅多になくなっていただろう。

 


「まぁ…、そうなるな。…あ、でも、さすがに寮は一緒じゃ、」


「勿論、黒霧兄君が入るのは女子寮だぞ?」


「ええっ!?いやいや、さすがにそれは、」



 俺が否定しようとしたところ、今度はマチが全力で俺の発言を否定してきた。



なん言っとーと、お兄ちゃん!?男子寮で一人暮らしなんてなったら、もし発作が起きた時どうするっちゃ!?この寮にはハウスキーパーさんはおらんとよ!?」


「いやー、今までもハウスキーパーさんおらんでも、何とかなっとったし、今日の発作は受験への緊張感とかから……、はっ!?」



 と、俺はマチの発言を否定するつもりで言葉を発していたのだが、ついマチにも内緒にしていたことまで口走ってしまったことに気付いた時には、もう遅かった。



「はぁっ!?ハウスキーパーさんがおらんんんんんっ!?どういうことっちゃ!?お兄ちゃんの一人暮らしは危ないけん、ハウスキーパーさん雇うようにって私言っとったよね!?」



 そうなのだ。

 両親や親戚を亡くし、家族と呼べる親族はマチとマリだけになっていた俺は、中学生になった時点で一人暮らしをすることとなった(現在のこの世界では、16歳が成人年齢で、中学生の13歳〜15歳までは準成人として、中学生でも一人暮らしが認められている)。

 幸い、両親がそれなりに立派な一軒家と財産を遺してくれたのと、手厚い生活保護のおかげで一人暮らしでもなんとかなると言ったのだが、マチは俺の発作のことを特に心配していて、最初は“魔法師”にならずに、俺と同じ普通の中学に通って、ずっと一緒に暮らすと言って聞かなかった。

 ちなみに、幼馴染の二人も両親がすでに他界していて、同じ家でマリも含めた五人とハウスキーパーさん数人(小学生のみでの暮らしは何人であろうと認められていないので、必ず保護者である大人がいなくてはいけなかった)で暮らしていた。


 

 実際のところ、朝昼晩欠かさず薬を飲み、念の為出かける際には常に薬を持ち歩くようにしていれば、問題になるようなことは無く、俺は平穏無事に中学三年間を過ごせた。

 今日の発作に関しては、受験への緊張感や人混みに酔ったことから起きた不測の事態で、翼タイガーが現れなければ、緑川博士が俺のカバンから薬を取り出して事なきを得た事案だった。


 しかし、心配性のマチを安心して魔法師育成学園に送るために、俺はこれまでお世話になっていたハウスキーパーさんを、契約を延長して雇うことを条件に、一人暮らしをすることを約束しなければならなかった。

 


 それで納得したマチは魔法師育成学園へ入学し、優秀な“魔法師”として将来を期待される存在へとなったわけだ。


 一方の俺は、最初の内は約束通りハウスキーパーさんに世話をしてもらっていたが、特に何も問題は無かったため、半年程で辞めてもらった。

 だが、マチ達にはそのことを言わず、長期休暇などでマチ達が帰って来た時には、ハウスキーパーさんには休みを取ってもらってると言って誤魔化してきていたのだ。



「呆れたっ!なん考えとーと、お兄ちゃんっ!?なんも無かったけん良かったっちゃけど、もしなんかあったら私っ、」


「ああっ!ごめんっ、マチっ!!本当に悪かったよ!!」



 少し涙目になりながら、俺の胸をぽかぽか叩いて俺を怒るマチに、俺は心の底から謝った。



「…やっぱりお兄ちゃんは女子寮に…、ううん、私と同じ部屋に住んでもらうっ!!」


「いやいや!?それはさすがに、」


「なして!?兄妹きょうだいなんやけ問題無いっちゃろ!?」


「いや、やけど、さすがに高校生にもなって、兄妹きょうだいとはいえ男女で同じ部屋っちゅうのは…、」


「高校生はもう立派な成人やん?

 むしろ、男女で暮らすのは普通やない?」



 マリの言う通り、現在の成人年齢は16歳、つまり中学を卒業したら成人の仲間入りなのだ。



「決まりっ!お兄ちゃんは私の部屋で一緒に暮らすことっ!!」


「ま、マチっ!?」



 強引に俺を同じ部屋に住まわせようとするマチに、緑川博士が待ったをかけた。



「黒霧君、少し待ってくれたまえ!

 寮の部屋は二人で暮らすにはさすがに狭過ぎるし、ベッドも一つしか無いから、二人暮らしには向かないよ」


「でも先生っ、」


「まぁ、落ち着きたまえ黒霧君。

 確か、君と白瀬君、それに君達の幼馴染である赤城あかぎ君と青羽あおば君は同じ5階の部屋で、確か5階には空きがまだあったよね?」


「あ、はい…、そうですけど…、」


「ならば、君達幼馴染同士で話し合って、黒霧兄君も含めて、新たに部屋割りを決め直せばいい。例えば、黒霧兄君の部屋を真ん中にして、何かあればすぐに誰かが助けに行けるようにすればいい。

 私の方でもナースコールのような緊急呼び出しシステムを作って、何かあればすぐに対応出来るようにしておくから、黒霧君もそれならば安心だろう?」


「まぁ……、先生がそう言うなら…」



 緑川博士の説得にマチも(しぶしぶながら)折れて、俺はなんとか一人部屋を確保することが出来た。

 …とはいえ、そこが女子寮であることには変わりないので肩身は狭いことに変わりはないが。



「さて、では細かい手続きや書類なんかは明日以降に回すとして、まずは黒霧兄君の変身における身体データなどを計測して、将来的な身体への影響などを調べる必要があるから、今から屋内訓練施設へ向かおう。

 ついでに、そこで我が妹と、君達の幼馴染との再会も済ませてしまおうじゃないか」



 と、緑川博士にそう言われて、俺達は校舎の隣にある屋内訓練施設へと向かうのだった。

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