第10話「連携訓練③マリアの魔法」
*
「モードチェンジ!蛇腹モード!」
『SNAKE MODE ACTIVATE.』
【チームブルー】の連携訓練もいよいよ大詰めとなった。
雑魚オーク達を倒し、残すところはグレートオーク一体のみとなったところで、マギキュリィドライがマギアソードをモードチェンジさせて、長剣スタイルから剣先が鞭のようにしなって伸びる蛇腹剣スタイルに変化させた。
「はぁあっ!!」
『ブホォオッ!?』
そして、その蛇腹状になった剣先をグレートオークに巻きつけて拘束した。
「今ですっ!!」
「オッケー!」
「やったるでー!」
ドライの合図で、後方で待機していたマジョリティブルーとヴァルキリーサファイアがそれぞれの武器を構えた。
ブルーは口径の直径が30センチメートル程のバズーカ状に変形させたマギアデバイスを右肩に構え、サファイアは口径が十センチメートル程にまで巨大化させた戦装具の機銃を両手に持ち、それぞれ捕らえられたグレートオークに狙いを定める。
「『アクアバズーカショット』っ!!」
「食らいぃやっ!!ウチの必殺っ!『原初の海』っ!!」
ドンッ!!と打ち出された三つの巨大な水の砲弾がグレートオークに直撃し、あっという間に消滅させていった。
「よしっ!」
「やりましたねっ!!」
「ま、ざっとこんなもんやな〜♪」
「はい、そこまで!【チームブルー】の連携訓練は以上だ!」
訓練の終わった三人の元に緑川博士が向かい、三人に総評を伝えていた。
その間に、本日最後のチームとなる俺達【チームブラック】のメンバーの元に碧風博士がやって来た。
「さて、それじゃあ最後は君達の番だけど、その前に麻里亜ちゃんには一度変身を解除してもらって、このマギアリングを使ってみてくれるかな?」
「はい」
碧風博士に言われて、マリアは変身を解き、博士から渡されたマギアリングを左腕にはめた。
「そのマギアリングは魔高の学生達が使用している物と同じもので、麻里亜ちゃんに魔法師としての素質があるなら問題無く使えるハズだよ」
「分かりました」
マリアは記憶を無くした状態でこことは違う並行世界から転移してきており、【ヴァルキリー】システムは元々マリアの世界の技術を碧風博士が解析して発展させたものだ。
そしてマリアは転移してきた時点で【ヴァルキリー】システムの使い方は覚えていたが、魔法の使い方は分からず、これまでは魔法師の才能は無いとされてきた。
しかし、ほんのわずかに記憶を取り戻したことで、自分もかつては魔法師だったことを思い出し、今なら魔法が使えるかもしれないということで、その確認を今からしようというわけだ。
左腕に魔石の埋め込まれたマギアリングをはめたマリアが目を閉じる。
「……、うん、今なら感じる。魔石からの魔力の流れ……、これなら…っ!」
しばらくして目を開いたマリアは、両手を前に出して魔法名を叫んだ。
「『ファイアショット』っ!!」
すると、マリアの両手の先から炎の塊が発射され、地面に焦げ目をつけた。
「やった!出来ましたっ!!」
「おー!本当に使えたっ!!」
「なるほど、白波さんは炎の魔法師というわけですか」
碧風博士と、その隣にやって来た翠山博士が驚きの表情を浮かべながら、こう続けた。
「【ヴァルキリー】システムでは水属性使いなのに、魔法師としては炎属性使いになるのか〜…、どういう理屈だろう?」
「それに、これまでは魔法を使えていなかったんですよね?それが急に使えるようになるなんて、不思議なことがあるものです…」
「記憶が少し戻ったからって聞いてるけど、でも記憶が戻る前から【ヴァルキリー】システムの方は問題無く使えてたわけだし、魔法だって同じように使えてなきゃおかしいよね?」
「理屈で言えばそうですね」
「となると、白波君が魔法を使えなかったのは別の理由によるもの、ということだろうな」
と、そこへ【チームブルー】への総評を終えた緑川博士も合流して、博士たちの議論に混ざった。
「それはどんな理由だと考えますか、瑠璃?」
「この世界にはまだ人知の及ばぬ力があるからな、我らが学園長しかり」
「ということは、瑠璃ちゃんは呪術のような私達の埒外の力が麻里亜ちゃんに働いていて、そのせいで一時的に魔法を使えなくなっていたと考えるわけだね?」
「今のところはそうとしか言いようがないだろうね。私達の今の知識や技術では説明も立証しようもなく、真相は謎のままということさ。
ま、その理由に関してはいずれ白波君の記憶が全て戻れば分かることだろうし、今大事なのはそこではないだろう?」
「確かに、瑠璃の言う通りですね」
「果たして魔法と【ヴァルキリー】システムは両立出来るかどうか、だね」
博士達の議論はそこで終わり、再びマリアに向き直ってこう言った。
「じゃあ麻里亜ちゃん!マギアリングを装着した状態で戦乙女に変身してもらっていいかな?」
「はい!」
*
「『武装化』っ!!」
マリアの乙女石、〈光輝なる真珠〉がマリアの叫びに応えるかのように光り輝くと、一瞬でマリアの全身が白の戦装束で覆われていく。
そのアーマーをよくよく見れば、本物の真珠のように光の反射加減でわずかに薄い赤みがかって見える。
「さて、それじゃあ【チームブラック】の連携訓練を始める!」
緑川博士に言われて集まる俺達【チームブラック】。
改めて【チームブラック】は俺も含めた四人組でメンバーは以下の通り。
・黒霧優人/マジョリティブラック(闇の魔法少女)
・白瀬麻里/マジョリティホワイト(炎水雷の魔法少女)
・黒霧摩智/マギキュリィアインス (補足:雷の魔法師)
・白波麻里亜/ヴァルキリーパール(補足:炎の魔法師)
こうして列挙してみると、全属性を網羅したバランスのいいチームと言える。
魔砲少女であるマチに関しては、魔砲を使うためのマギアロッドとは別にマギアリングを使用すれば雷の魔法も普通に使えるらしいが、二つの魔石の同時使用は使用者への負担が大きいらしく、魔砲少女の時は通常の魔法は使わないらしい。
例外として、ササラが変身するマギキュリィゼロは魔砲少女のプロトタイプのため、試作型のマギアロッド一つで同時に雷の魔法も使えるらしい。
その分、ゼロは他の魔砲少女に比べて魔砲の威力は弱く、魔法も同時に使用すれば魔石の燃費も悪くなるという欠点がある。
それはともかく、今回の俺達の訓練では【ヴァルキリー】システムと魔法を同時に使用出来るのかどうか、また使用出来たとしてそれに対する使用者の負担はどうなのかという点を調べる目的も追加された。
「麻里亜ちゃん、状況に応じて戦乙女の力と、君の魔法を使い分けてみてくれるかな?それで、きついなと感じたら併用はすぐにやめてくれていいから」
「その場合、すぐに訓練を中止しますから遠慮なく申し出て下さいね?」
「はい、分かりました」
「よし、では早速始めよう!君達の相手はこの魔物達だ!」
現れたのは、鎧オオカミと呼ばれる、全身が硬い鎧のような皮膚で覆われた狼のような見た目の魔物のリアルホログラムだった。
鎧オオカミは基本20〜30頭程度の群れで活動し、その中で一番身体の大きな雄の個体がリーダーとなって群れの統率を取るそうだが、リーダーを倒したからと言って統率が崩れるわけではなく、次に身体の大きな雄が新たなリーダーとなる。
また、仮に群れの雄が全滅してしまっても、群れの中で身体の一番大きな雌が性転換して新たなリーダーとなるという。
今回俺達が相手にするのは20頭の鎧オオカミの群れとなる。
「鎧オオカミは防御力も高いけど、素早さも高いっちゃんね」
「集団で襲ってくるけん、基本は各個撃破しつつ、最後にリーダーを狩るのが基本かな?」
「「了解!」」
ホワイトとアインスの説明に頷く俺とパール。
『ウ゛ォオオオオオオンッ!!』
鎧オオカミ達のリーダーが遠吠えをあげると、そのリーダーとサブリーダー格と思われる集団を除いて、四頭ずつに分かれた集団が俺達一人一人に襲いかかかってくる。
「それじゃあ、まずは作戦通りにっ!」
ホワイトの指示で、それぞれ分かれて鎧オオカミと対峙することになる俺達。
*
『ワ゛ォオオオオオンっ!!』
「『ファイアアロー』っ!」
ホワイトに最初に飛びかかった一頭に対し、ホワイトは右手に持った杖型のマギアデバイスを向けて魔法名を叫ぶと、デバイスの先端から炎の矢が飛び出して鎧オオカミの顔面に直撃し、鎧オオカミは『ギャオオオォンッ!?』と断末魔の悲鳴をあげながら消滅した。
『『ワ゛ォオ゛オオンッ!!』』
さらに別の二頭がホワイトの両足に向かって牙を突き立てようと突っ込んでくるが、ホワイトは冷静に左手を二頭に向けて魔法を放つ。
「『アクアトルネード』っ!!」
『『ギャボボボボボボォッ!?』』
渦巻く水流によって容赦無く押し流されていく鎧オオカミ達。
『ウ゛ォオオオオオンッ!!』
そして最後の一頭がホワイトの背後に忍び寄り飛びかかってくるが、ホワイトは振り向きざまに右手に持ったマギアデバイスを、飛びかかってきた鎧オオカミに向けて魔法を放つ。
「『サンダーフォール』っ!」
『ギャォオオオオオンッ!?!?』
上空から落ちてきた雷撃を食らった鎧オオカミは黒焦げになりながら消滅していった。
*
四頭の鎧オオカミに囲まれたアインスは、次々と襲いかかってくる鎧オオカミ達を避けながら、マギアロッドのボタンを操作する。
「モードチェンジ!ロッドモード!」
『ROD MODE ACTIVATE.』
カション!カション!という機械音と共に杖状だったマギアロッドが棒状の武器に変化した。
「はっ!」
アインスはそれを昔のカンフー映画で格闘家がよくやっていたようなポーズで構えると、マギアロッドをクルクルと回転させながら、まるでダンスを舞うように鎧オオカミを蹴散らしていく。
「やぁあああああああっ!!」
『ギャオッ!?』
『ワ゛ォオオオッ!?』
『ギャインッ!?』
『バフォオオオッ!?』
ただマギアロッドで薙ぎ払うだけでなく、ロッドに魔力を纏わせることで魔術的ダメージも与えるというアインスの棒術魔砲。
アインスは飛びかかってくる鎧オオカミ達をマギアロッドで巧みにさばき、四方に散っていた四体を一箇所に集めることに成功した。
「これでトドメっ!!」
アインスはマギアロッドを巨大化させながら、頭上高く振り被ると、鎧オオカミ達めがけて巨大化させたマギアロッドを振り下ろした。
「はぁああああああっ!!『ギガントロッド・ハイプレッシャー』っ!!」
『GIGANT ROD HIGH PRESSURE ATTACK!』
『『『『ギャィイイイイイインッ!?!?』』』』
巨大化したマギアロッドによって押し潰された鎧オオカミ達は一瞬で消滅した。
*
「『戦装具・機銃起動』っ!」
四頭の鎧オオカミに追われながら、パールは戦装具の機銃を起動させる。
そして、起動させた機銃を右手に持ち、背中の翼のジェットエンジンを噴射させて低空を滑空しながら、くるっと背後に振り返り、追ってくる鎧オオカミに機銃の照準を合わせる。
「『水龍の息吹』っ!!」
『『ギャィイイイインッ!?!?』』
そして機銃の引き金を引くと、ズドドドドドッ!!と連続で水の魔力が込められた弾丸が放たれ、追ってくる鎧オオカミ達を蜂の巣にしていく。
『ワ゛ォオオオオオンッ!!』
しかし、上手く味方を盾に水の弾丸を回避した一頭の鎧オオカミが、素早くパールの右側に回り込み、飛び上がってパールの右腕に噛み付こうとする。
「『ファイアアロー』っ!!」
その鎧オオカミに即反応したパールは、咄嗟に左手を機銃を持つ右手の下に回して、右腕に迫って来る鎧オオカミめがけて炎の矢を放った。
『ワ゛ォオオオッ!?』
顔面に炎の矢を突き立てられた鎧オオカミは、その勢いで吹き飛ばされながら燃え尽きていった。
「よし…!戦乙女の力も魔法も問題無く使えてる!…あと一頭は!?」
襲って来た内の三頭は難なく倒したパールだったが、もう一頭が見当たらない。
周囲を見渡していると、突然自分の上に影が出来た。
「上っ!?」
パールが見上げた先には、大きな口を開いた鎧オオカミな姿が目に入った。
『ヴォオオオッ!!』
「『ファイアシールド』!」
『ギャインッ!?』
対してパールは即座に頭上に炎の盾を出現させて鎧オオカミからの攻撃を防ぐ。
「『戦装具・刀起動』っ!」
炎の盾に激突し、鼻先を黒く焦がした鎧オオカミが地面に倒れてのたうち回っている内に、パールは戦装具を機銃から刀に変化させると、刀を上段に構えて必殺技を放つ。
「『水龍の嘶き』っ!!」
『ギャウゥウウウウウンッ!?』
こうして最後の一頭も無事に仕留めることに成功したパールだった。
*
ホワイト達が鎧オオカミ達を撃破していくのを横目に見ながら、俺は素早く動く鎧オオカミを相手に苦戦していた。
「『シャドゥボゥル』っ!」
『ワ゛ゥウ゛ッ!!』
鎧オオカミに向けて魔法を放つが、鎧オオカミ達はそれを悉く避けていく。
「クソっ!?また外した!?」
『ヴォオオオッ!!』
「にゃろぉっ!!」
だがこちらも機動力には自信があるので、鎧オオカミの噛み付き攻撃を直前で回避し、そこからカウンター攻撃をお見舞いする。
「『シャドゥパンチ』っ!!」
『ギャンッ!?』
さすがに飛びかかってきて空中にいる相手に対しての攻撃は外さないが、今度は硬い防御力のせいで致命傷には至らない。
「くそ…、魔力の出力調整やっぱムズいな…!」
これは初級魔法だから威力が足りないというわけではなく、単に俺の能力不足だ。
分かりやすく言えば蛇口をひねって水を出すイメージで、ホワイト達のように鎧オオカミの硬い皮膚を貫けるだけのちょうどよい水量を出すための加減が上手く出来ず、ちょろちょろとした弱い水量か、ドバっ!と勢いの強い水量しか出せないのだ。
あまりにも威力が強過ぎると周囲一帯を巻き込みかねず、そうなった場合、仕留め損ねた鎧オオカミ達が逃走して、訓練でなければ他の場所でまた被害が出てしまうことになりかねない。
訓練だからとその辺りを大雑把にやってしまえばいざ本番で同じミスをやりかねないし、これは授業の一環なのだから当然成績にも反映されるわけで、成績次第では留年もあり得るわけだ。
だからなんとかして魔力の出力調整を覚えたいのだが…
「いや、まだやりようはあるっ!」
右太ももに装備されたマギアデバイスを手に取ると、刀型のデバイスに変化した。
「直接魔法を撃ち込むんやなく、刀身に魔力を纏わせて斬るっ!」
魔力の流れをイメージし、右手に持った刀に魔力を集束させていく。
すると、刀身がドス黒く染まっていき、さらには溢れた闇の魔力がオーラのように纏わりついて、まるで呪われた妖刀のような見た目となった。
これも上手く出力調整出来れば、魔力が溢れ出ることなく刀身に綺麗に収まるんだろうが今はこれでいい。
「とても魔法少女って絵面やないけど…、これならっ!」
『ワ゛ォオオオッ!!』
飛びかかってきた一頭の鎧オオカミに対して俺はその黒い刀を振るう。
「せやぁああっ!!」
『バゥウウウウウッ!?』
黒い刀によって横に真っ二つにされた鎧オオカミが断末魔の悲鳴と共に消滅していく。
「よし!これなら魔力を込め過ぎても問題無ぇ!」
刀身から溢れ出した魔力は術としてのエネルギーを持つことなく、そのまま大気中にマナとなって霧散していくので、周囲に影響を与えること無く全力を出せる!
勿論、この戦法は刀を振るえない場所では使えないため、やはり魔法を上手く使えるようになるに越したことはないので今後精進あるのみだ。
『ワ゛ォオオオオオンッ!!』
『バゥワ゛ゥバゥゥウウウッ!!』
続けて残りの二頭が俺の左右から同時に飛びかかってきて、俺の左右の腕に噛み付いた。
「残念、そいつは残像だ」
『『ヴァウッ!?』』
しかし、残像を残す程の超高速で回避していた俺は、向かい合った二頭の鎧オオカミの背後に移動し、黒い刀を振り下ろして二頭の鎧オオカミを今度は左右真っ二つに斬り裂いた。
ちなみに、この超高速移動は魔力による身体強化の一種で、戦闘魔法師達は皆無意識に魔力で腕力や脚力などを上げて戦っているわけだが、俺の場合は特に脚力に特化して強化出来るらしく、速さだけなら先輩達にも負けない速度を出せるらしい(ただし、雷の魔法『サンダーソニック』による高速移動には及ばない)。
そんなこんなで残るは一頭だ。
『ヴォオオオオッ!!』
だが最後の一頭は仲間をやられたことからヤケになったのか、馬鹿正直に真正面から飛びかかってきたのでサクッと首を斬り落として終わらせた。
俺が四頭目を倒したのを確認して、すでに自分達のノルマを片付けていたホワイト達が集まって来た。
「じゃあ、残るはリーダーと、」
「その取り巻き三頭のみ、やね!」
群れの中でも一番身体の大きいリーダーと、その次に大きいサブリーダークラスの三頭。
『ワ゛ォオオオオオオオオオオッ!!』
リーダーの鎧オオカミが一際大きく雄叫びをあげると、サブリーダークラスの三頭が俺達に向かって突っ込んで来た。
「『ファイアアロー』っ!」
「『アクセルシュート』っ!」
『ACCEL SHOOT FIRE!』
「はぁあああああっ!!」
ホワイトが杖型のマギアデバイスから炎の矢を、アインスが杖状に戻したマギアロッドによる魔砲を、パールが機銃に戻した戦装具でそれぞれ攻撃するが、サブリーダークラスの三頭はそれらの攻撃を避けもせず、攻撃を食らいながら飛びかかってきた。
「『シャドゥシールド』っ!!」
三頭がホワイト達に襲いかかる前に、俺が三人を守るように巨大な闇の盾を出すことでサブリーダー達の三頭を弾き返した。
「あいつら、めっちゃ硬いやん!?」
「話には聞いとったけど、雑魚達があまりにも雑魚過ぎたけん、ちょっと甘く見とったね…」
「う、うん…、ちょっと焦った…!」
サブリーダークラスともなると、ホワイト達の初級魔法クラスの術ではどうにもならないようだ。
かと言って、中級魔法クラスを使おうにも、今度は奴らの素早さがネックとなる。
中級以上の魔法を使用する場合、少なからず術発動後のスキが出てしまうため、回避された後に攻撃されると厄介だ…!
『ヴォオオオオオンッ!!』
と考えている間に、リーダーの鎧オオカミが俺の張った『シャドゥシールド』を突き破ってきた!
「うぉおおっ!?」
「「「ブラック!!」」」
リーダーの鎧オオカミに噛み付かれる直前でホワイト達に腕を掴まれ、上空へと逃げることでなんとか事なきを得た俺。
「あ、危なかった…!」
「サブリーダークラス三頭の突撃を防いだブラックの盾を、リーダーはたった一頭でぶち抜いてきた…!」
「リーダークラスともなると攻撃力もヤバいんやな…!」
ホワイトとアインスが驚きの表情を浮かべながらそう言った。
「確かに…、だけど、これは連携訓練!今こそ私達の連携プレイを見せる時だよ!」
パールにそう言われ、俺は頷いた。
「ああ、そうやな…!」
「私達、今のところ個人技しか披露しとらんもんね」
「このまま個人戦を続けても負けるつもりは無いけど、それやと実技の評価くれんかもしれんしね!」
ホワイトとアインスも頷くと、俺達は反撃に出ることにした。
「まずは私から!やぁあああっ!『水龍の息吹』っ!!」
『『『『ギャォオオオオオッ!?』』』』
まずはパールが鎧オオカミ達の上空を飛び回り、機銃から水の弾丸を手当たり次第に撃ち込む。
鎧オオカミ達の硬い皮膚は貫けないが、目的は別にある。
上空から降り注ぐ水の弾丸に注意を向けている鎧オオカミ達の視界をかいくぐり、地面へと降り立つホワイト。
そして、杖型のマギアデバイスを天に向けて魔法を放つ。
「水も滴るいいオオカミさん達!これでもくらいなさい!『サンダーフォール』!!」
『『『『ヴォオオオオオォオオオッ!?!?』』』』
水の弾丸に続いて巨大な雷が天空から落ち、水で濡れた鎧オオカミ達を痺れさせる。
雷の魔法だけでは硬い皮膚にダメージを与えにくいが、電気を通しやすい水とのコンボで鎧オオカミ達の動きを封じる程度のダメージを与えることに成功した。
「動きを封じてしまえばこっちのもんだ!『シャドゥバインド』!!」
そして、ホワイトとは反対側の地面に降り立っていた俺が地面に手をつきながら相手を拘束するための魔法を放つ。
『『ギャオッ!?』』
『グルルォオッ!?』
『ワ゛ォオオオッ!?』
鎧オオカミ達の影から触手状の影が伸びていき、鎧オオカミ達の動きを封じる。
思えば、俺の得意魔法って高速移動と拘束魔法なんだな…、とどうでもいい考えが脳裏に浮かんだ。
「よし!今だっ!」
「了解っ!!」
俺の合図で、上空にて待機していたアインスが槍状のカノンモードに変化させていたマギアロッドを構えて鎧オオカミ達に狙いを定める。
「『バスターキャノン』っ!!」
『BUSTER CANON FIRE!』
マギアロッドの先端に集束した魔力が一直線の光となり、鎧オオカミ達に直撃する。
『『『ギャィイイイイイイン……ッ!?!?』』』
超高威力の魔砲が地面ごと焼き尽くし、サブリーダークラスの三頭を一気に消滅させた。
しかし、
『ワ゛ォオオオオオオオオオッ!!』
「く…っ!?リーダーは仕留め損ねた!?」
だが、全くの無傷というわけではなく、リーダーの自慢の鎧の一部が砕けてボロボロになっていた。
『ヴァオオオオオオッ!!ワ゛ォオオオオオッ!!』
「かろうじて耐えたみたいやけど、俺の『シャドゥバインド』はまだ有効なんでな、身動きは取れねぇだろ!?」
『MAGIC ENERGY EMPTY. BATTLE MODE RELEASE.』
「私の魔石はマナが尽きたけん、トドメは任せるっちゃ!ホワイト!パール!」
「「了解っ!!」」
万が一仕留め損ねた場合に備えて、すでに地上に上がっていたホワイトが、戦装具を刀に変化させていたパールと合流してトドメの魔法を放つ。
「はぁあああああっ!!『レインボーバーストエンド』っ!!」
「『炎纏いし水龍の嘶き』っ!!せやぁああああああっ!!」
ホワイトだけが使えるオリジナルの魔法、炎、水、雷の三属性合成魔法と、パールだけが使える水と炎の二属性合成技がリーダーの鎧オオカミに炸裂する。
『ア゛ォオオオオオオオ……ッ!?!?』
ホワイトとパールのダブル必殺技を受けた鎧オオカミは、断末魔の悲鳴をあげながらゆっくりと消滅していった。
「「やったね!!」」
空中で笑顔でハイタッチをするホワイトとパール。
その様子はまさに二人の天使が天上で優しく語り合っているような、荘厳さと華麗さを感じさせる宗教画の一枚のようだった。
*
訓練を終えた結果、戦乙女の状態で魔法を使用することは出来て、少なくとも現時点では特に問題も無いようだった。
しかし、まだまだデータ不足のため実戦での同時使用は今はまだ控えた方がいいだろうという結論に至った。
また、マリアの二刀流に触発されたのか、マチも魔砲少女と雷の魔法師の二刀流をやりたいと言い出したので、翠山博士が【マギキュリィ】システムの改良計画を練り始めることにもなった。
そんなこんなで、本日の連携訓練は滞りなく終了したのだった。




